Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

キャッシュ・バック? -銀行代理店業務の解禁

2004-12-18 | ◆ビジネス
イギリスではスーパーマーケットで買い物をする際に、銀行のデビットカードを使うことが多い。そして、決済するときに「キャッシュバック?」と質問される。何のことやら良くわからなかった当初はとりあえず「No」と答えていたが、慣れてきてから「Yes」と言ったらどうなんのかな、と思って「Yes」と言ってみた。すると「How much?」ときた。キャッシュバック。。。現金、戻る→「返金!?」それでもって「How much?」。何で買い物して言った分だけ返金されるのか良くわからなかったが、10ポンドなどと言ってみた。すると、10ポンドくれたのである。

しかし、何のことはない、デビットカードから、買い物金額に加えて更に10ポンド銀行から引き落として、それをレジで渡してくれるということであった。つまり、スーパーのレジが、ATMの現金引き出しの役割を担ってくれているということだ。夜中にATMで現金を下ろすのはちょっと怖い国である。安全面からも、買い物時に現金を引き出せるのは有難い。

◇銀行法の改正と銀行代理店業務の解禁◇
さて、次期通常国会にて、銀行の代理店業務に関する銀行法が改正されて、一般企業でも銀行代理店業務を行うことが可能となる。最近は、銀行が証券会社や保険会社の窓口になるという話が多かったが、今度は、例えばスーパーマケットが銀行の窓口になるという話である。

すると上記のように、スーパーマーケットで預金の出し入れが出来たり、融資の申し込みが出来たりという話になる。この規制緩和は代理店業務を可能とすることから、単なるATMの場所貸しを超えたサービスが登場することが予想される。

12月4日の日経記事によれば、「スーパーのほか旅行会社、自動車や住宅の販売会社でローンを扱うことができる」とし、また「預金の受け入れや資金の貸し付け、為替取引のほか、両替・手形の引き受けなどに限られている代理店の業務範囲も広げる考え。現在、銀行本体で手がけている投資信託や保険商品の販売も認める方向で調整している」ということだ。

HP、ついに64ビット・チップには見切りをつけたか

2004-12-18 | ◆ビジネス
HPがIteniumの開発要員をIntelに転籍させる方針を発表した。Iteniumは、HPがIntelと共同開発を進めたきた64ビットのUNIXチップであるが、今回の動きは、UNIXチップ市場や競合他社にどのような意味を持つのだろうか? 

面白いことに、本件を報じるCNET Japanの記事は、「HP、Itanium関連プログラムに30億ドルを投入へ」と題され、あたかも更にHPがItanium戦略を強化するかに聞こえ、エンジニアの転籍とは矛盾するように見える。

◇そもそも◇
話の発端は、HPがCompaqを買収した際に、HP独自のPA-RISCチップと旧DECのアルファ・チップと二つの64ビットチップを抱えたことに遡る。64ビットチップ2つ分のR&Dを継続していては、買収効果を出すことはできない。そこで、独自チップへのこだわりを捨てて、Intelとの共同開発になるIteniumへと大きく舵を切り、PA-RISCとアルファについては、開発を打ち切ることとしたのである。

◇そして市場は◇
それまで、UNIXチップを開発する3大メーカーであるHP、IBM、SUNは、独自チップによる顧客囲い込みを行ってきた。それに対し、HPによるItenium戦略は、PCの標準化を促進したIntelによる64ビットチップへの参入を許容した。しかし、同じHPであっても、これまでのPAやアルファで動くソフトは、そのままではItaniumでは動かない。そこに付け込んで、IBMやSUNはHPの戦略を非難し、自分たちのチップへのマイグレーション・キャンペーンを展開した。

◇そして結局◇
結果的に、Iteniumが順調にシェアを伸ばしているという話は聞かれない。その最大の原因はソフトウェア不足にあると考えられる。いかにIteniumの性能が優れていようとも、そのチップで動くソフトウェアがなければ、誰も買わないのである。むしろ、チップの価値は、ソフトウェアのアベイラビリティというネットワーク効果で決まる部分の方が大きいと言えるかもしれない。

◇HPの決断◇
HPは今回の決断の中で、Itanium関連のリソースをチップ開発からItanium対応のソフトウェアやマーケティングへシフトさせるつもりであるという。つまり、HPは64ビットチップ開発に関わるノウハウは完全に諦め、チップの拡販に必要となるネットワーク効果へと軸足を移すということである。当然の動きのように見えながら、すぐにこうした行動に出なかったのは、チップ開発のノウハウを失うことへの抵抗感からであろう。

◇市場への影響◇
64ビットチップ開発のスキルをIntelへ移管することは、極端な話、HPにとってUNIXはPCと同様のコモディティ製品になるということだ。つまり自分では開発せずに、完成した部品のみ調達して、組み立てのみ行うこととなる。Intelにしてみると、Itanium開発に関して特定ベンダーからの影響力が弱まり、よりコモディティ製品として拡販しやすくなるだろう。IBMとSUNにしてみれば、いよいよUNIXチップのコモディティ化に歯止めをかけられるかの正念場になる。HPがリソースをソフトウェアベンダーの支援やマーケティングにシフトすることは、一気にItaniumの価値を高めることとなる可能性があるからだ。

UNIXの64ビット市場自体がPCサーバーに押されて伸び悩んでいる状況下、HPの決断は間違っていないのではないかと思うが、さてどういう結果が出るであろうか。