ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

二十歳

2007-12-11 23:19:17 | 
彼女は自分に忠実に生きた。
生きることに対して深く悩み、自分の弱さに向き合おうとする姿勢を崩さなかった。
なんとなく感じて、なんとなく生きることをどうしても許せなかった。
彼女は誠実ゆえにそれが出来なかった。自己の孤独と真摯に向き合った。
「独りであること」「演技をし続けていること」を嘆く。
そして家族、恋人との絆の喪失。自死の選択・・・。

はじめてこの文庫本を手にしたとき、ちょうど僕も同年齢に差し掛かっていた。
彼女の感性の瑞々しさや生きることへの誠実さに驚きを覚えた。
またそうした心の動きや憤りを、鮮烈な詩的文章に綴る表現力に感嘆した。
たった20才で生を絶つ。なんて事をと思った。

本の中表紙には本当に幼い顔をした高野さんがいた。
「二十歳であること未熟であること」を自分の原点とした彼女。
僕の周りにいまだかつてこんな人は存在しなかった。

奥という人の「青春の墓標」という本も読んだ。こちらも切ない話である。
しかし、やはり僕の心の奥底にあるのは、彼女の発した一語一語、また彼女の誠実さだ。
その後の僕の生き方に少なからず影響を与えた一冊だった。

生きていればもう60才近い。あれから40年も過ぎたんだ。
人間が己の生と真摯に向き合い生きる。そんな時代はもう二度と来ないような気がする。
そういう意味で、僕は60年代という時代に、今もあこがれる。





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