Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

2004年を振り返って

2004-12-31 | ◆ビジネス
ブログを始めておよそ半年、これで198エントリー目となる。よく書いたなと思うが、タイトルだけ眺めてみても、自分が興味を持った分野とその動きが俯瞰できて面白い。全体を振り返って総括し、今年最後のエントリーとしたい。

◆◆コモディティ化とSOAの議論◆◆
今年良く出てきたキーワードは「コモディティ化」であろう。それが頂点に達したのがIBMによるPC事業の売却である。また、HPがItenium開発部隊をIntelへ移管するとした決断は、ハードウェアのコモディティ化がPCからUNIXへと向かいつつあることを示している。今後もハードウェアのコモディティ化は進行するのだろうが、その微妙な境界の判断を誤って苦境に陥る企業も出るのではないか。

一方、コモディティ化はソフトウェアへも波及すると見込まれるが、ソフトウェア側は現在「インターフェースの標準化」が進行中の分野であり、それは「コモディティ化」とは明確に区別されなければならない。オラクルによるピープルソフトの買収も、「規模の経済」という言葉からコモディティ化と混同される嫌いもあるが、「インタフェースの標準化」はソフトウェアの価値を必ずしも下げるものではないのである。

しかし、インターフェースの標準化が進んだことにより、Salesforce.comの台頭に見られるような、ソフトウェア・ビジネスのSOA型への転換が見え始めたのが2004年であったと言えよう。メリルリンチが開発したオンデマンド・インデックスは、単にオンデマンド企業を集めた株価指数ではない。それは、オンデマンドのサービス型へ移行するソフトウェア会社の評価方法を提言するものである。

インターフェースの標準化という点では顧客企業を裏切り続けてきたソフトウェア産業であるが、ピープルソフトの買収劇に見られるように、ソフトウェア会社は既に待ったなしの状況にある。よって、ソフトウェア産業として市場拡大を目論むならば、インターフェースの標準化とSOA型への移行は避けられない。来年以降は、特にERPなどのパッケージソフトがそのアーキテクチャーをどう変化させていくかに注目したい。

【関連エントリー】
IBMのPC事業売却も真似されるか
ついに買った、PeopleSoft
HP、ついに64ビット・チップには見切りをつけたか
コモディティ化とインターオペラビリティの相違
押し寄せるSOA化の波 - 今度はSupportforce.com
オンデマンド時代のソフトウェア企業評価
これぞオンデマンド - Salesforce.com
Dellの顧客満足度低下 - 低コスト戦略と顧客密着型戦略の両立


◆◆アウトソーシングの第2ステージ◆◆
アウトソーシングも話題の多い1年であった。DELLがインドからコールセンターを引き上げるという話や、JPモルガン・チェースがIBMとのアウトソーシング契約を打ち切るという話など、アウトソーシングの意義が問い直される局面も多くあった。一方で、インド系ベンダーの好調さが報じられ、日本のIT企業も人事交流などソフト面での関係強化に動いた年でもある。

アウトソーシングの流れは一時のはやりである状況を脱し、具体的な成果が出るのかどうか、また、出すためにはどのような手段を講じるべきか、といったことが問われるステージへ移行しつつあると言えよう。また、開発委託を契約面などで整備する動きが見られ、また、開発委託の作業を可視化するようなシステム・ツールも登場している。

モジュール化、SOA化の流れのなかで、開発作業や単純作業のアンバンドリングと外部委託は必然であり、よりノウハウを高度化させながら進展していくものと考えられる。来年度は、アウトソーシングの最適化や品質維持のための手法・ツールなどの発展に注目したい。

【関連エントリー】
「オフショアリング」から「ホーム・ショアリング」、あるいは「ホーム・ソーシング」
総務省、インドのIT企業とのプロトコル作り
インドの日本人村
JPモルガンチェースによるアウトソーシング契約解除
インド絶好調の次


◆◆システム・インテグレーションの今後◆◆
そして、相変わらず苦境の続くSIビジネスである。SOAやアウトソーシングが更に進展する中で、これまでのSIビジネスが更に縮小することは間違いない。今年も単価下落と、その余裕無さから来る赤字プロジェクトに悩まされる状況に大きな変化はなかった。今も、売上維持のために旧来型のビジネス・モデルを脱しきれない状態が続いているといえよう。

SI企業が体力を消耗し続ける中、選択枝としては規模の経済を働かせるか、より専門特化していくかに道は分かれる。しかし、体力を消耗した中小規模のSIベンダーは、買収するというよりは、買収される側に回る可能性が高い。であれば、より専門性を高めて付加価値を向上させる方が単独生き残りとしては復活の可能性が高くなる企業が多いであろう。

その際に留意すべきが、SOA化の流れであろう。仮に専門特化の道を選んだとしても、顧客へのサービス提供の方法を間違えれば、それも無に帰してしまう。また、SIベンダーが専門性を高めるには、これまで業容拡大のために続けてきた低付加価値のプロジェクトから人員をシフトさせなくてはならない。これは売上減少に繋がる危険を孕んでおり、そこにはマネージメントの決断が求められる。

どのSIベンダーにとっても楽は話ではない。

【関連エントリー】
SI企業の興亡 -- トータルソリューションの終焉
なぜ日本の情報サービス業は生産性が低いのか


◆◆個人的には◆◆
やはり禁煙ですね。

【関連エントリー】
禁煙への道!! - ネガティブ・キャンペーンの効果測定


では良いお年を!!


