うめのはな たちよるばかり ありしより ひとのとがむる かにぞしみぬる
梅の花 立ちよるばかり ありしより 人のとがむる 香にぞしみぬる
よみ人知らず
梅の花のところにほんの立ち寄るくらいいただけなのに、人にあやしまれるほどの香がしみついてしまった。
作者が漂わせている梅の香を、他の女性からの移り香ではないかといぶかっているというわけですね。作者に疑い(=嫉妬)の情を抱いているこの「人」は、作者の恋人、あるいは妻でしょうか。疑われて困ったという心情の裏には、嫉妬されてどこか少し嬉しくもある気持ちもにじみ出ています。