Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

HP、ついに64ビット・チップには見切りをつけたか

2004-12-18 | ◆ビジネス
HPがIteniumの開発要員をIntelに転籍させる方針を発表した。Iteniumは、HPがIntelと共同開発を進めたきた64ビットのUNIXチップであるが、今回の動きは、UNIXチップ市場や競合他社にどのような意味を持つのだろうか? 

面白いことに、本件を報じるCNET Japanの記事は、「HP、Itanium関連プログラムに30億ドルを投入へ」と題され、あたかも更にHPがItanium戦略を強化するかに聞こえ、エンジニアの転籍とは矛盾するように見える。

◇そもそも◇
話の発端は、HPがCompaqを買収した際に、HP独自のPA-RISCチップと旧DECのアルファ・チップと二つの64ビットチップを抱えたことに遡る。64ビットチップ2つ分のR&Dを継続していては、買収効果を出すことはできない。そこで、独自チップへのこだわりを捨てて、Intelとの共同開発になるIteniumへと大きく舵を切り、PA-RISCとアルファについては、開発を打ち切ることとしたのである。

◇そして市場は◇
それまで、UNIXチップを開発する3大メーカーであるHP、IBM、SUNは、独自チップによる顧客囲い込みを行ってきた。それに対し、HPによるItenium戦略は、PCの標準化を促進したIntelによる64ビットチップへの参入を許容した。しかし、同じHPであっても、これまでのPAやアルファで動くソフトは、そのままではItaniumでは動かない。そこに付け込んで、IBMやSUNはHPの戦略を非難し、自分たちのチップへのマイグレーション・キャンペーンを展開した。

◇そして結局◇
結果的に、Iteniumが順調にシェアを伸ばしているという話は聞かれない。その最大の原因はソフトウェア不足にあると考えられる。いかにIteniumの性能が優れていようとも、そのチップで動くソフトウェアがなければ、誰も買わないのである。むしろ、チップの価値は、ソフトウェアのアベイラビリティというネットワーク効果で決まる部分の方が大きいと言えるかもしれない。

◇HPの決断◇
HPは今回の決断の中で、Itanium関連のリソースをチップ開発からItanium対応のソフトウェアやマーケティングへシフトさせるつもりであるという。つまり、HPは64ビットチップ開発に関わるノウハウは完全に諦め、チップの拡販に必要となるネットワーク効果へと軸足を移すということである。当然の動きのように見えながら、すぐにこうした行動に出なかったのは、チップ開発のノウハウを失うことへの抵抗感からであろう。

◇市場への影響◇
64ビットチップ開発のスキルをIntelへ移管することは、極端な話、HPにとってUNIXはPCと同様のコモディティ製品になるということだ。つまり自分では開発せずに、完成した部品のみ調達して、組み立てのみ行うこととなる。Intelにしてみると、Itanium開発に関して特定ベンダーからの影響力が弱まり、よりコモディティ製品として拡販しやすくなるだろう。IBMとSUNにしてみれば、いよいよUNIXチップのコモディティ化に歯止めをかけられるかの正念場になる。HPがリソースをソフトウェアベンダーの支援やマーケティングにシフトすることは、一気にItaniumの価値を高めることとなる可能性があるからだ。

UNIXの64ビット市場自体がPCサーバーに押されて伸び悩んでいる状況下、HPの決断は間違っていないのではないかと思うが、さてどういう結果が出るであろうか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