感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

救急部で成人の潜在性黄色ブドウ球菌菌血症:稀だが重要

2012-09-15 | 感染症
当院でもICDによる血液培養陽性シグナル例(中間報告から)へのチェック、必要時介入を始めているが、外来で血倍採取後帰宅され、その後陽性とわかり慌てて連絡するケースも見られる。 この台湾からの報告は、救急部から帰宅して最適治療が遅れた場合、他の菌に比べ、黄色ブドウ球菌は悪い予後をもっているかもしれないとしている。 黄色ブドウ球菌菌血症は深在性膿瘍化や血管内感染を進展させ他の菌よりユニークな特徴を持つからだろう。 さらに同じ黄色ブドウ球菌どうしでERから直接入院した群と、いったん帰宅して潜在菌血症とわかった群の比較では有意差が出なかったというのもおもしろい。救急医が疾患重症度をみて帰すことから潜在菌血症群はむしろ敗血症の初期段階だったのではと推論している。


まとめ

・血液培養陽性の結果が出る前に、救急部から帰宅した潜在性の黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者の疫学とアウトカムを調査
・10年間で潜在性菌血症例759例、うち黄色ブドウ球菌は65例(62例が登録し症例群と定義)、コントロールⅠ群は潜在でなく直接ERから入院できた黄色ブドウ球菌菌血症997例、コントロールⅡ群は黄色ブドウ球菌以外の菌の潜在性菌血症694例、とした。(two 1:2症例対照比較)
・症例群はコントロールII群と比較して、入院、臓器不全、敗血症性ショック、ICU入院、30日死亡率の有意に高い率を持っていた。
・年齢、心内膜炎、黄色ブドウ球菌感染症は、成人オカルト菌血症患者の死亡の独立した予測因子であった

・コントロールⅠ群との比較では有意差は出なかった。これは筆者の予想と異なるものであった。この結果の説明として、潜在性黄色ブドウ球菌菌血症患者が、救急部受診時はまだ敗血症の初期段階にあった、もしくはこれらの患者は外来や入院関係なくそもそも良好な臨床経過を内在していた。
・以前の3つの研究では、成人の潜在性菌血症で、0%~3.7%の範囲の低い死亡率を報告しているが、我々の黄色ブドウ球菌血流感染患者の死亡率は比較すると高かった(30日間の死亡率、9.7%)
・本研究では、成人患者における潜在性菌血症は過去の小児での研究よりより多様な細菌が関与。大腸菌、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌、ビリダンス連鎖球菌は潜在性菌血症例の全分離株の約70%を占めていた
・ 臨床の現場では、救急医は一般的に患者を入院させるか帰宅させるかの判断時に、菌血症の可能性を検討するより、臨床診断と重症度指数の様々な組み合わせを使用しているだろう。死亡率の低い疾患で重症度も軽い場合、帰宅される傾向にある。
・第一線の臨床医は、特に明らか感染巣のない患者のため、敗血症患者の管理における黄色ブドウ球菌感染の可能性を認識すべき


参考文献:
Clin Infect Dis. 2012 Jun;54(11):1536-44. Epub 2012 Mar 19.

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