Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

『ASTERIA 実践ガイド』を読んでみた

2005-05-21 | ◆読んでみた
競争の激しい分野でソフトウェア製品を選択しようとすると、ある一時点での機能比較では優劣を決めがたいことが良くある。それは、継続的な機能強化が行われており、製品の進化が速いからである。そんなときに、重要になるのがその製品が目指すビジョンであり、そこに共感できるかである。

ASTERIAが位置するデータ・インテグレーションのマーケットも、国内外の競合がひしめいており、決して楽な世界ではない。ASTERIAの開発元であるインフォテリア社の東海林・中川・江島3氏による『ASTERIA 実践ガイド』は、そのタイトルの示すように実践ガイドであり、評価版を利用したASTERIAの体験に重きがおかれている。しかし、本書はそれだけではなく、ASTERIAがどのようなビジョンを持つ製品であるかを示すものであり、それゆえに他のプロダクトとそのコンセプトにおいて何がユニークであるのかを知ることができる。

先ほどASTERIAをデータ・インテグレーションのマーケットに位置づけたが、本書を読み終わってみれば、それもASTERIAのビジョンを理解していないが故の安易な分類であったと言わざるをえない。現時点、機能面ではデータ連携がその中心ではあるが、その目指すところは「グラフィカル・ランゲージ」であり、これまでのテキスト表現を中心としたプログラム言語からの脱却なのである。また、目指す最終ターゲット顧客は大企業ではなく、個人である。(これは、ASTERIAがエンタープライズ向けではないと言うのではなく、ASTERIAの開発者はこうした製品が個人でも利用可能な世界を志向しているということである。)

もちろん、個人向けとエンタープライズ向けでは、ビジネスのモデルも大きく異なる。しかし、「ソフトウェアなんかあとはコモディティ化するだけだ」などと言う人も多い中、「まだまだソフトウェアの世界は発展途上です」と真摯にそのビジョンの実現へ向けて邁進する執筆陣には素直に共感できるのである。

SaaS? - Software as a Service

2005-05-12 | ◆ビジネス
新しい流行言葉になるのか? ライセンス購入に対して、従量課金型のASP型ソフトウェア提供が最近持てはやされているが、これを英語では"Software as a Service"と言う事がある。略してSaaS。この記事は、SaaSの伸びが2004年度は前年対比40%増であったというIDCのレポートについて報じている。

"Software as a Service Seen Sprouting Legs" Internetnews.com

記事では、今が旬のSalesforce.comを始め、Siebel、GrandCentralなどの企業名が並ぶ。また、対象顧客は中小企業及び、大企業の一部門であることが多いという。

この流れはまだまだ止まらないとしているが、GrandCentralはデータ・インテグレーションをサービスとして提供しているという。果たしてASPのモデルはどこまで通用するのか。

個人情報保護を始め、データ・マネージメントの重要性が高まる中、SOA型モデルの適用方法はこれから更に試行錯誤が続くのでしょう。

米国証券取引委員会、XBRLを推奨

2005-05-09 | ◆ビジネス
財務報告のXMLスタンダードであるXBRLに関して。
ボストンで開催された第11回XBRL世界大会における米国証券取引委員会(SEC)会長William H. Donaldsonの発言に触れた記事。

"XBRL Gets Real As Standard For Financial Reporting" FinanceTech

SECは本年2月にボランタリー・ベースでのXBRLフォーマットでの報告受付を開始しているということだが、今回の発言ではSECへ財務データを報告する全企業に対して、XBRLでの報告を呼びかけたということである。

日本においては、金融庁がEDINETにおいてXBRL採用が検討されている。
EDINET高度化に関する協議会発足

信託参入 第一号

2005-05-08 | ◆ビジネス
それは最近話題のコンテンツ系ではなく、どちらかて言えば正統派とも言えるリース会社であった。

『三井住友銀リース、子会社通じ信託に参入』  Asahi.com

大口のリース案件を手掛けるに当たり、従来は複数のリース会社で手掛けることでリスク分散を図ったが、リース債権を証券化して投資家に販売することでリスク分散を図ろうというもの。その際に、信託受益権として投資家に販売するために、今回信託会社として登録されたSMLC信託を利用する。

従来型の信託銀行を利用しないのは、コスト削減と機動性の確保といったところが理由なのだろうか。いずれにせよ、自らリスクを引き受けたうえで、それを市場を通じて分散させるという方法は、これからも金融ビジネスにおける中心的な動きになるのではないか。

野村證券がマンチェスター・ユナイテッドのファンを金融支援

2005-05-07 | ◆ビジネス
欧州チャンピオンズ・リーグ準決勝、リバプールとチェルシーの激しい攻防戦、あまりにも真剣なファンの表情。これらを見ていると、やはりフットボールはイギリス人の生活の一部で、単なる娯楽を通り越したものである。

一方、ビジネス・サイドから見ると、フットボールは強力なブランド・ビジネスであり、スタジアムの運営から始まって、放映権やグッズ販売で収益を上げる立派な企業組織であり、上場しているクラブも多い。チームが経営難に陥れば、良い選手も獲得できなくなり、チームのモラルも下がって、成績もジリ貧となるケースが多い。

チェルシーはロシアの石油王アブラモビッチに買収されて以降、4億ドル以上を選手獲得に使い、今シーズンはプレミアリーグの優勝に導いた。金の力にものいわせるアブラモビッチへの批判も多い一方で、買収後も積極的にチームに投資する姿勢を評価する声もある。

しかし、マンチェスター・ユナイテッドは事情が違うようである。かなり前からアメリカの投資家Glazer氏がマンチェスター・ユナイテッドの買収を仕掛けようとしているが、クラブが買収に応じないだけでなく、ファンが徹底抗戦の構えを見せている。今回、野村證券の英国法人がファンによって設立する投資ファンドに資金貸付を行い、ファンによる株式取得を支援することとなったようだ。

"Nomura to fund Man Utd supporters in bid battle" Reuters

ビジネスにおいても、ステークホルダーの分析というのは重要だが、フットボールや野球などへの投資は、通常のビジネスと比して株主以外のステークホルダー、つまりファンの心情を読み誤ると失敗する。今回の結論はまだ出たわけではないが、ファンはファンという立場から株主というより強い立場のステークホルダーへと変質することまで決断させたわけである。

このあたりのゴタゴタが解決しないと、マンチェスター・ユナイテッドもプレミアでトップに返り咲くのも厳しいか。