あきくれど つきのかつらの みやはなる ひかりをはなと ちらすばかりを
秋来れど 月の桂の 実やはなる 光を花と 散らすばかりを
源忠
秋が来たからといって、どうして月の桂の木に実がなることがあろうか。光を花のように散らしているばかりなのだから。
「月の桂」とは、月にはえているという伝説上の桂の木。その花を月の光として散らしてばかりいるのだから実がなることはない、との歌意ですね。隠し題は「つきのかつらの みやはなる」に詠み込まれた「かつらのみや(桂宮)」。桂宮様がおられる御所ということでしょう。0456 から続いた場所・地名を詠み込んだ物名歌は一旦ここまでとなります。
作者の源忠(みなもと の ほどこす)は平安時代前期の貴族にして歌人。名前の「忠」は「恵」とも表記されます。古今集への入集はこの一首のみで、勅撰集全体で見ても他に入集歌はないようです。