感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

蟯虫 - 臨床家向け  治療

2018-02-15 | 感染症
前回に引き続きまして蟯虫に関して。今回は治療編です。日本では蟯虫に適応のある薬はコンバントリンのみである。治療は基本は2回投与法である。感染反復のときどうするか。など   治療 ・痒み、刺激、および脱毛は対症療法で ・掻爬による肛門周辺の病変は、黄色水銀酸化物やホウ素化ゼリーなどの緩和軟膏で治療されている   ・蟯虫にはピランテルが有効である(B).海外ではアルベンダゾールやメベンダゾ . . . 本文を読む

蟯虫 - 臨床家向け 症候と診断

2018-02-08 | 感染症
前回の続きで蟯虫についてです。今回は一般臨床家向けに諸文献をまとめました。ほぼ腸管内および肛門部の病気ではありますが、まれに虫垂炎との併発で問題になるようです。また異所性に移行し、腸管外の疾患も惹き起こすことがあります。 女性生殖器との関連の報告が多いようです。   症候 ・感染した人はしばしば無症候性であるが、肛門の周りのかゆみは、一般的な症状 ・かゆみの開始時期、夜間かどうか、他の家族 . . . 本文を読む

蟯虫(ぎょうちゅう)について

2018-02-01 | 感染症
大変稀ではありますが当科では時折小児蟯虫例の診断に付随して、その家族の検査と治療と指導を依頼されることがあります。比較的熱帯地域より温帯地域に多い感染ということでなじみのある寄生虫感染症の一つですが、近年はその症例数も減ってきており、小学校での検診も廃止されたとのニュースは記憶に新しいです。当院は検査部でもメーカーからのセロテープ検査の提供が中止となって検査キットがなく、使える抗寄生虫薬もコンバン . . . 本文を読む

心内膜炎の髄膜合併症はそれほど注目されていない

2017-04-13 | 感染症
意識障害や発熱、髄液検査所見から初期診断は細菌性髄膜炎にて経験的治療が始まり、髄液培養は陰性で血液培養にてStreptococcus salivariusが検出され、血液培養陽性例としてICT介入となった例です。結局全顎的な歯周病が見つかり、また経食道心臓超音波検査では僧帽弁に疣贅がみつかり、抗菌薬の大量および長期投与となりました。肺炎球菌以外のStreptococcusと髄膜炎、そして髄膜炎と心 . . . 本文を読む

侵襲性 Streptococcus anginosus群感染症

2017-03-16 | 感染症
前回の続きで脾膿瘍の症例では血液培養からStreptococcus intermediusが検出されました。臨床診断ありその後培養結果が出た場合はその菌の特徴と臨床状況が合うのかを振り返ると共に、他に予想される合併感染症を検討し検索しないといけません。anginosus群(SAG)の感染症についてまとめました。   まとめ     & . . . 本文を読む

脾膿瘍について

2017-03-09 | 感染症
左胸水、胸膜炎疑いにて当院呼吸器科に紹介され、CT検査にて脾膿瘍が疑われた例。外科に入院となり当科に診療相談ありました。背景基礎疾患の検索をどうするか、起炎菌はどんなものがあるか、治療方針は?   まとめ ・脾臓は微生物および粒子状物質の有効なフィルターであり、脾膿瘍の発生率が非常に低いことから分かるように、感染に対しては非常に強い。 ・脾膿瘍はまれな存在であり、報告頻度は0.0 . . . 本文を読む

両側性急性非閉塞性腎盂腎炎について

2017-03-04 | 感染症
背景にHCV感染とHCCのある方の、発熱、白血球増多、画像で両側腎の腫大あり両側性腎盂腎炎疑いとのことで当科に相談がありました。血液培養ではグラム陰性菌が生えつつあるとのこと。たいていは腎盂腎炎は片側なので両側性ということがあるのか文献で調べました。気腫性腎盂腎炎emphysematous pyelonephritis (EPN)でとりわけ糖尿病背景で発生し、両側性となる率もでてくるようですが、本 . . . 本文を読む

食中毒やその関連病態について

2016-06-30 | 感染症
週間日本医亊新報の最新号(No.4809. 2016年6月25日)は特集が「増加する食中毒の傾向と対策」で、その中で、高齢者・免疫不全者などでの食中毒への対応 について執筆いたしました。そのため相当数の文献を読んだのですが、膨大な量ですべて記事にならず割愛しています。今回は調べた文献より 高齢者や基礎疾患のある方の夏場の食中毒やその関連病態について情報提供します。   まとめ &n . . . 本文を読む

