六ページ
極月改書 第六ページ
解読
同月四日晴天四つ時ヨリ諸国大地震別而當所ハ
壱時計之間大震ニ而在中一統上エ之山又ハ寺抔へ
逃退候折から間茂なく津浪打来り誠以恐敷事ニ
御座候乍併格別之高浪ニ不有下地石垣壱者゛以
読み方
同月四日、晴天、四つ時より諸国大地震、別けて当所は
いっときばかりの間、大震(おおゆれ)にて、在中一統、うえの山又は寺などへ
逃げ退き候折りから、間もなく津浪打ち来たり、誠に以て恐ろしき事に
御座候。しかし乍ら、格別の高浪に有らず、下地石垣一ぱい
解説 「同月」・・・嘉永七年十一月。 「四つ時」・・・十時。 「別而」・・・別けて、わけて、とりわけ。 「當所ハ」・・・当所は。 「壱時計」・・・いっときばかり。一時(いっとき)はおよそ二時間。 「計」は「ばかり」と読みます。 「在中一統」・・・村中の者一同。 「上エ之山」・・・上・下の読み方によって、この様に送り仮名を付ける場合が有ります。「例 下モ は しも、上ミ は かみ、など。 「抔」・・・など。 「逃退」・・・この逃げるは、異体字で、外に しんにゅう です。にげ退き。逃げしりぞき。 「折から」・・・おりから。 「茂」・・・も。「津浪」・・・津波。 「誠以」・・・誠にもって。 「恐敷」・・・恐ろしき。「乍併」・・・しかし乍ら。 「壱者゜以」・・・「者」は「は」の変体仮名、「以」は「い」の変体仮名です。いっぱい。嘉永七年の地震は、各地に大被害をもたらし、その為に年が変わって前年十一月に遡って改元して、嘉永七年は安政元年となりました。世に言う安政の地震です。本書は古座浦の記録ですが、田並浦・有田浦にもこの時の記録は残っています。