80才のハツラツ日記

愈々名実共に80才を迎え、人一倍好奇心を燃やして、元気な行動の随筆日記です。

東野圭吾著「さまよう刃(やいば)」を読んで---著者の思い---

2011年04月05日 | 本の情報
この程、上記の角川文庫版を読み終えました。

このストーリーだけでなく、著者の他の作品を読んでみて、
犯罪に対する著者の深い思いを感じる事が出来ました。

加害者と被害者。(殺人の場合は、被害者の親族、
 それに加害者の親族も、広い意味で被害者と言えるでしょう)

事件の後、より大きな精神的被害を受けているのは、
間違いなく被害者の方だと思わざるをえません。


加害者の方はやがて事件の印象が薄くなって行くのに、
被害者は長期に亘ってその苦痛を味わう事になるのです。
(著書の「手紙」ではその状況がよく判ります)

特にこのストーリーでは加害者は二人の不良少年。法律では少年法で裁かれます。
残虐な獣の様な手段で最愛の娘を惨殺された父親は、警察が逮捕する前に、
自分が復讐(仇討)したい気持ちになるのは、当然の人情だと思います。

特に少年法で僅かな拘束期間で釈放されるならば尚更です。
著者は被害者の立場でこの矛盾を追及している様に見受けられます。


これは推理小説ですからネタばれにならない為に筋は書きませんが、
終局近く、迫真のサスペンスと大きなどんでん返しに唖然とさせられます。

重く哀しいテーマですが、流石と言うか心を揺さぶる傑作だと思いました。



新選組 幕末の青嵐を読んで

2011年03月23日 | 本の情報
著者の木内昇(きうちのぼり)氏は、
著書「漂砂のうたう」で、2011年(今年)の直木賞を獲ったばかりです。

既に作家として良く知られていた人と言えましょう。

この度読みましたのは、569頁もヴォリュームのある集英社文庫版です。

元来新選組マニアである自分にとっては、中々面白かったです。

各章に近藤組長、土方、沖田、斎藤、原田、芹沢鴨など十数人の名前を付して、
各個人の性格、内面の思想など、個別に詳しく奥深く調べて書き挙げています。

勿論多くの脚色もあろうかと思いますが、
今迄にこれ程個人別に探求したものは無かったように思います。

それだけに新撰組の内部が手に取る様に判ると共に、
組織としての活動、背景の時代の流れなども充分俯瞰しており、
歴史的な読物として傑作の部類に入るでしょう。


後半の戊辰戦争の内容などは他の読物等に詳しく出ていますから、
これは簡単に流しておりますが、それはそれで良いと思いました。

浅田次郎著の「壬生義士伝」の主人公たる監察役吉村貫一郎には、
全く触れていないのが気になりましたが・・・・。

浅田次郎著「一刀斎夢録」を読んで

2011年03月02日 | 本の情報
新撰組3番隊長、斎藤一(はじめ)の自叙伝的時代小説。

時は大正の初め、明治天皇崩御直後の大喪の時期。

当時日本一の剣士となった近衛師団の梶原中尉が、ふとした縁で、
隠居の斎藤一に会いに行き、
七晩に亘って酒を飲みながら、詳細なその生き様を聞くのであります。

鳥羽伏見の戊辰戦争の発端から、次々と転戦して西南戦争に至るまで、
居合抜きの第一人者、斎藤が如何にして剣鬼として生き永ら得たのか、
赤裸々に語る物語であります。


著者の綿密な時代考証と、細部に亘って述べられる情景描写に、
正にその時代に遭遇して生きている様なと言いましょうか、

眼を瞑(つぶ)ると当時の江戸、明治の時代の光景が、
眼前に彷彿(ほうふつ)と浮かび上がるような気持ちになりました。

この斎藤の立ち振る舞いこそ本当の侍(サムライ)なのですね。
我儘で誰とも妥協せず、一匹狼の様で、正(まさ)しく剣鬼、そのものと言えましょう。

<fot color="purple">物語の中心には、新撰組に拾われた、
乞食の様な少年(土方の遺影を郷土に伝えた)に、
自分の剣の道の奥義を教え、自分はその剣に掛って死にたいと欲したにも拘わらず、


結末は西南戦争で正に慟哭の極みとなります。


本の自炊??

2011年02月15日 | 本の情報
「本の自炊」なる言葉を聞いた事がありますか? そしてその意味は?

