感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマチなど慢性炎症性関節炎患者マネージメントでの看護師の役割 EULARリコメンデーション

2012-09-17 | 免疫
当科はリウマチ専門としてスタートして1年となり、内外で患者や職員向けの教育勉強会を催してきた。日本にはリウマチ財団の登録看護師はあるが当院はまだ専門看護師はいない。患者の社会的問題、心理的問題をサポートし、疾患教育度を上げることが疾患の良好なコントロールに繋がり、外来看護師の役割も大きいと思われる。この文献はEULARによる慢性炎症性疾患患者への看護師の役割に関するリコメンデーションである。 看護介入も治療手段の一つといえるがRCTが難しく、この推奨も多種類の研究タイプからさまざまな情報をコンセンサスアプローチで組み立てたとのこと。看護研究って難しいんですね。


まとめ

・慢性炎症性関節炎CIAとは、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎に限られ、他の全身性炎症状態(例えば、全身性エリテマトーデス)と非炎症性疾患(例えば、線維筋痛症)を除く
・文献の選定基準は、"炎症性関節炎'、 '看護師が介入実施'、'研究の質問に答えるアウトカム'で、54の研究が選択基準を満たした (1つのメタアナリシス、8つのRCT含む)
・10の推奨事項を示す(エビデンスレベルと勧告の強さを添付)

Recommendations / エビデンス・レベル /勧告の強さ
1 患者は自分の疾患過程の間は、慢性炎症性関節炎とその管理の知識を向上させる教育のため看護師へアクセスを持つべき 1B A
2 患者はコミュニケーションやケアの継続性と満足度の改善を得るため看護師相談へのアクセスを持つべき 1B A
3 患者は、ケアの継続性を高め継続的なサポートを受けるため看護師主導の電話サービスへのアクセスを持つべき 3 C
4 看護師は、疾患活動をコントロールし、症状を軽減し、患者優先のアウトカムを向上させるために包括的な疾病管理に参加すべき 1A A
5 看護師は、患者の不安や抑うつの可能性を最小限にするため心理社会的問題を同定し、評価し、対処する必要がある 1B A
6 看護師は、患者がより大きいコントロール感、自己効力感とエンパワーメントを達成するために、自己管理スキルを促進すべき 3 C
7 看護師は、国と地方の環境に応じたプロトコルやガイドラインに基づいてケアを提供すべき 3 C
8 看護師は、自分の知識やスキルを向上させ維持するため継続的な教育へのアクセスを持ち、実行すべき 3 C
9 看護師は専門的なトレーニングを受けた後は、全国的な規制に従い、拡大された役割を引き受けることを奨励すべき 3 C
10 看護師は、コスト削減を実現するために、包括的な疾病管理の一環として、介入とモニタリングを行うべき 1B C

・推奨事項はすべてリウマチの特定の訓練を受けた看護師によって提供されるケアに関連
・患者教育はセルフケア能力を高めるため、患者の疾患過程の知識、治療戦略(例えば、薬物治療)、理学療法と自己管理戦略(例えば、関節保護技術)の知識を増やす。 医師と比較して看護師により介入され教育された患者で知識レベルは統計的有意に高かった。
・病気や治療についての情報に加えて、教育は、心血管系の問題などのような併存疾患のリスク要因に対処する必要がある
・看護師はまたアドヒアランスを向上させるため、 ' treat to target'原則について患者を教育する上で重要な役割を果たす
・研究の大半は、医師や他の医療従事者と比べ看護師によって介入するとき、RA患者の医療アクセスの良さだけでなく、情報、共感、技術的な質やプロの態度、において統計的に有意な満足度の増加が認められたことを示した (満足度がケアの質の指標)
・リウマチ性疾患は予想不能に変動する性格があるので迅速なアクセスが重要で、その方法の一つに電話相談がある。国によっては情報とサポートが時々メールで与えられる。
・適切な訓練を受けた看護師は早期に関節炎を検出でき、必要な介入や治療薬変更を決定する。こういった看護師による監視は医師によるものに比べ疼痛が少なく疲労感も少ない
・慢性炎症性関節炎の心理学的影響は相当であり不安や抑うつはRAでよく知られている合併症。ある研究では看護師の介入後患者の不安や抑うつは統計的に有意に減少。 看護師監視の患者では社会活動性の増加が報告。
・看護師主導の管理治療、情報、サポートが患者のエンパワーメントに貢献し、自己効力感を増し患者の自立を高めることが示されている
・患者ケアのためのガイドラインは、評価と治療、紹介、補足処方 に関して看護師の臨床の意思決定のスキルをサポートするために見出され、したがって、科学的根拠に基づいた看護、ホリスティックケアに貢献している。 プロトコルは対応看護師が、治療の即時的かつ適切な調整と、早期の関節炎やその他を区別する観点から、ケアの継続性と安全性をサポートするために見出された。
・看護師の多種の業務(自己管理のサポート、教育、カウンセリング、薬物モニタリング、薬剤処方や関節内注射の投与等の介入)を引き受けることで自己能力に自信を感じた。看護師の自信は、リウマチ性疾患とその治療、教育やカウンセリングや研修に関連した技術、他の医療従事者との連携、マニュアル技術、の知識でサポートされている。
・患者教育とカウンセリングの相談や課題の内容は、看護師の教育レベルに依存している
・看護師によって実行される業務や活動の複雑さを考えると、基礎、上級、拡大とレベルが明確に定義された教育への継続的なアクセスが必要
・革新的な看護師主導のケアは、ケアの効率を高め、統計学的に有意に費用対効果の高いことが示された。看護師主導の監視では、医療紹介を減少し、リハビリテーション•プログラムで滞在の長さを減少させた。


参考文献:
Ann Rheum Dis 71:13-19 ,2012

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