くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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英国圏女性作家が描く「家族のかたち」

2007年11月14日 | 海外文学 その他
しばらく更新していませんでしたので、その間に読んだ本をちらりと紹介。
新聞の日曜版でも紹介されていて、目をつけていたドーキンス「神は妄想である」を図書館の新刊コーナーでみつけ、ホクホクしながら帰ったのもつかの間、なかなかこの本が読みにくく進まない。
なにが読みにくいのかといえば、日本語が難しいのであります。
ドーキンスですから理論的であってしかるべきで、小説を読むようにはいかないのは当たり前なんですが、自分の日本語力のなさにめまいがする次第です。
そんなわけで、図書館の返却期限も来てしまい、人気がある新刊なので、あとに予約もついているということで、延長も出来ず、泣く泣く返却。
あらためて予約を入れましたので、「神は妄想である」が記事としてアップされようになるのは2,3ヶ月後になるでしょう。

人間、極端なものを読むとその反対側にある極端なものを求めたくなるという傾向があるらしく、
「神は妄想である」を読み切れないとさとった時点で読み始めたのがスティーブン・キング「呪われた町」

 呪われた町 (上)呪われた町 (下)

ヴァンパイア愛好家(笑)によれば、前評判も高かったので、正直、かなり期待していました。
ブラム・ストーカー「ドラキュラ」をアメリカに持ってきているというのが「呪われた町」のキモで、現代的な合理的感覚でありながら、オーソドックスさを失わないというところは、大変見事でありました。
ヴァンパイアが根源的な恐怖であるなら、それに対抗する根源的なものがあるはず。
下手な宗教心はかえって邪魔になるというのが面白いところです。
キングって、もしかしたら無神論者かしらと思ってしまう自分は、
ドーキンスにかなり影響されています。

ある方の記事に触発されて、アトウッドが読みたくなった私は、読んでいなかった短篇が所収されている「英語圏女性作家の描く家族のかたち (MINERVA世界文学選)」を図書館で借りました。
英国圏というのは、英語を使用している国々を指し、アメリカやイギリスばかりでなく、カナダやインド、南アフリカやニュージーランドなど、幅広い作家陣が集められています。
アンソロジーの楽しみは、初めての作家に出逢えるチャンスにあります。
普段なら手に取ることもなく通り過ぎてしまう作家も気軽に楽しめることができます。
私の場合、アトウッド以外の作家は全て初見で、知っている作家名は数人でありました。

本書の構成はⅠ~Ⅴ部に分かれていて、それぞれ、Ⅰ部「母と娘」、Ⅱ部「妻と夫」、Ⅲ部「男と女」、Ⅳ部「母と息子」、Ⅴ部「父と娘」というように、家族の人間関係に焦点があてられています。
読者が女性なら、母であり娘でもあるわけで、「母と娘」というテーマは、どちらの立場にも感情移入することが可能ですから、一つの物語を2つの側面から読むという不思議な体験が出来るのです。
エリザベス・テイラーという有名な女優さんと同名のイギリスの作家の「ミスタ・ウォートン」は、娘の立場で読むと、「ああ、やっぱり」なのだけれど、母の視点に惑わされると驚く結末となるでしょう。
「母の人生の重大事」は、アトウッドのエッセイで、彼女の生い立ちが少しだけ覗けるという点で、アトウッドファンには必見。
らしいなと思わせるエッセイです。
「支配の声」ディーナ・メーヘタはインドの作家。
伝統的な慣習の中から芽生える新しい気風を母と娘の葛藤を通して描いた短篇で、子を持つ親として、身につまされます。

家庭生活において、女は母親であると同時に妻であり、男は父親であり夫です。
それぞれの家庭には様々な生活があり、そこにはいろいろなドラマがあるものです。
フェイ・エルドン(イギリス)「週末」は、やりがいのある仕事をしていながら完璧な母であり、夫の機嫌を損じないように気を使う、そんな妻がいつ爆発するのだろうと読んでいるほうが心配になるような短篇で、多くの女性が共感するんではないかと思います。
これは、女性だけでなく、男性にも読んでもらいたいですね。

この短編集の中でのお勧めは、母と息子というテーマのなかの「王子さまの休日」。
エリザベス・ジョリーというオーストラリアの作家なのだけど、
そこに描かれている息子はまさにニート。
母親と息子の会話シーンは、お笑い番組、はねトびの家庭内プロレス「母親VSニート」で、ニートって日本だけのことじゃないのね。
母親のユニークさが光る一作。
私の趣味にどんぴしゃだったのは、テス・ギャラガー(アメリカ)「馬に憑りつかれた男」。
こちらは、娘と父をテーマにしていますが、祖父から父へ、父から娘へと受け継がれるジプシーの血のつながりが、不思議な魅力を持って語られます。

アリス・マンロー(カナダ)は図書館でよく目にしていた作家で、装丁だけはよく観察させていただいていました。
とにかく装丁が可愛らしいのですよ。
作家名もアリスなんて、可愛らしい名前だし、ついつい少女趣味的な印象を持っていたんですが、本書の「男の子と女の子」を読んで、そのフェミニズム的な視点に考えを改めました。
先入観を持ってはいけないなぁと大きく反省したのであります。

記事の更新をしていないのは、半透明記録の同人誌に参加するべく、
新作のシナリオを書いているからです。
「つるにょうぼう」にしようと題材を決めたのはいいのですが、いざ書き始めたら、ほかのこと、特に文章を考えることが出来なくなってしまったのです。
かなりどっぷりつかっています。
この記事は、シナリオにとりかかる以前に、ほとんど書いていたので、
なんとかアップさせることが出来ました。
しばらく記事を書かないかもしれませんが、生存していますのでご心配なく。




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おお~! (ntmym)
2007-11-14 17:53:42
こんにちは!

シナリオのほうを着々と進められているのですね! 楽しみ~♪
と、言い出しっぺの私は……これからやるところ; いや、ほんと、そろそろやらないと!


ところで、ドーキンスは面白そうですね。
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進んでいると言えば進んでいる (くろにゃんこ)
2007-11-14 23:59:30
進んでいないと言えば進んでいない。
どっちなんだい!?
なかやまきんにくんかっ!

私の場合、頭の中である程度作り上げてから、よし、書けるぞ、となってから書き始めます。
ある程度出来上がっているから、簡単に書けそうなものですが、なかなかね、セリフとしてまとめるのって難しいのよね。
人形劇のシナリオとして、とりあえず書いてみて(書きなれているから)、戯曲としてもう一度書き直していくつもりです。
もうすぐ別れのシーンに入るので、それが書ければ、ある程度のページ数はつかめると思います。

ドーキンス、面白いです。
表紙をめくって、最初に目に飛び込むのは、何故か「銀河ヒッチハイクガイド」の一文だったりして。
いや、ホントの話。
それなりの理由はあるのですけどね。
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