つひにゆく みちとはかねて ききしかど きのうけふとは おもはざりしを
つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを
在原業平

最後には行く道と聞いてはいたが、昨日今日そうなるとは思っていなかったものを。
詞書には「病して、弱くなりにける時よめる」とあります。伊勢物語最終段にも載る業平の辞世。いつかはやってくると誰しもがわかっている死というものが、しかし実際に自分の身に差し迫っていることを自覚せざるを得なくなった無念さ、寂しさが直截的な表現ゆえにより生々しく読み手に迫ってくるように思います。