弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

ギャンブルの必勝法と先物会社の「客殺し」

2010年12月06日 | ⑨投資被害
私は,大学時代から司法試験受験時代,競馬と麻雀にはまり,事務員時代・弁護士時代は先物取引被害等を客観的に見たり,また,福本伸行氏のギャンブルマンガ(「カイジ」「アカギ」「銀と金」等を愛読していたことから,人よりギャンブルの必勝法がわかっていると自負しています。
ただ,自分ではどれもできないものばかりですが(笑)。あと,ギャンブルは合法なもの以外は犯罪になりますので,ご注意願います。

ギャンブルの必勝法は,正攻法でいうと,2通りあります。

一つは,①自分が親になって,掛け金の一定額を親の取り分とし,何らのリスクは負わず,それ以外のお金を他人間のお金の取り合いにするという方法です。

例えば,宝くじの国や地方公共団体,競馬のJRAなどです(これは普通の人がやると,犯罪です。)。
証券会社や先物会社がやるように,手数料だけを取って利益を出すというのも実質的にはこの部類に入ります。
これは貸卓代を取る雀荘も同じといえるでしょう。

もう一つは,②無限の資金力をもって倍々プッシュを繰り返すことです。

簡単に言うと,半町バクチで100万円かけ,負けたら200万円をかける。さらに負けたら400万円,さらに負けたら,800万円・・・という感じに勝つまで繰り返す方法です。資金が無限にあれば絶対に勝てます。

しかし,実際には,無限の資金等あるはずもありません。多少の資金があってもいうかは資金が尽きるまで連敗してしまう可能性は低くはありません。
例えば10連敗する可能性は2分1の10乗=1024分の1しかありませんが,100回すると約10%,500回すると約39%,1000回すると約62%と,回数を増やうほど,どんどん確率は高くなります(1024分の1023を1000乗したものを100%から引いたという計算になります。)。
また,1024分の1といっても,運が悪ければ,それが最初にくる可能性だってあるわけです。宝くじの1等に当たる可能性なんかより全然高いのです。


正攻法以外の必勝法も2通りあります。

一つは,③イカサマです(犯罪なので絶対にやらないでください)。
イカサマの方法はギャンブルによっていろいろありますが,金融商品取引では,相場操縦やインサイダー取引ガこれに当たるでしょう。

そして,もう一つは,④勝負相手に必敗法をさせることです。

ギャンブルの必敗法は,勝ったら,元本も利益も全部次につぎ込むということ(相場の用語で「利乗せ満玉」という)を延々と繰り返すことです。
例えば,半町ばくちで,100万円をかけて勝ったら,次は元金の100万円と利益の100万円の200万円全額を次の勝負につぎ込み,さらに勝ったら400万円,さらに勝ったら800万円・・・と延々と繰り返します(逆倍々プッシュ)。
要するに,負けるまで全部かけ続けるわけです。

これを勝負相手にさせることなどできるわけないと思われるかもしれませんが,実際には,先物取引などでは,行われることが少なくありません。

それは,俗にいう「客殺し」商法です。

先物業者は,お客さんに取引をさせて,高い手数料を取るので,基本的にはリスクなく,稼ぐことができます。
しかし,先物会社の中には,手数料だけでは飽き足りない,客の取引損全部も自分らの利益にしたいと考える輩がいます。

具体的な方法は次のとおりです。
)客がする取引と逆の取引を業者がする(先物は空売りができ,売りから入ることも買いから入ることもできます。客が空売りしたら,業者は同じものを買い,客が買ったら,業者は同じものを空売りします。これを「向かい玉」といいます。)
)客を思い通りに動かし,「利乗せ満玉」を繰り返させる
)客が嫌がっても負けるまで取引をやめさせない(仕切り拒否・手仕舞い拒否)。

)は,難しそうですが,客が素人なら,実際はそんなに難しくありません。
これは客が素人で何もわからず,先物業者をプロでその判断を信用させ,自分のために言ってくれているものだと信用させることが必要ですが,実際には,1回勝たしてもらえば,その判断は信用できるということになり,自分のために言ってくれているということになるのです。

