感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

TNFα阻害剤に関連した血管炎

2012-09-14 | 免疫
現在、抗TNFα阻害剤でコントロールしていたRAの方の長期に続く不明熱で精査入院中。いろいろ考え、検査もしているが検査結果が得られず診断に苦慮。可能性として抗TNFα阻害剤に続発する発熱疾患として、薬剤性ループスや血管炎も考慮し、この文献を読んだ。  もし抗TNFα阻害剤投与中に 皮膚や神経症状などから血管炎を疑った場合、組織学的吟味、他の血管炎をきたしうる病態を除外、RAなど原疾患は低活動性であることを確認の上、抗TNFα製剤は中止を検討する必要がありそうだ。


まとめ

・腫瘍壊死因子-α(TNF-α)阻害剤に関連し発症した血管炎患者の臨床的特徴、病理組織学的特徴、転帰を記述
・13年間の多施設のレトロスペクティブレビューで抗TNF-α療法関連血管炎は8例
・4人は関節リウマチ、1人はクローン病、3人は潰瘍性大腸炎を持っていた。
・5人はインフリキシマブ、2人はエタネルセプト、1人はアダリムマブで治療
・血管炎発症前の治療の平均期間は34.5カ月
・皮膚血管炎が5例、触知可能な紫斑がうち4例
・全身性血管炎に関しては、4例が末梢神経系、1例が腎臓
・8例中7例が 治療の中止で改善(改善までの平均時間は、6.9ヶ月)、アジュバント療法(全例8人がプレドニゾン受け、別の薬剤もまた7人で使用された)

・抗TNF-α療法に伴う血管炎の診断は、以下を持っていた患者で検討された:
(1)抗TNF-α療法を受けていた間に血管炎の1つ以上の臨床症状が発生した患者
(例えば、末梢神経、皮膚、腎臓、中枢神経系、または肺病変)
(2)関与の少なくとも1つのサイトから病理組織学的確認
(3)抗TNF-α療法で治療されている基礎疾患は静穏化できている
(例えば、関節リウマチ[RA]または炎症性腸疾患[IBD])
(4)感染症、悪性腫瘍、または可能性が高い薬剤のなど、血管炎の他の可能性が高い原因は不在。

・5人のすべての皮膚生検標本は、組織学的検査で白血球破砕性血管炎
・腎生検では、蛍光抗体検査でIgAメサンギウム染色に基づいて軽度IgA腎症(ヘノッホ•シェーンライン紫斑病)と一致
・3人の神経生検標本のうち2人は、多発性神経障害の証拠を有する血管周囲神経鞘炎症を、1人は血管周囲炎症や軸索変性と神経周囲の肥厚増加

ディスカッション
・抗TNF-α療法は皮膚血管炎、ループス様症候群、全身性エリテマトーデス、間質性肺疾患などのような薬物誘発性自己免疫疾患に関連付けられている。
・血管炎は、抗TNF-α療法をした結果生成される最も一般的な自己免疫疾患である。
・現在までに、TNF誘導血管炎の213例は、医学文献で報告されている 
・抗TNF-α療法に関連する血管炎の例で、その因果関係を決定するのは難しい
・RAとIBDの両方が血管炎を併発することがあるので、RA患者で発生した血管炎と抗TNF-α療法を伴うRA治療で発生した血管炎の交絡バイアスは、血管炎の責任病態を考える上で、難しい点である

・抗TNF-α剤で治療された患者で抗核抗体と抗二本鎖DNA抗体などのような自己抗体の発生が医学文献で認識されている
・抗TNF-α剤で、 抗二本鎖DNA抗体の誘導が患者の9%~33%に起こり、抗核抗体は、23%~57%で発生
・自己抗体の誘導と抗TNF-α療法関連の血管炎の発生の間に関連性は明らかでなく、この研究でも血管炎をきたした患者で自己抗体は発生していなかった。

・いくつかの生物学的製剤は、全身性血管炎の治療に成功しているのに、 まだ、これらの同じ薬剤が逆説的に、基礎となるリウマチや全身性自己免疫疾患の治療を受けている他の患者で血管炎を誘発するという、この矛盾した病気の経過は、個々の遺伝的感受性のための潜在的な役割を示唆
・抗TNF-α療法に関連血管炎の発症機序は不明であるが、抗TNF-α剤に対する抗体の開発は、免疫複合体介在性の過敏性血管炎につながる可能性
・もう1つの仮説は、TNF-αの阻害は、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、および血管炎などの自己免疫疾患の誘導につながり、TH1とTH2サイトカイン産生のバランスを変えることによって、1型インターフェロンの発現を促進


参考:
Mayo Clin Proc. 2012 Aug;87(8):739-45. Epub 2012 Jul 13.

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