一日帰国の日を伸ばした。理由は簡単、原因不明の腹痛で身動きが取れなくなってしまった。それも、家を出なければならない時間の一時間前ほどから痛み出し、出なければならない時間にかなりひどくなってしまって、運転するどころではなくなったしまった。とにかく痛み止めを飲んでじっとこらえ、出発時間の2時間前までに運転できる状態になることを期待したが、駄目だった。そしてあきらめた。出発時間頃に治まってきて、今は治まっている。一体、なんだったのでしょうか。日本での仕事を体が拒否したのでしょうか。空港へ向かわないと決めた時から、治り始めた。明日、どうなるでしょうか。 パンガンダランのラフレシアの蕾なら、いつ行っても見られるエリアは直径30m~50mくらいの広さで、最低5か所はあります。沢の両側か片側の相当な急斜面です。45度平均はあるでしょう。上から見るとほとんど垂直に見えるところも多い。スキー場でも45度のところは非常に少ないし、上に立つと、落ちてゆくように見える。かなり厳しい場所です。また、落ち葉は殆ど滑り落ちてしまうのですが、やはりかなり残っているので、なお、滑りやすい。真っ直ぐには登れないので、斜面に対し、横向きになってのばらなければならない。邪魔ものの1cm~5cmくらいの背が低い木が適当にあって、行く手を邪魔しているのでその間を抜けながらまた、その枝を掴むことによって落ちるのを堪えることが出来る。ただし刺が生えている木があるので、何でもかんでも掴んでしまっては怪我をする、落ち葉と色がそう変わらないので、私は、目の前にあるのに気がつかなかったこともある。大木の根本の向こう側、斜面が迂回しているので、其の迂回している向こう側まで行く必要がある。あきらめてはいけない。私を含めて四人で探しまくる。臭いが遠くなれば行く過ぎたことになり、戻る。其のうち誰かが、有ったと、叫ぶ。 臭いに敏感な若者(レンジャー上がりの中年ではだめ)がここは臭う、と、言ったら、必ずあります。風向きをタバコの煙で見ます。風上に向かって45度の扇状に捜索を始めます。急斜面を登って行きます。必ず、あると信じて登って行きます。見つからない時はまだ、探し足りないと思って探しまくります。これがコツです。 連れて行く人は若者で臭いに敏感と言われている人、そして、ジャングルの中を縦横無尽に歩きまわれる人、この三条件が揃っている人は、そういないが、幸いにもウミさんの息子たちに条件がそろっている。其の兄弟の中でも、すごいのが一人いる。彼が臭うといた時、もう、有ったと同じです。 前もって、チャガールアラムへ入る日を、伝えておくと、彼らは前日に入って、半日ほどラフレシアの状況を確認しておいてくれる。私が一緒に入る日は、大体、場所を把握してくれているので、探す時間が少なくて済む。彼らがその前の日に有った数より多く会うことが出来る可能性が高くなる。出来るだけ私が探さなくてもいいように気を使ってくれているようでうれしい。 彼らにとっての目的は何と言ったって小遣稼ぎである。渡すお金を渋っては駄目です。金銭感覚は人によって違うし、ラフレシアに沢山会えたか、一つにしか会えなかったかで、渡す金額も自然に変わってくる。それがガイドの能力不足のこともあれば、実際に咲いている数が少なくて、ガイドの能力ではどうにもならないこともある。やはり、会えれば、運が良かったと思って、満足して、チップをはずめば、次回はもっと、彼らは、張り切ります。其の時限りの一回だけなら、なおさら、その人たちのおかげと思ってください。とにかく、やっと、会うことが出来たのですから。 多くの生物学者が、ブンクルやコタキナバルがどうのこうのと書いていますが、パンガンダランへ来て、一か月ほど滞在し、毎日、半日でいいのでジャングルへ入って観察すれば、世界中に発表するようなデータが取れるだろうし、今まで知られていなかった生態が明らかになるかもしれない。それほど、幻ではなく、どこからか持って来たものではなく、自然のままを簡単に観察できるのです。 もう一つ、重要なことはここのラフレシアの天敵はビヤワックというトカゲ(0.5~1m)がその臭いに引かれ、食べてしまうことです。その他には敵はいません。一番危険なのは人間ですが、ここの人達は決して持っていくことはしません。だから、私の感覚では、15年前に比べれば、会うコツというか、要領も良くなったと思いますが、数が増えているから、会える確率が高くなったとも言えると思う。
研究 確率 臭覚