感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

関節リウマチ薬と授乳

2017-03-02 | リウマチ

以前このブログで関節リウマチと妊娠として主に関節リウマチの薬と妊娠についてまとめました。

若い女性もかかる疾患ですので、リウマチ治療を続けながら無事出産され育児をされることもあります。たいていはすぐに断乳され人工ミルクで育てながらMTX内服等を再開することも多いのですが、最近、授乳を続けながらRA治療も続けたいとの希望がありました。現在はステロイドのみですが、どのようにしていけばいいのでしょうか? リウマチ薬と授乳についてまとめました。

 

まとめ

 

・授乳中の女性の薬物治療(一般論として)

   授乳中の女性に薬剤を処方する前に、以下のことを考慮する必要があります。

  1.薬物療法は本当に必要ですか? 薬が必要な場合は、小児科医と母親の担当医の相談は、どのような選択肢を選択するかを決定する上で最も役立ちます。

  2.最も安全な薬剤を選択する必要があります、例えば 鎮痛のためにアスピリンではなくアセトアミノフェンなどを。

  3.薬が乳児に危険をもたらす可能性がある場合は、授乳中の乳児の血中濃度を測定することを考慮する必要があります。

  4.授乳児への薬物暴露は、授乳直後に母親に服薬をさせる、  又は幼児が長い睡眠期間を有することになる直前に、によって最小化することができる。

[Pediatrics. 2001 Sep;108(3):776-89.]

 

出産後とRA

・多くの女性が出産3ヶ月以内にRAが再燃する、母乳中に分泌される薬剤の新生児への曝露と、副作用の可能性を考慮する必要がある。

・出産後のRA疾患の発症リスクの増加は、授乳に関連する可能性がある。

・1件の研究では、母乳育児が最初の妊娠後の最初の1年以内にRAの発症リスクを高めていることが判明しました。これはおそらくプロラクチン濃度の上昇による。 [Arthritis Rheum. 1994 Jun;37(6):808-13.]

 

 各薬剤と授乳

 

・ほとんどの消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、ヒトの母乳中に非常に少量で排泄される。

・アメリカ小児科学会(AAP)は、 ジクロフェナク、フルフェナム酸、イブプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ナプロキセン、ピロキシカムおよびトルメチンは母乳育児に安全であるとみなしている。[Pediatrics. 2001 Sep;108(3):776-89.]

・アスピリンは、100 mg /日を超える用量で使用すべきではない

・服薬直前の授乳は、幼児の曝露を最小限に抑えるのにも役立つ。

 

・プレドニゾロンを摂取している授乳中の女性では、 母乳中/血清濃度は母体中の血清濃度が高いほど増加したが、  幼児による摂取は依然として投与量の<0.1%であった、母親摂取の80mg/日あたりになっても。[ J Pediatr 1985 Jun; 106 (6): 1008-11]  その乳児の内因性コルチゾールレベルの<10%に相当すると考えられている。

・服用後4時間以上経ってから授乳を行った場合、乳児の暴露は最小限に抑えられた。 よって服用直前か服用後4時間以上経ってからの授乳が勧められる。

 

・スルファサラジンおよびスルファピリジンは、母乳中に母体の投与量の5.9%が分泌される。 [ Acta Paediatr Scand 1987 Jan; 76 (1): 137-42.]

・スルファサラジンおよびその代謝物は、理論的には新生児でビリルビンを置換し黄疸を生じる懸念があるがスルファサラジンに暴露された乳児におけて核黄疸kernicterusは報告されていない。

・スルファサラジンを服用している間の母乳育児は、健康な満期の新生児に重大なリスクをもたらさないかもしれないが、新生児高ビリルビン血症またはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損児では、授乳を介したスルホンアミドの暴露は避けるべき。

・AAPは、慎重に使用される場合、スルファサラジンは授乳に安全であると考えている。

 

・アザチオプリンを投与された10人の母親から集めた31の母乳のサンプル検査では同じ女性の2サンプルでの低濃度検出を除いて活性代謝物6-メルカプトプリンは検出されなかった。 また新生児血液中に検出可能なメルカプトプリンまたはチオグアニンヌクレオチドはなく、新生児の免疫抑制の臨床徴候もなかった。  [BJOG 2007 Apr; 114 (4): 498-501.]

・伝統的に、授乳はAZA治療では禁忌であると考えられてきたが、最近のいくつかの研究では母乳中の6-MPレベルは低くAZAによる治療中の母乳授乳は安全と思われている。 [ Aliment Pharmacol Ther.2008;28:1209–13.]

 

・メトトレキセートは母乳中に低濃度で母乳と血漿の0.08の比で排泄され、新生児組織に潜在的に蓄積する可能性がある。 [Am J Obstet Gynecol 1972 Apr 1; 112 (7): 978-80]

・AAPは、免疫抑制、好中球減少症、発癌および成長への悪影響を含む乳児のいくつかの潜在的な問題を考慮して、授乳中にメトトレキサートを使用することを推奨していない。

 

・母乳中のレフルノミドに関する人からのデータは入手できない[82]。そのため未知のリスクがあるため授乳は勧められない。

 

・TNF-α阻害剤は妊娠中および授乳中の人での安全性に関するデータが限られているため、授乳中は避けるべきと思われる

・アバタセプトは授乳中の動物からミルク中で検出可能である。

・ヒト母乳中のアバタセプトの排泄についてのデータはない。 したがってアバタセプト療法の間は授乳は推奨されない。 [Joint Bone Spine 2009 May; 76 Suppl. 1: S3-55.]

・ヒト母乳中のトシリズマブ排泄の可能性に関するデータは入手できず、動物データも存在しない。 したがって、トシリズマブは授乳の際には推奨されない。

 

 

参考文献

Drugs. 2011 Oct 22;71(15):1973-87.

Rheumatology (Oxford). 2011 Nov;50(11):1955-68.

 

 


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