いしばしる たきなくもがな さくらばな たをりてもこむ みぬひとのため
石ばしる 滝なくもがな 桜花 手折りても来む 見ぬ人のため
よみ人知らず
激しく流れ落ちる滝がなければ、見られない人のために桜花を手折って帰れるのになあ。
「石ばしる」は滝にかかる枕詞ですが、ここでは滝の流れの激しさも表しています。この美しい桜を見に来られない人のために枝を折って持って帰りたいところを、激しい滝の流れに阻まれてそれができない口惜しさを歌うことで、それほどまでに美しい桜の魅力を表現してますね。咲き誇る桜に心奪われ、それを愛でる思いは、平安の人々も私たち現代人もさして変わりはないようです。