14日朝7:50頃、フジテレビで一寸解説していましたので、
ご覧になった方も多いと思います。もうご存じの方も多いかも。

読書好きで何時も本を離さず、車中でもよく読んでいるのですが、
単行本の大きいものになりますと、厚さが4,5cmにもなり、持ち運びに不便です。

鞄の中に入れて常時携行するには結構重いですし・・・・。
其処でiPad等の高機能携行端末による電子書籍の利用です。

私も電子書籍を読みたいと思って端末を買ったのですが、
読みたい様な本が電子書籍に無いのです。未だ量的に不十分です。


其処で自分で従来の紙の本を電子書籍に作り替える事にします。
本を分解して1ぺージ毎にバラバラにして、スキャナーに読み込ませる。

それをパソコンやiPad等に電子データとして導入する。
つまり「自分で本を電子書籍化する」、これが「本の自炊」です。


自分で読む本を自炊するのなら、法的に問題ないと思うのですが、
代行業など出て来て、商売にするとこれは著作権などに引っ掛かると思われます。

私も自分で読む為の「自炊」を経験して見たいと思っているのですが・・・・。
果して巧く行くかどうか?

上田秀人著「天主信長」を読んで

2011年02月06日 | 本の情報
これはチョット驚きましたナ。
史実の「本能寺の変」を題材にとって、
逆説的に書かれたミステリー風味の完全なエンターテイメント時代小説です。


ミステリーですから、ネタ明かしはよくないと思うのですが、

少しだけ触れますと・・・・、
本能寺の変自体が信長の大謀略なのです。
自分は一旦殺された事にして、後から蘇るキリストの上手を行く・・・・。

光秀と秀吉とに偽装の戦いをさせて、その中に復活するのです。

この謀略に更に重ねて最後に予想外のどんでん返しがあるのですが、
それは伏せて置きましょう。


まあ、その大胆な着想に驚くばかり。
正に本の表紙の帯にある、「驚愕の信長劇場」の通りなのです。
中々面白いですね。

東野圭吾作家の作品に嵌っています

2011年02月02日 | 本の情報
最近、東野圭吾著作の本に嵌って立続けに読んで居ます。

良くご存じの通り、この人はSF、ミステリー作家として今一番の人気作家です。

然し、その作品の中には、単なるミステリーでは無く、
人間社会の機微や人間の業(ごう)、絆といったものに深い洞察を織り込んでいます。


ごく最近、読み終えたのは、文庫版になっている「手紙」です。
これはもう大分前、2003年に単行本となり、映画にもなりました。

少し古いですが、これ読み終えて本当に傑作だなナと痛感しました。
家族とはなんぞや、人間の絆とは・・・・、とことん追求しています。

終章に近く、感動で涙が出る位でした。

弟を大学に進める為に、図らずも殺人強盗をしてしまい、
15年の刑に服している兄から月1回必ず届く手紙。

弟本人は身を立てようとしたバンドへの加入、希望した結婚、
それに就職した後と、必ず兄の経歴が判明して、全てが無になってしまう。

最後は妻と子供の為に、完全に絶縁してもう赤の他人になろうと決心しました。

其れが果して最善の方法なのか・・・・、深く考えさせられます。

映画はDVDになっているそうですから、出来れば観たいと思っています。


「妻に捧げた1778話」を読んで

2011年01月26日 | 本の情報
眉村卓著の新書版です。
よくご存じの通りSMAPの草剛さんの主演で映画化され好評でした。


これはその原作です。
著者の眉村さんの奥さんが癌に罹り、その闘病中に毎日欠かさず
ショートショートの小説(原稿用紙3枚を超える程度)を作って、
病床の奥さんに読んで貰ったと言う夫婦純愛の物語です。


主治医から1年余りの余命と宣言されたのですが、結局5年弱の寿命となりました。
最後の方はご主人が読み、
最終は昏睡状態になって聴いているのかどうかも判らなかった様です。

然し物凄く精力的によく書けたものですナ。そのファイトに頭が下がります。
私など、俳句を1日1句作るだけでも四苦八苦なのに、5年も毎日続けるとは・・・・!


