うめのはな にほふはるべは くらぶやま やみにこゆれど しるくぞありける
梅の花 にほふ春べは くらぶ山 闇に越ゆれど しるくぞありける
紀貫之
梅の花が匂う春は、くらぶ山を夜の闇の中で越えても、梅が咲いていることがはっきりとわかることであるよ。
「くらぶ山」は、京都の鞍馬山の別名とも言われますが、和歌の世界では場所も具体的にどの山かも必ずしも特定されておらず、「暗い山」の意味で歌に詠み込まれます。古今和歌集でも、この歌や 0195 の在原元方の歌など、何首か出てきます。
あきのよの つきのひかりし あかければ くらぶのやまも こえぬべらなり
秋の夜の 月の光し あかければ くらぶの山も 越えぬべらなり
在原元方