エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

全米09年第3四半期VC投資ではクリーンテクノロジー分野が好調

2009-12-10 06:24:32 | Weblog
 全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA、全国約420社のVCで構成)は、会計事務所プライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)、トムソン・ロイターと共同で、四半期ごとにVC投資実績を集計して公表していますが、この度、2009年第3四半期のベンチャーキャピタル(VC)投資の動向を公表しました。
 それによると、09年第3四半期のVC投資は、637件(前期657件)、48億1,000万ドル(41億2,000万ドル:前期比17%増)で、1件当たりの平均投資額は755万ドル(627万ドル)でした。件数は前期比3%減と伸び悩んでいるものの、投資額は、09年第1四半期を底に増加基調にあります。
 分野別では、クリーンテクノロジー分野への投資が好調なのが目立っています。企業の成長段階別にみると、成長初期への投資案件が増加していますが、VCが出資した企業の新規株式公開(IPO)は3件にとどまり、M&Aも件数、平均受取額ともに減少しています。アーリーステージへの投資は、一定のタイムラグののち、IPOやM&Aの増加に結び付いていくと考えられます。
 より具体的に見ると、以下の通りです。
1 投資先の産業別内訳では、バイオテクノロジーがすべての産業の中で最大の9億1,000万ドルですが、4%減少しています。バイオテクノロジーと併せてライフサイエンス分野に位置付けられる医療装置・器具は6%減の6億2,000万ドルです。ソフトウエアは、件数では17業種中最も多い128件だったが、投資額は6億2,000万ドルと、96年第3四半期(5億2,000万ドル)以来の低水準となりました。
 他方、工業・エネルギーは、89%増の8億6,000万ドルと大きく伸びました。同産業の投資額上位3件は、VC投資全案件の中でも10位以内に入る大型案件で、太陽電池メーカーのソリンドラ(カリフォルニア州、2億9,000万ドル)、電気自動車メーカーのテスラ・モーターズ(同州、8,000万ドル)、環境対応建築資材メーカーのシリアス・マテリアルズ(同州、6,000万ドル)です。3件ともクリーンテクノロジー分野です。
 クリーンテクノロジー分野は工業・エネルギー産業に限らず、そのほかの産業にもまたがっており、代替エネルギー、公害対策、リサイクル、環境に適した電力供給や節電に関する事業を手掛ける企業が含まれますが、同分野全体としても、前期の49件から57件に伸び、投資額は16%増の9億ドルに上りました。
 前年同期(79件、10億4,000万ドル)に比べると、件数、金額とも及ばないものの、VC投資額全体に占める割合は15%から19%に拡大しており、投資先としてクリーンテクノロジー分野の注目度はさらに高くなっています。
2 企業の成長段階別に見ると、投資件数のシェアは、スタートアップ期14%(前期9%)、成長初期31%(30%)、拡大期29%(29%)、成長後期26%(32%)でした。前期、前年同期と比べると、VCの投資対象が成長前半段階(スタートアップ期か成長初期)に移行していることがうかがえます。
 ただし、金額ベースでは、成長前半段階のシェアは前期の50%から33%に、平均投資額は前期の650万ドルから560万ドルにそれぞれ減少しています。成長段階別の分野別内訳は公表されていませんが、成長前半段階が多くを占めるクリーンテクノロジー分野の増加が影響していると推測されます。
3 VC投資を受けた企業の新規株式公開(IPO)は3件で、前期の5件から減少しました。また、M&Aは前期の64件から62件へと微減で、平均受取額は前期の2億ドルから6,000万ドルに大きく落ち込みました。 
 NVCAのマーク・ヒーセン会長は、3件のIPOについて「非常に勇気づけられるものの、(株式公開を検討している企業に対する)呼び水とはなっていない。企業の多くはまだ株式公開に慎重だ」と述べ、M&Aについても「社数と平均受取額の両方が前期から減少したのは望ましくない。市場心理は上向きつつあるものの、本格的な回復は10年以降になろう」との見解を示しています。
 IPOを行った3件は、A123システムズ(マサチューセッツ州、調達額3億8,000万ドル)、コンピュータ遠隔操作ソフトのプロバイダーのログミーイン(同州、1億700万ドル)、医薬品メーカーのカンバーランド・ファーマシューティカル(テネシー州、8,500万ドル)です。
4 A123システムズの調達額3億8,000万ドルは、07年3月以降で最大規模のものです。同社はもともと工具用の蓄電池メーカーですが、その技術を生かし、BMWやクライスラーと提携し、ハイブリッドカーや電気自動車用のリチウムイオン電池の開発を手掛けています。
 日本企業では、IHIが10月28日に同社とリチウムイオン電池供給で共同事業契約を結びました。01年の創業で、06年に初めて売り上げを計上。その後売上高を伸ばす一方で、研究開発費などのコストがかさんだため、一度も黒字化したことはありません。
 それでも3億ドルを超す金額を調達できたのは、電気自動車普及への期待と、政府の同製品普及への後押しが投資家の好感を呼んだためと見られます。同社は8月5日に、エネルギー省(DOE)から米国再生・再投資法に基づく「電気自動車バッテリーおよび部品製造イニシアチブ」の下で2億4,900万ドルの補助金を受けたと発表しています。

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