楕円と円 By I.SATO

人生も自転車も下りが最高!
気の向くままに日常と趣味の自転車旅を綴ります。

『私の自転車旅物語』 -想い出を辿る旅 はじまり -

2021年03月14日 | 『私の自転車旅物語』

今は廃線になった函館からのJR松前江差線。木古内駅で松前行きと江差行きに分かれる。

忘れられない想い出がある。世の中に出て最初の勤務地の江差町へ向かっていた昭和48年4月1日のこと。この日は日曜日で役所の辞令交付は4月2日だった。

 

列車は木古内町を過ぎると集落の光も途絶えがちになり、やがて真っ暗な山間部を今にも停まりそうな速度でゴトゴトと走った。

この先に本当に江差町はあるのだろうかと心細くなった。そしてようやく滑り込んだ上ノ国町湯ノ岱と書かれたホームの案内板を見ると次が江差町だった。やれやれ。

江差町駅の改札口にはそれらしい人達が出迎えに来ていた。「Tさんですか」と声はかかるが「佐藤さんですか」は無い。やはり新人らしき若者が一人二人と姿を消して遂には自分ひとりになった。

 

その時、「Tさんがいないので代わりに貴方を連れてゆきます」と声をかけられ、その夜は職場の寮に泊まることになった。Tさんは木古内駅で分離された松前町行き車輌に乗ったままだったのだ。

寮の食堂のテーブルに透き通る「イカ刺し」が乗っていた。流石だ。さてゆっくり食べようとしていたらドヤドヤと二人が入ってきた。

「ごめんごめん。総務課から聞いていなかったもので」と頭を掻いて寿司店へと連れ出し、所属課の歓迎会となった。もう亡くなった直属の係長の上機嫌な笑顔が懐かしい。

 

こうして始まった社会人生活。予期しなかったコロナの時代、『私の自転車旅』の想い出も江差町を訪ねた時から始めることにしました。真っ青に晴れた2013年7月のことでした。(つづく)

 

《江差町 鴎島にて   2013.7.23》