「話」は抜粋して載せられていますが、ネタは日々の行動の中から選ばれています。
元来SF作家ですから、SFっぽい味が出ていました。

先の短い病人相手ですから、内容を決めるのに随分と気を使ったそうです。
過激なものはありません。 

それだけに健常者が読むとどうも病院の食事を食べている様な薄味の感じでした。
やむを得ない事なのでしょう。書いている時から発刊しようとの意思もあった様です。


映画は結局観に行きませんでした。三つ星の評価でしたね。


白夜行の映画化に先んじて

2011年01月19日 | 本の情報
東野圭吾著の「白夜行」の映画化が1月29日に封切りされます。
映画を観る前に、原作を知るべく集英社の文庫版を読みました。


簡単に説明しますと、

「街の質屋の主人が廃墟ビルの中で他殺体で発見される。

 容疑者と思われる多数の関係者を調べたが、
 決定的なものが無くて遂に迷宮入りとなる。

 有力な容疑者であった愛人らしき女性がガス中毒で死ぬ。(自殺か事故か不明)

 被疑者には倅、容疑者には娘が居り、この二人を中心にストーリーが進む。

 二人は別々に渦を巻きながら、その渦の中に、
 多数の奇怪な(行方不明者やら、殺人やら)事件を巻き込みながら謎の成長を遂げて行く。

 最初の事件から関わっていた一人の老刑事が、
 迷宮入りの後も、19年もの間、執念を燃やしてこの二人を探すのだが・・・・、

 その行動、推理に拠り、二つの渦は集束と言うか収斂と言うか、
 次第に近付いて、やがては同心円の様に一つになって行く。」

そして意外な結末。 社会の暗部が抉り出され、人間の心情がよく描かれています。

沢山の事件と多くの登場人物を、全て映画に取り込むのは不可能なので、
どの様に演出されるのか、映画を見るのがとても楽しみになりました。


本を読む人が減って来たのかナ

2011年01月11日 | 本の情報
出版書の売行きが低下しているとの事。
ピークでの販売高が2.5兆円あったものが、昨年はどうやら6000億も減少して、
1.8兆円強になっているらしい。


特に雑誌の落込みが酷い様です。創刊より廃刊が増えてきている。
その影響か、確かに町の本屋さん(個人商店)は次第に数が減って来ています。

新聞などのマスコミで広告されている本を探しに行っても、
街中の個人の本屋さんでは中々見付からない。

つまり読書したい人のニーズに応えていないと言う訳。
これでは売れないのも当然でしょう。

一方、チェーン店にもなっている、ターミナルにある、
大型のブック・ショップには本が山に様に積んであります。

検索ソフトも進歩して、その端末で指示通りに本を探しますと、
何処の棚にあるのか一目瞭然。 
又、沢山並んでいる本を物色するのも楽しいものです。


確かに今動画的漫画や、インターネットが盛んになって、
活字離れしている現象が出ているのも頷けます。

此処へ来て、電子書籍が大きな流れを作り出しそう。

出版業界も対処が非常に難しくなって来ていますが、
やはり重厚な文芸物は今迄通り紙の本で読みたいですね。


斎藤智裕著「KAGEROU」を読んで

2011年01月09日 | 本の情報
久し振りに読み甲斐のある小説に出合いました。

ポプラ社小説大賞受賞作(2010年の第5回)と帯に書かれていますが、
その栄誉に違わぬ作品であったと思います。


比較的短い小説なので、遅読の自分でも僅か2日間で読み切りました。

40才になる独身の、人生に絶望して「KAGEROU」の様な男が、
廃墟のデパート屋上から自殺しようとして、フェンスを登り、身を投げる直前に、
誰かに足を捕まえられる。黒服を来た慇懃無礼な得体の知れない男に。

その男の会社は、臓器売買を業務とし、自殺寸前の人間をドナーとして契約し、
高額の臓器買取を行い、レシピエントを探して売り付ける闇の会社であった。

臓器を買い取った後は、世界最高の医療技術を持って、
必ずそのドナーを完全に自殺せしめる?様に契約する。

この主人公も結局この契約をして、臓器を売り渡す訳ですが・・・・。
この後はSFっぽい展開なので、ネタばらしは致しません。


予想外の展開になり、心臓のレシピエントとなった20才の少女との間に、
愛が芽生えて・・・・ホロリとさせられます。

「自分と他人」の関係、「魂と肉体」との関係、それに「命」とは何ぞや、等々。
現在、巷間で話題の臓器移植を巡って、
色々と考えさせさせられる問題を含んで居ります。


新百合丘の有隣堂では、ベストテン2位に置かれていました。

これはこの人の初めての著書で、同人は俳優「水嶋ヒロ」として、
映画、ドラマ、CM等に活躍中だそうです(1984年生れ)

(更に言うと、桐蔭高校時代サッカー選手として、全国大会に出場、慶応大卒、
 スイスに長年滞在して英語は極めて堪能、180cmの超イケメン。現在俳優は休業中。)