感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

Maxwell Finland講演:抗菌薬使用と耐性菌時代

2012-11-28 | 感染症
前回触れました、抗菌薬耐性を減らすための方法に関するMaxwell Finland講演についてです。 後半のWhat Went Wrong? 以降の論述はこれまでの感染症と抗菌薬の歴史を述べているが、なぜ抗菌薬乱用と耐性菌の時代へ繋がったかに関して意見されており圧巻でした。 また長らく(CDCのホームページも含め)、抗菌薬の長期間使用は耐性の原因となるよりむしろ解決策になると考えられてきたことで、 . . . 本文を読む

入院患者における抗菌薬使用期間削減の戦略

2012-11-26 | 感染症
前回の続き。 この論文によると、市中肺炎は3日、VAPは7日、腎盂腎炎は5日、複雑性腹腔内感染は5日程度、が場合により許容されるのかもしれない。これらの日数は現在の臨床実施状況と大いに異なると思う。もう少しエビデンスがそろえば各主要ガイドラインが変更されるかも知れない。 Clin Infect Dis. 2011 May;52(10):1232-40. Strategies for reduct . . . 本文を読む

細菌感染症の抗菌薬治療期間の考察

2012-11-22 | 感染症
前回の続き。耐性菌の増加を抑える抗菌薬の適正使用の一つとして、なるべく抗菌薬治療期間を短縮化させるのが必要。しかし漠然と“重症だから2週間”などと現場では判断される印象がある。抗菌スチュワードシッププログラムでもICT介入の一つとして抗菌薬使用期間の最適化が挙げられ、各病型ごとの治療期間のおさらいをしておく必要がある。あまりに投与期間が短いと、臨床的アウトカム(死亡、再燃など)に影響してくる懸念が . . . 本文を読む

ICUにおける抗菌薬耐性菌抑制の戦略

2012-11-20 | 感染症
現在、抗菌薬適正使用の講義のための資料を調べているところ。やや古いが耐性菌発生をなるべく抑制するための方策のレビューがあり、まとめた。 ここで記述された方策はCDC・耐性菌防止のための12のステッププログラムに準拠している。 CDC・耐性菌防止のための12のステップ: 1 ワクチン接種 , 2 不要なカテーテル類を抜去する , 3 治療の目的菌を絞り込む , 4 感染症専門医に相談する , 5 抗 . . . 本文を読む

市中病院での抗菌薬スチュワードシッププログラムのエビデンス

2012-11-16 | 感染症
前回の続き。抗菌薬適正使用と耐性菌抑制を目指した、抗菌薬スチュワードシッププログラム。これまでの文献とエビデンスをまとめたもの。 ASP導入により抗菌薬使用やコストが減ることは当たり前として、臨床予後や耐性菌抑制にどこまで関与するのか? カナダのCD腸炎流行に対する 感染制御対策vs ASP の効果の違いは面白かったです。 まとめ ・抗菌薬選択と投与方法の制御と変更により、抗菌スチュワー . . . 本文を読む

抗菌薬スチュワードシップ プログラム

2012-11-14 | 感染症
抗菌薬スチュワードシップ プログラムとは、細菌情報に合わせた抗菌薬選択、投与量と投与期間の最適化、などの抗菌薬適正使用のため感染症医師や感染症薬剤師などがチームを組んで臨床介入に取り組むシステム。米国でもまだ決め手となるガイドラインはなさそうで、各施設が実情に合わせて活動内容を工夫しているようだ。CDCにメールでよせられた施設例の提示です。 5施設の成功報告であるが、共通している部分もある。 偶然 . . . 本文を読む

生物学的製剤と結核リスク

2012-11-09 | リウマチ
前回の続き。2009年のレビューで生物学的製剤と感染症リスクについておさらいした。 結核はRA患者は一般人口と比較して数倍の発生率。Bio治療RAは非治療と比較して数倍~数十倍の発生。いまは各国でBio開始前のTBスクリーニングを推奨。IFXはやはり開始初期発生に多く再活性化に関連、ETNはずっと感染曲線が続き新規感染も関与か。抗TNFは肉芽腫性感染症(ie, histoplasma and li . . . 本文を読む

リウマチ治療薬・生物学的製剤と感染症リスク

2012-11-08 | リウマチ
関節リウマチなどで使用される薬剤で生物学的製剤といわれる一群があり、その効果の高さから近年普及著しい。しかし昨日も述べたように現代医療は免疫不全者が増えており、免疫抑制治療による感染症発生が懸念される。やや古いが2009年のレビューで生物学的製剤と感染症リスクについておさらいした。 抗TNF拮抗薬は感染症リスクを増す、とくに最初の数ヶ月、初期投与量などからIFXがよりリスクが大きい可能性。TCZや . . . 本文を読む

感染症を伴う免疫不全者へのアプローチ法

2012-11-07 | 感染症
某社の社員向け勉強会で“免疫不全と感染”のお題をいただきましたので、勉強中です。 ポイントは免疫不全患者で疑われる感染症の主要な手がかりとして、宿主免疫状態の推量、暴露の疫学的情報、優勢な臨床徴候をヒントに広範囲な病原体リストを作ること。特にICU場面などでは非感染の原因リストも忘れない。BALや組織生検などやや侵襲的な検査に躊躇しない、即座に治療は考慮する。 まとめ ・近年数十年において免 . . . 本文を読む

ピリメタミンとサルファダイアジン

2012-11-02 | 感染症
昨日の続き。脳トキソプラズマ症を発症したAIDS症例で、治療薬準備中。厚生労働省のエイズ治療薬研究班に連絡したら、当方は班員登録も初めてなのに、もう薬が届いた。ものすごく早い対応に感謝。この研究班にpyrimethamineとsulfadiazine の英語の説明書があったので訳して整理し、患者説明に使用した。 厚生労働省のエイズ治療薬研究班 http://labo-med.tokyo-med. . . . 本文を読む

AIDSにおける中枢神経系トキソプラズマ症

2012-11-01 | 感染症
いきなりAIDS例で脳に複数病変あり対応を検討中。まだHAART治療が確立される前の古い文献だが、今回のように進み切ったAIDS例には参考になるデータだろう。それにしてもこの時代の生命予後は本当に悪かったんですね。 ・サンフランシスコ総合病院のエイズ患者115例での中枢神経系トキソプラズマ症のレトロスペクティブレビュー ・患者のほぼ90%は、CD4陽性リンパ球数200以下、3分の2で100以下 . . . 本文を読む