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ソウル・キッチン

2021年11月19日 15時28分40秒 | 洋画2009年

 ☆ソウル・キッチン(2009年 ドイツ、フランス、イタリア 99分)

 原題 Soul Kitchen

 staff 監督/ファティ・アキン

     脚本/ファティ・アキン アダム・ボウスドウコス 製作/ファティ・アキン クラウス・メック

     音楽スーパーバイザー/クラウス・メック 撮影/ライナー・クラウスマン

 cast アダム・ボウスドウコス モーリッツ・ブライプトロイ ビロル・ユーネル ウド・キア

 

 ☆魂の食堂

 ハンブルクのヴィルヘルムスブルク郊外。

 そこに、この薄汚れた倉庫をちょっとだけ改造した食堂がある。

 ちょっとだけっていうのは、厨房とBARを造り付けただけってことだけど、これが、いい。この、いかにも町はずれにありそうな、いかにもマニアの集まりそうな食堂が、映画の舞台だ。ヨーロッパはこの頃、かつてニューヨークがそういわれたように、人種のるつぼになりつつある。いろんな国から移民がやってきて、なになに系なんとか国人てな感じで、生まれた国と育った国と働いている国とがみんな違っているのもざららしい。

 この映画もそんな雰囲気だ。

 登場人物の国籍や人種だけでなく、設定されている状況もまるで違う。場末の食堂を営んでいる、どこまでもゆるく、けど心やさしい主人公の回りに、仮出所したばかりの兄貴、腕は超一流ながらナイフ投げが得意なシェフ、絵描きを目指しているウェイトレス、ミュージシャン希望の従業員、家賃を払わない居候の船大工などなど、るつぼ状に設定されている。

 そこへもって、兄貴が盗んできたDJセットに掛かる音楽も、統一性ゼロ。もしも、ぼくに音楽の素養があれば、もっと楽しめたんだろうけど、ともかく、ごっちゃ混ぜながら、それでいて単純な筋立てになっている。

 簡単にいってしまえば、お人好しの兄弟の営む食堂に、奇妙な雇い人たちが集まってはくるものの、失恋、追徴課税、保健所指導、ぎっくり腰、盗品使用など、非常事態がつぎからつぎへと襲いかかり、そのたびごとに挫折しかかるんだけど、なんとなく上手に乗り越え、なんとかすこしずつ繁盛し始めたのも束の間、かれらの人の好さを利用して土地を掠め取られちゃうんだけど、

「おれたちの魂(食堂)をとりもどすんだ」

 と奮闘していく物語ってことになるんだけど、これが、なにからなにまで現代のドイツの如くるつぼ化した状態のまま、過激に展開する。くわえて、作られる料理は実にうまそうで、さらに、ノリが好い。これって、簡単に撮れそうで、その実、センスがなかったら撮れない映画だとおもうんだよね。

 人間、いろんな挫折があるんだけど、そのたびごとに前向きに、でも、落ち込まずに開き直って愉しめば、仲間はきっと応援してくれるし、いつか成功するときが来るかもしれないよねっていう、そこはかとない優しさと過激さに包まれた、ゆる~い作品。

 おもしろかった。

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