明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


午前中、オークションで落札した明治時代の浮世絵、豊原國周作の九代目團十郎が届いた、浮世絵は三枚続きになっていることが多いが、額装すると横に大きい。とりあえず菊五郎や左團次はいいから、主役の團十郎一枚で良い。鶴澤寛也さんの稽古場で見た、坂崎重盛さんから贈られたという額に入った九代目を見て、これは収まりが良いと思っていたのである。  明治期の浮世絵は、浮き出るようなドギツイ赤に特徴があるが、この赤、青、緑などの色使いは、昭和三十年代までの駄菓子屋には、メンコその他氾濫しており、馴染み深い色調であり、人口甘味料チクロの味が口中に甦るようである。駄菓子はチクロに限る。この件に関しては團菊爺が如くの私である。入手したのは『児雷也』であるが、緻密さには少々欠けるが、刷りたてのような瑞々しさである。
午後、某所警察より、十年程前の一家殺人事件について聞きたいと電話。被害者が人形劇、アニメーションに携わった経歴があり、被害者宅に、私も取り上げられた太陽の『人形愛』特集 平凡社(1999)があったそうである。それで私のところまで来るのだから、よほど難航しているのであろう。掲載された作家は全員回ったそうである。遺留品が多い割りに、一向に進展を見ない事件であるが、被害者とはお会いしたこともなく、役にたてない旨伝えたが、とにかくお会いして、ということなので、近所の喫茶店で聞かれるまま答える。 殺人事件に対する時効がなくなった今、地道に事件を追っている苦労が伺われ、一刻も早く解決して欲しいと思わずにはいられない。この太陽『人形愛』特集号が、実はあまり売れなかった、と警察から聞くことになるとは思わなかったが、いつも打ち合わせなどで使っている店のせいか、雑誌のインタビューと大差ない部分もあった。しかし一応、と指紋をジッと確認されたあたりは、なるほど、電話では無理である。

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