おなじ少将、ものへ行く人に火打ちの具して、これに薫物を加へてやるに、よめる
をりをりに うちてたくひの けぶりあらば こころざすかを しのべとぞおもふ
をりをりに 打ちてたく火の 煙あらば 心ざす香を しのべとぞ思ふ
おなじ師氏の少将が、旅立つ人に火打ちをして香を焚くのにそえて詠んだ歌
おりおりに火打ちを打って焚くお香のかおりがしたならば、その香にこめた私の思いを偲んでください。
「薫物(たきもの)」とは、さまざまなお香を合わせて作った練り香のこと。旅立つ人へのはなむけにお香を焚く習慣があったのでしょうか。
この歌は、後撰和歌集(巻第十九「離別羇旅」 第1304番)に入集しています。