客殺しをする先物業者は,早くより多くお金を取るために,客が自分の言いなりになっていることをいいことに,頻繁に売買を繰り返させ,手数料を抜いたり,客が儲けたら利乗せ満玉をさせ,客が損したら損を取り返すことをネタに追加資金を出させます。
それは,客の資金が底を尽きるまで(もっと悪い業者は借金までさせて)続きます。
その結果,客は有り金全部を短期間に奪われます。

このように客殺しをする先物業者は,前述の①と④の方法を駆使して,客に必勝し,荒稼ぎをするわけです。

こういうことをする輩は早く撲滅し,きちんとした業者だけで公正な市場を作ることが,先進国としては急務だといえるでしょう。

国内公設の先物取引の業者も,だいぶ減り,海外商品先物取引業者,海外先物オプション取引業者,ロコロンドンまがい取引業者,CFDまがい取引業者などは,来年1月の商品取引所法の改正法「商品先物取引法」で,許可・登録が必要になります。
これで,かつてのFXのように,上記方法などをする悪徳業者がほとんど滅びてくれることを,心から祈ります。

これができれば,あとは未公開株詐欺を滅ぼすとだいぶ金融商品被害が減ります。
ちなみに,未公開株詐欺を滅ぼすには,まずは,これらの被害の実態を随時マスコミ等で広報することです。
次に,非上場の株式・社債・その他金融取引・利殖取引の訪問販売・電話販売・通信販売などの事業所外の取引を一律禁止することとです(一定以上の年齢の者,年金生活者,労働による対価を得ていない者だけでもこれらを禁止するだけでも大きいです。)。

金融取引被害についても,マスコミも勇気を持って証言してくれる人がいれば,取材をしてくれやすくなります。
勇気を持って証言してくれる方がいらっしゃればうれしいです。名前や顔や声を隠してでもいいですが,なるべく隠さない方が取材してくれる可能性は上がります。
未公開株,先物,その他に限らず,そのような方がいらっしゃれば,私のところに言ってきていただければ,知り合いのマスコミの人に売り込んで行きたいと思います。
特に,今は,未公開株,未公開社債,CFD,オプション,仕組み債などが取り上げられやすいと思います。


通貨デリバティブで経営難、金融庁が実態調査へ

2010年12月06日 | ⑨投資被害
題のとおりのニュースが,読売新聞のインターネットニュースで今年12月5日(日)15時22分に配信されました。

(以下,記事引用)

 金融庁が、メガバンクなどの主要行を対象に、「通貨デリバティブ」と呼ばれる金融商品の販売方法や取引先の損失状況などについて実態調査に乗り出すことが4日、明らかになった。

 急速な円高で、通貨デリバティブを購入した中小企業が多額の損失を被り、経営難に陥っている事例が出ているためだ。調査結果を分析し、銀行に適切な販売を促す考えだ。

 帝国データバンクによると、通貨デリバティブが原因で倒産した企業は2008年は3社だったが、今年は11月末時点で16社に上り、国会でも問題視する意見が出されている。

 金融庁は〈1〉銀行が取引先などに無理な販売をしていなかったか〈2〉損失のリスクを事前に説明していたのか――などの点を調べる。

(以上,引用終わり)

「デリバティブ」とはわかりにくいと思いますが,簡単にいうと金融派生商品のことで,先物,スワップ取引,オプション取引など,あと,これらを盛り込んだ仕組み債です。

通貨デリバティブとは,主に,FX(外国為替証拠金取引)や通貨オプションでしょうか。

一昔前はFXでの被害取引が多かったですが,法規制で悪質業者がほとんど滅び,彼らはロコロンドンまがい取引に移って行きました。
今はFXのネット取引が盛んで,自分から進んで取引を始め,外務員が介在していないので,基本的には自己責任ということになり,また,ロスカットルール(一定以上の損が出たら自動的に取引を仕切って終わらせてしまう。これにより元本以上の損がなかなか出にくくなる。)もあり,ほとんど被害報告がなくなりました。

逆に今は,通貨オプションという取引が問題となっているようです。
今大阪の先物・証券被害研究会の所属弁護士が,日興コーディアル証券を相手に訴訟をあっているようです。http://www016.upp.so-net.ne.jp/yama38/nikkoutuuka.html(記憶は定かではありませんし,どこの証券会社の事件か忘れましたが,京都でも似たような事件があると聞いたような気もします。)

