エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

超電導技術とCO2削減

2010-02-27 17:30:21 | Weblog
 低温下で電気抵抗がゼロになる超電導現象。これまでMRI(磁気共鳴画像装置)など先端医療機器にその応用はとどまってきましたが、地球環境やエネルギー問題解決の本命として注目されるようになっています。
 2008年7月、G8洞爺湖サミットにおいて、住友電気工業は小型の超電導モーターを搭載した世界初の超電導電気自動車を公開しました。自動車はひとつのデモンストレーションにすぎません。省エネ性の本領が発揮される重電分野への応用は幅広くあります。
 超伝導の歴史において画期的な発見は、1986年に高温超電導材料が発見されたことです。それまでの絶対温度9度(セ氏マイナス264度)でしか使えなかった材料に比し、このイットリウム系材料は同90度(同183度)で超電導になるというものです。
さらに、その2年後の88年に、日本の研究者がビスマス系の材料を発見しました。このビスマス系は、同110度(同163度)で超電導になるので、液体窒素(絶対温度77度)で冷やせば十分余裕をもって能力を発揮でき、イットリウム系に比べ加工しやすいという特性がある優れものです。セラミックスなのでもろい点に関しては、多芯化により曲げても線が切れないように工夫しています。
 住友電工は、ビスマス系の超電導材料を使用した電線、磁石、モーターなど様々な製品開発を行ってきたいますが、最も実用化に近いものが船舶用モーターです。IHIなどと共同開発しており、ディーゼルエンジンに比べてコンパクトで船底に置かなくてもいいので、同じ大きさの船でも積載量が増し、CO2排出も減少します。
 自動車へは、冷却装置込みで普通の自動車のボンネット内に収まる大きさのモーターを開発しています。省エネ性に加えてトルク(回転力)が大きいので、バスや宅配便のトラックなど稼働率が高く発進・停止が頻繁な使い方に適しています。世界の路線バス60万台(年間走行距離5万キロ)をすべて超電導電気自動車にした場合、普通の電気自動車で置き換えた場合より13%程度CO2排出が減少すると試算しています。
 送電線への応用について、米国が最も進んでおり、DOEが支援したプロジェクトが複数進行中です。韓国も熱心に取り組んでいます。日本では、2010年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、東京電力・旭変電所(横浜市)内で初めて送電網に組み込む実験が開始されます。
 今後日本では都市の電力需要は増えますが、既存の銅の電線を超電導に置き換えれば、地下の狭いスペースをそのまま利用しながら送電量を増やせます。地下送電線は日本全国で2万キロ以上ありますので、その効果は非常に大きなものがあります。
 さらに超電導は、再生可能エネルギーの利用拡大を推進する上で大きな効果を発揮します。巨大な太陽光発電所を砂漠などに設けて消費地まで電気を送る構想がありますが、長距離の送電をするなら、超電導の直流送電は送電損失がなく非常に効果があります。

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