漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

【卵塔場】

2014-11-30 18:13:36 | 雑記
 26-1 で 【窮措大】 が出題(語選択書き取り)され、まったくわからずお手上げだったのですが、後で調べたら近世近代の著作に用例がたくさんあった、というのを以前の記事でご紹介しました。
 同じように、 26-2 の 【卵塔場】 も青空文庫で検索したところ、やはりたくさんの用例が出て来ました。特に泉鏡花には多用された言葉だったようです。

 泉鏡花   「卵塔場の天女」 「夜釣」 「燈明之巻」 「陽炎座」 「星あかり」 など多数
 芥川龍之介 「海のほとり」 「本所両国」
 岡本綺堂  「心中浪華の春雨」
 樋口一葉  「たけくらべ」


 この中で、芥川龍之介の「本所両国」の記述が少し気になりました。その箇所を引用します。

『この墓地も僕にはなつかしかった。僕は僕の友だちと一しょに度たびいたずらに石塔を倒し、寺男や坊さんに追いかけられたものである。尤も昔は樹木も茂り、一口に墓地というよりも 卵塔場 という気のしたものだった。』

 「辞典」には、 【卵塔場】 の意味は「墓場のこと」とあり、他の辞書でも「墓場。墓地。」との記載が多いようですが、この芥川の文章からすると、【卵塔場】 と単なる「墓地」とは、多少なりともイメージが違うもののようです。もともと 【卵塔】 とは、塔身が卵形であり、主に僧侶の墓塔として使われる石塔のことを言うようですので、 【卵塔場】 とは本来僧侶が葬られている墓所のことを指すのかもしれませんが、少し調べても正確なところはわかりませんでした。詳しくご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。




<「漢検 漢字辞典」掲載ページ>

【卵塔場】   初版 P.1535   第二版 P.1551