大変稀ではありますが当科では時折小児蟯虫例の診断に付随して、その家族の検査と治療と指導を依頼されることがあります。比較的熱帯地域より温帯地域に多い感染ということでなじみのある寄生虫感染症の一つですが、近年はその症例数も減ってきており、小学校での検診も廃止されたとのニュースは記憶に新しいです。当院は検査部でもメーカーからのセロテープ検査の提供が中止となって検査キットがなく、使える抗寄生虫薬もコンバントリンDSしか置いていないなどなかなか制約があります。諸文献やCDCのホームページなどを参考に 蟯虫の概要、一般向けの注意点、臨床的なまとめ、を行いました。
蟯虫 – 概要
・病原体 Enterobius vermicularis
・pinworm や enterobiasisとも呼ばれる
・小さくて薄い白い回虫によって引き起こされる、 雌8〜13mm、雄2〜5mm
・感染はすべての人々に影響を及ぼし得るが、最も一般的には子供、施設内の人、およびこの感染症の家族間で起こる
・感染は、学齢期の子供で最も頻繁に起こり、虫卵は小児間に容易に広がる
・有病率は5歳から10歳の間で最も高く、2歳未満の子供では珍しい
・施設内、家族内での有病率は50%に達することもある
・ヒトは、この寄生虫を移すことができる唯一の種であり、犬や猫のような家庭のペットは、ヒトの蟯虫に感染することはない
・熱帯諸国よりも温帯でより一般的
・米国で最も一般的な蠕虫感染症(推定4,000万人が感染)
・虫卵は感染者の肛門部にあり、汚染された手などを介して、玩具、寝具、衣類、便座などを汚染する、それらより汚染された手からの経口摂取にて感染する 虫卵はとても小さいので卵は空気中に浮遊し、呼吸中に摂取しうる
・感染卵を摂取すると、上部小腸で孵化し、成虫雌は結腸に移行し、主に盲腸に生息し、宿主の多くが眠っている夜間に肛門周囲に卵を産む。
・雌は、肛門周囲の皮膚の襞に数千~15,000個もの卵を産む。
・肛門領域での産卵はしばしば肛門部のかゆみを引き起こす。
・感染卵の摂取から成虫の産卵までの時間間隔は約1ヶ月で、成虫の寿命は約2ヶ月。
・卵は産卵時には感染性ではないが、体温で6時間以内に感染性になる。卵は数日間、特に湿潤条件下で感染性を維持する。
・虫体は、感染者の入眠から約2〜3時間後、肛門の近くの皮膚や下着、パジャマ、またはシーツに見られることがある
・感染者は、肛門周囲皮膚に卵を産む雌の虫がいる限り、他の人に(自身への再感染も含めて)感染を伝播ことができる
⇒
次回、 蟯虫-一般向け
蟯虫 - 臨床家向け