感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

クリプトコッカス症の診断

2013-10-19 | 感染症
前回につづいて、クリプトコッカス症の診断に関して、まとめ。
クリプトコッカス抗原検査はやはり感度・特異度は良いようだ。




・クリプトコッカス症の診断は、直接顕微鏡検査、培養にてC.neoformans or C.gattii分離、 種々体液上清中の莢膜抗原の証明、血清およびCSFを含むラテックス凝集または酵素免疫測定法による酵母莢膜の観察に基づく。
・診断に用いられる材料は、組織およびCSF、胸膜液、リンパ液、リンパ節からの試料、皮膚、肺、骨髄である

・30度にて、血液寒天培地やサブローデキストロース寒天培地上で培養した呼吸器検体は、最適な成長設定のもと、白色からクリーム色の粘液のコロニーが、通常は2~5日以内に形成される。
・喀痰を使うより侵襲的であるが気管支鏡、BAL液または開胸肺生検からの検体採取が高い収率を確立する可能性が高い。

・直接顕微鏡検査は、希釈された墨汁又は位相差顕微鏡を用いて行われる。 CSF沈渣での鏡検は非AIDS患者で30-50% 、AIDS、重度の免疫抑制患者の80%までの感度を有する。 偽陽性は、ミエリン滴、溶解細胞やリンパ球との混同によるもの。 重要なのは、同じ形態を保持した生育不能の酵母が、治療成功後数ヶ月間は観察することができること。

・AIDSや免疫不全者では肺クリプトコッカス症と診断された場合(一見、孤立した肺病変であっても)、CSF検査のための腰椎穿刺と血液検査(それぞれのクリプトコッカス抗原検査と培養)は、播種性クリプトコッカス症を除外するために実施すべきである。これは、免疫不全患者のケースの90%で発生します。
・気管支分泌におけるCネオフォルマンスの分離は決定的な診断テストとはみなされないので、肺クリプトコッカス症の診断は生検により確認されるべきである。
・クリプトコッカスは慢性肺疾患を持つ人々の気道にてcolonizedできるという証拠がある
・全く画像所見を持っていない患者では、痰からC.neoformans分離はcolonizationを反映しているかもしれない

・血液培養は、AIDS患者ではルーチンに得られるべき。なぜならこれはしばしば陽性であるから。

・リボソームRNAを検出するための分子生物学的なCryptococcus neoformans識別システムは、一部の国で利用可能
・クリプトコッカス特異的抗体の検索はクリプトコッカス症の診断に有用ではない。 (墨汁染色陰性例やラテックス偽陽性例での診断補助に使えるかも J Immunoassay Immunochem. 2012;33(2):140-8.)

・臨床検査は、多くの場合、増加した赤血球沈降速度、貧血、白血球増加、および多クローン性高γグロブリン血症を示す。


クリプトコッカス抗原検査
・血清中クリプトコッカス莢膜抗原検査は、ウサギ抗莢膜抗体でコーティングされたラテックス粒子凝集による。
・ラテックス粒子凝集による抗原血またはCSF抗原値測定は、90%を超える感度と、高い特異性を有する。
・クリプトコッカス抗原のラテックス凝集試験の感度および特異性はそれぞれ、93-100%、93-98%の範囲、である
・播種性疾患の一部として肺クリプトコッカス症の患者では、血清のクリプト抗原は、高感度かつ特異的
・孤立性肺疾患患者、小さな肺病変と低真菌負荷量例では陰性かもしれない
・孤立性肺クリプトコッカス症のHIV陰性患者では、血清クリプト抗原の感度は25-56%程度

・血清でのリウマチ因子の存在は、偽陽性反応を引き起こすことがある
・持続したムコール、ペニシリウム、ヒストプラズマ症、トリコスポロン感染にて非常に低い率だが疑陽性がある。
・抗原血価は真菌負荷に比例するので、高力価は、重症度のサイン
・治療の成功で、血清抗原値は通常は落ちるが、死菌の多数の莢膜の持続のためにこれは非常にゆっくりと生じる。
・肺クリプトコッカス症を有する固形臓器移植レシピエントにおける血清クリプトコッカス抗原検査陽性は、肺外病変やより重症の肺疾患を反映する

・痰およびBAL液のクリプトコッカス抗原検査の評価は一貫していない、ルーチンでそれらの標本では使用されない。

・ごく最近、クリプト抗原の検出のためのlateral flow immunoassay(LFA)を開発し、評価された。 血液培養陽性の17人の患者に適用した場合の感度は100%であった。 この検査のシンプルさと速さは、特に資源が限られた地域で魅力的。


鑑別
・C.neoformans 髄膜脳炎は、結核によって引き起こされるものと非常に類似
・Cryptococcomaはtuberculomaと神経膠腫と混同されることがある
・慢性肺クリプトコッカス症は、臨床的および放射線学的に肺腫瘍を模倣する
・播種型は、CD4+細胞カウントが250個/mL以下を持つAIDS患者における全身性結核に似ている
・皮膚や粘膜病変の鑑別には、ヘルペス、ヒストプラズマ症、結核、サイトメガロウイルス感染、および第二または第三期梅毒がある



文献
Clin Dermatol. 2012 Nov-Dec;30(6):599-609.
Respirology. 2012 Aug;17(6):913-26.
Semin Respir Crit Care Med. 2011 Dec;32(6):727-34.
J Bras Pneumol. 2009 Nov;35(11):1136-44.

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