脱出せよ。出PeopleSoft記。

2004-12-31 | ◆ビジネス
ピープルソフトにおいて反オラクルを貫いた前CEOであるCraig Conwayが退任に追い込まれたのが10月(「ピープルソフト、ついにオラクルの買収受け入れか」 )。そして12月についに買収が成立したが、その買収を成立させたピープルソフトのCEOであるDavid Duffieldが早くも退任してしまった。

"PeopleSoft CEO Duffield Resigns" internetnews.com

記事では、今回の退任が"Executive Exodus"の始まりであろうと報じている。"Exodus"といえば旧約聖書の出エジプト記を表わす単語、つまりマネージメント層の大量脱出である。オラクルはピープルソフトのプロダクトのサポートは続けると明言しているが、社員については数千人規模の解雇が発生すると見込まれている。

いよいよ買収後の統合作業がリアリティを持ち始めた。HPとCompaqの統合に際しては、事前に双方での統合プランが綿密に練られていたという。しかし、今回それはあり得ない。オラクルが完全に主体となって統合作業を進めることになるが、どうなるであろうか。

知らなかったよ、永久不滅ポイントのおじいさん本物だって

2004-12-30 | ◆ビジネス
世間では常識なのかもしれないが、セゾンカードのテレビCMに出てくる大車輪おじいさんが本物だとは知らなかった。。。今日テレビに出てて、グルグル回るのでびっくりした。68歳と言ってたかな。

クレジットカードのポイントや航空会社のマイレージは大抵期限がついていて、その期限に合わせて使ってしまった時、あるいは期限が切れてしまった時が縁の切れ目となる。つまり、継続的にそのポイントの発行者と取引を続けるインセンティブがなくなる。スイッチング・コストがど~んと下がるわけだ。

永久不滅ポイントの面白さは、スイッチングコストが下がらないことだ。これによって、ポイントを長期に渡って貯めたい顧客のロイヤルティーを高めることが出来る。もちろんポイントを使わなければ、だが。

ただ、ポイント期限が来たときに使わない人というのは、そもそも大してポイントが貯まってない、つまりあまりお金を使わないお客であろう。そんな人たちがどんなに増えてもありがたくはない。ただ、そんな人も長い目で見ると、だんだん稼ぎが増えてカードをたくさん使ってくれるようになってくれるかもしれない。ならば、セゾンカードは若者ターゲットだ。実際そんな気がする。

あとは、カードを使うがポイントも使い切ってしまう人。そんな人には、もっとポイントを貯めたくなるようなインセンティブを付ける必要がある。よりハイグレードな景品が用意されなくてはならない。実際のところは知らない。

永久不滅ポイント、導入に合わせてセゾンがマーケティング戦略の中でどう位置づけているのか興味深い。でも、あのおじいさんが本物だったというのが一番の驚きだったな。





「オフショアリング」から「ホーム・ショアリング」、あるいは「ホーム・ソーシング」

2004-12-29 | ◆ビジネス
アメリカでの新しい動き。いわゆるインドや中国への業務アウトソーシングを指す「オフショアリング」から、国内のホームワーカーに業務をアウトソースする「ホーム・ショアリング」へというトレンドが生まれつつあるらしい。

"Stay-at-home Reps Stem Offshore Outsourcing" Information Week

つまり、コールセンターをインドへアウトソースせずに、ブロードバンドを利用してホームワーカーの自宅と回線接続することで、コールセンター業務を米国内にある自宅から行わせようというものである。

そうした動きが出てきた要因として、①雇用の海外流出、②サービスレベルの低下が上げられている。また、それを実現するネットワークインフラが整いつつあるというのも当然背景にある。

「ホームショアリング」も、情報管理やサービスレベルの維持など、これはこれで課題をいくつも抱えることにはなろうが、インド系ベンダーにとっては新たな代替手段の登場となる。

日本の高齢者人口も、「ホーム・ショアリング」で活用するのも手かな。

ラジオを聞くのにお金を払うアメリカ

2004-12-29 | ◆ビジネス
アメリカでは衛星ラジオが好調なようだ。有料である。

"Satellite radio sees subscriber growth" CNet News.com

衛星ラジオのオペレーターは2社あり、XMが310万人、Siriusが130万人の契約者をこれまでに獲得しているという。日本では有料テレビという文化は定着したにしても、有料ラジオのマーケットはまだ考えにくい。

では、こうした契約増は何によってもたらされているのか。面白いのは、自動車メーカーが工場、あるいはディーラーにて衛星ラジオ受信機を車に装着するようになったことで、契約数が大幅に伸びたという話だ。つまり、衛星ラジオは、いくらラジオをのものを宣伝しても不十分で、その存在を補完することとなる受信機が消費者のもとに存在していなくてはならない。土地が広大なアメリカでは、それが車なのである。

では、受信機が車に設置されていれば、衛星ラジオは他国でもメジャーな存在となり得るだろうか? 例えば、これらの衛星ラジオ会社は欧州への進出もたくらんでいるが、ことはそれほど簡単ではないはずだ。衛星ラジオは広い範囲に電波を飛ばせることがメリットになるが、欧州ではそれは強みとはならない。

多くの国が存在するため、言語も文化も異なり、衛星ならではのコスト効率が生きないのだ。フランスでは一定割合をフランス語にする必要があるなど、規制も障害となる。また、衛星の電波は車で受信するには問題ないだろうが、家の中など遮蔽物があると受信状態が悪化する懸念もある。

ビジネスモデルというのは、モデル自体が独立して存在しているというよりは、それが存在する環境とセットで考えるべきなのでしょう、と別に衛星ラジオが他国で失敗したかまでは知らないのに、勝手に思ってしまうのでした。でも、テレビがありならラジオもありか、とつい思ってしまうあたりは怖いです。