くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
出版社など詳しく知りたい方は、記事下の書名をクリックするとamazonに行けます。

ジーキル博士とハイド氏 スティーヴンスン

2008年05月20日 | 海外文学 その他
前回の記事で、ちらりと触れた人形劇の新作は「そらまめくんのベッド」に決まりました。



数種類のお豆さんが活躍するかわいらしいお話で、ミクロな世界を表現します。
なんといっても、大きさの基本がそらまめ一粒ですからね。
絵本に使われている言葉のユニークさを出せるかどうか、難しいところですが、今回は、あらたな人材育成に努めようと、わたくしシナリオ課業から足を洗うことにいたしましたので、そのあたりの心配は、新しいシナリオ作家さんにお任せです。
今私を悩ませているのは、バカでっかいウズラをどう作るかで、ふわふわな羽毛の感じをどう出すか、なんとか手近な材料で、リアルな羽毛を作れないかと思案中です。
「そらまめくんのベッド」と争って、最後まで候補に残っていたのは、
私が推していた「木いちごの虫」という北欧の児童文学作家トペリウスのお話です。
「木いちごの虫」は、世界童話全集の北欧童話集に収められている「えぞいちごの虫」と
岸田衿子氏による「木いちごのおうさま」の2つの訳があります。
多少、訳も異なり、ニュアンスも違っていますが、北欧の森の豊かな自然が描かれているところが魅力です。
また、世界童話全集の北欧童話集に所収されているアンナ・ワーレンベルイ「なみだのしんじゅ」は一見の価値ありで、これほど深い童話に接することができる北欧の子供たちは幸せだなぁと思います。

いろいろあって、なかなか小説らしい小説を読んでいませんでしたが、時々ブックオフには出かけます。
最近の当たりは、リラダン「未来のイヴ」の文庫で、800円で即購入。
斎藤磯雄氏の名訳が、いまだ増刷されていることに感動です。
「ジーキル博士とハイド氏」は、図書館に行けば見つかるかなぁと思いましたが、一冊くらいうちにあってもいいか、薄っぺらいし、岩波だし、100円だし、ということで購入しました。
「ジキルとハイド」といえば、いわずと知れた有名な作品で、読んだことがなくても、誰でもどんな内容かぐらいは知っていますよね。
アマゾンの書評では、カバーの紹介文でネタばれ、有名すぎるとか書かれていますが、繰り返し映画化されたり劇場で上演されたりするのには、人の興味をひく何かがあるのだと思います。
勤勉であり善人であるジーキル博士が、些細な悪徳を許容することができないために、自分自身でハイドという別の人間を、ジーキル自身でありながら自身とは切り離したものとして作り上げ、そのために破滅してしまうこの物語は、善と悪の相克という古典的でありがちなテーマではありますが、簡単に人間性が変化するものでないということを考えれば、普遍的なテーマであるといえるでしょう。
ジーキル博士の敗北は、邪悪なハイドを最後まで自分とは認めなかったことにあるわけで、小説を読みながら思い出したのは、ちょっと前まで放送されていた「あしたの喜多義男」というドラマのこと。
このドラマは久々のヒットで、子供たちと毎週楽しみに観ていました。
一時間が異常に長く感じるドラマなんですが、決して面白くないからというわけではなくて、これは演出の技だと思うんですよね。
脇役俳優として名高い小日向さんが主役ということで話題になりましたが、小日向さんのオトボケキャラ炸裂というだけでなく、ネガティブ義男の憎たらしいキャラも小日向さんだからこそできた、いや、小日向さんのためだけにこのドラマは作られたのかもしれないと思わせるキャスティングでありました。
「あしたの喜多義男」では、ネガティブ義男は無事喜多義男と統合され、結果的にハッピーエンドを迎えます。
「ジーキル博士とハイド氏」について、最後にひとつ。
ーー人間は一個の国家であって、内部には雑多で独立した住民が互いに対立しあっている。
お、ミームっぽいぞとテンションが上がった一文でありました。

ジーキル博士とハイド氏 (岩波文庫)


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
心は狼? (迷跡)
2008-05-22 07:00:24
最近読んだ文章の中で「ジーキル博士とハイド氏」を人狼小説の傑作と言及していて一瞬“?”となりました。
抽象的意味での狼への変身譚ということなんでしょうね。ハイド氏になると外貌も相当変わりましたっけ?
肉体は薄霧のごとくはかない (くろにゃんこ)
2008-05-22 08:30:31
「ジーキル博士の完全な陳述書」のなかに次のような文章があります。
一見すこぶる堅固に思える我々の肉体が、実は揺れ動く微々たる存在、薄霧のごとくはかない存在だという事実である。風が天幕のすそを舞い上がらせるように、私はある種の媒体が我々のまとっている肉体の衣を揺さぶり、はぎ取ってしまう力のあることを発見した。
科学的検証はされませんが、この発見によって、ジーキル博士はある薬品を調合してハイド氏に変身するのです。
外見はジーキル博士とハイド氏では大きく異なり、背が高く本人によれば善で輝くジーキル博士は、背が低く誰が見ても嫌悪の感情を及ぼす外見へと変化します。
これは善なる精神は善なる肉体を持つという考え方によるものなのかもしれません。
完全に善なる人などは存在せず、誰しも悪の部分を持つならば(私はそう思ってますが)、その悪が狼ということになりますね。