上の大阪の事件は,確か,米ドルのプットオプションの売りを3枚,コールオプションの買いを1枚をセットで行う円建ての取引で,証券会社との相対取引(1対1の勝負)で,円安が一定以上進むと解約されるという条項(トリガー条項)がついていたと思います。

これだけ聞いても,わかる人はほとんどいらっしゃらないと思いますが,オプションを買うより多く売るので,いきなりプラスからスタートします(ただし,証券会社に証拠金として多額のお金を保証金として預けますが)。それで,一定以上円高が進まなければ,その利益がそのまま確定し,円安が進むと一定まではさらに利益が出る,円高がかなり進むまで損にならないというものです。

一見すると,超いい夢のような話のようですが,実は大きな落とし穴があるのです。
円安が進んでいっても一定以上になると証券会社に解約されてしまい,利益が限定して
いるのですが,逆に,円高が進んでいくと,顧客は利益の何倍・何十倍もの,甚大な損害を受ける可能性があるからです。

そもそも,この取引は証券会社との1対1の勝負の相対取引,営利企業である証券会社が自社を損させてまで,客に勧めるということは考えられません。
やはりそこには勝算があるからやっているのではないかという疑いがどうしても生じてしまいます。

オプションの売りは一般に勝率のよい取引と言われているようですが,1回の損でそれまでの利益を全部吹き飛ばしてしまう可能性のある危険な取引なのです(平成17年の最高裁判決でも,オプションの売りは素人には原則適合しない難解でリスクの高い取引とされました。)。

さらに,経済の専門家の中では,何年も前から円高傾向にあることは常識だと言われているようです。
それは,日本の金利が安く,諸外国の金利が高いことから,日本はデフレ傾向にあり貨幣価値があまり下がらず,外国はインフレ傾向にあり,貨幣価値が円より下がっていくことが原因だそうです。ただ,為替は他の要因でも動きますので,一概には言えませんが,これが円高に引っ張る力は無視できず,長期的にみると円高がかなり進む可能性は高いそうです。
このままの金利で行くと,そのうち70円台を切り,60円まで落ちると予測している人もいるそうです。(あくまで予測です。金利が変われば変わりますし,日銀が貨幣を発行しまくったり,日本や他の国で大きな戦争が行っても予測は変わってきます。)。

このような情報は証券会社は,シンクタンクなどで専門家に研究させて当然知っていますが(外務員まで知っているかは別ですが),顧客は知りません。
私自身も,今までの為替のチャート表から,1米ドル360円からどんどん円高が進んでいる傾向にあることを忘れ,前に70円台に行ってからまた140円台まで上がって,長らく上がったり下がったりを繰り返していたことから,2年前くらいに「米ドルは強い。多少下がってもまた上がる。今は90円くらいだが,また100円以上になるだろう。FXで20~50倍くらいレバレッジで米ドルを買って,ひと儲けしよう。」と思ったくらいです。

私の場合は,当時自由に使える現金が少なかったこと,ネット取引の開始の手続が面倒だったこと,予想が一旦逆に行った時に,ロスカットされてしまい,これを取り戻すためには難平(ナンピン)というか,倍の資金が必要になることから(俗にいう「倍々プッシュ」),これを何回も繰り返す自信がなく,資金ショートの恐れがあることから,手が出せませんでした。

結果は,一旦円高が進み,その後,90円台後半までドルが持ち直してきたので,1,2回倍々プッシュにできれば大儲けできました。引き際を間違えると,その後の円高で大損をしていました。

ともかく,上記のニュースを見ると,FXは現状ロスカットルールにより,中小企業が倒産する可能性が低く(会社の全財産を1回の勝負につぎ込めば別ですが),銀行等の無理な販売や説明義務が問題となっている点で,プットオプションの売りやこれを盛り込んだ仕組み債が販売されていた可能性が大きいと思っています。

倒産まで行っていなくても,通貨オプション,仕組み債等の通貨デリバティブ取引で大きな損を出した方は,自己責任だとすぐ諦めず,私や私の所属している神戸先物・証券被害研究会,最寄りの先物被害研究会・証券問題研究会等にご相談ください。