抗菌薬スチュワードシッププログラム(ASP)の新しいガイドライン IDSAとSHEA2016

2016-04-19 | 感染症
米国感染症学会と医療疫学学会から抗菌薬スチュワードシッププログラム(ASP)の新しいガイドラインがでています。2007年にも同組織からASPを開発するためのガイドラインがでていました。その実践版という位置づけです。かなり具体的です。 日本でも、日本感染症学会、化学療法学会などの8学会で抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship ; AS)プログラム推進のために抗菌薬の . . . 本文を読む

胃腸症状のないカンピロバクター菌血症

2016-03-10 | 感染症
いま某医学雑誌の記事を書いているためブログ更新が滞ってしまいました。その執筆内容とも若干関連するのですが、総合内科より血液培養陽性の不明熱例を入院対応し、その後 Campylobacter jejuniが検出されたとの連絡がありました。以前に癌治療歴はありますが5年以上たち他に病歴はなかった方です。今回やや腹部は張るのと吃逆があるくらいで胃腸症状に乏しかったのですが。カンピロバクター菌血症につき文 . . . 本文を読む

ホスホマイシン -古い抗菌薬への新たな関心

2016-02-04 | 感染症
多剤耐性(MDR)、広域薬剤耐性(XDR)、および汎薬剤耐性(PDR)感染症の増加はいまや世界の主要な課題となってきています。新しい薬剤の需要に対する供給の格差がグラム陰性菌にてその懸念が特に顕著であり、古くからの抗菌薬であるコリスチンやホスホマイシンなどに関心が示されin vitro薬剤活性、臨床トライアルの文献も出ています。 今回はホスホマイシンについて文献をまとめてみました。   . . . 本文を読む

ノロウイルス感染の重症化、腸管外病変/ウイルス血症について

2015-12-20 | 感染症
12/18のニュースにて、ノロウイルスの感染により10歳女児死亡例があったとのこと。「39度の発熱や下痢を発症し翌日死亡。感染の有無を調べる検査は行われていないが、死因は腸炎による敗血症性ショックで、ノロウイルスによって引き起こされ得るという。女児は2005年の出生時から同病院に入院し、脳神経内科で治療を受けていた」。 重症で免疫力が低下していたという。腸炎から敗血症性ショックを起こしうるのだろう . . . 本文を読む

≥65歳の免疫正常成人のための2種類の肺炎球菌ワクチン:PCV13とPPSV23の投与間隔のためのACIP勧告

2015-10-30 | 感染症
昨年のブログ(→「≥65歳の成人への肺炎球菌結合型ワクチン 予防接種実施諮問委員会の勧告 2014」)でまとめました高齢者への肺炎球菌ワクチンの投与に関する米国予防接種実施諮問委員会の勧告(ACIP)ですが今年9月のCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)で、2種類の肺炎球菌ワクチン:PCV13とPPSV23の投与間隔について . . . 本文を読む

感染症発症後の腎糸球体障害

2015-10-15 | 感染症
最近、感染症発症例での急性糸球体障害を連続で経験したので、感染症と腎糸球体についてその鑑別を上げるべく、文献を読みました。古典的には、A群連鎖球菌の感染によって引き起こされるとされているが、最近ではブドウ球菌やほかの病原菌でも糸球体障害を引き起こすことが分かっている。考えられる病態が様々なだけに、高齢者での腎障害では腎生検も考慮したほうがよさそう。     まとめ &n . . . 本文を読む

リンパ節炎病理検査でトキソプラズマ感染症は診断できるか

2015-10-08 | 感染症
耳鼻咽喉科から頚部リンパ節腫脹の例で、病理にてリンパ節生検にてトキソプラズマ症疑いと診断され当科に追加検査や治療につき相談ありました。50代女性で半年前から頚部リンパ節が腫れ、増大傾向にあったため今回生検となったようです。 所見は、正常なリンパ節構造は保持、著明な濾胞過形成、胚中心でTingible体マクロファージ、副皮質領域において散在性類上皮組織球、焦点性の単球細胞凝集で、多核巨細胞や悪性所 . . . 本文を読む