くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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アンソロジーの楽しみ 文学のフロンティア「愛のかたち」

2009年11月23日 | 海外文学 その他
ジャネット・ウィンターソン「灯台守の話」を読んだのは、先々月だったか。
評判どおり面白く、アクの強さが控えめななかにも、充分ジャネット・ウィンターソンらしい伝説と幻想と現実の狭間が描かれていて、どなたにもオススメできる一冊だと思いました。
もうちょっとウィンターソンが読みたいな(アクの強いやつをね)と思って、読んでいなかった短編(?)が所収されているアンソロジー、文学のフロンティア「愛のかたち」を図書館から借りてきました。
これがビックリ大当たりで、とにかく面白い短編の目白押し。
アンソロジーの楽しみは、まったく読んだことのない作家に触れる機会が持てる、その作家の本がもっと読みたくなるということだと思っていますが、まさにこのアンソロジーは、その楽しみの宝庫でありました。
私が興味を持った作家は、セルゲイ・ドブラートフとアイザック・B・シンガー、グロリア・サワイ。

セルゲイ・ドブラートフの「これは愛じゃない」は簡素な文体で読みやすく、程よいユーモアが心地良い作品でした。
「これは愛じゃない」は「わが家の人々」の一部分だと解説にありましたので、さっそく図書館へ行き、借りて読みました。
一冊まるまる読んでみると、そのユーモアが著者の悲しみや悔しさ、苦しみや後悔の気持ちをあらわすものであることに気づきました。
自伝的な小説で、著者の体験にもとづいて書かれているのですが、ちょっとした齟齬がときどき見受けられて、作っているところもかなりあるのだなと感じました。
それでこそ、小説ですよね。

アイザック・B・シンガーの「幻影」はとても濃密な世界観があり、もっとこの濃密さに浸りたいと思い、図書館にあった「愛の迷路」を借りて読みました。
シンガーはノーベル賞作家であるのに、図書館の蔵書が少なく、「愛の迷路」以外は「罠にかかった男」と児童書が数冊しかありません。
「愛の迷路」はひとりの男と3人の女性をめぐる物語で、期せずしてこれも「愛のかたち」でありました。
今は「お話を運んだ馬」を読んでいます。
気がすむまで、イーディッシュの世界観に浸ろうと思ってます。

グロリア・サワイは、「私がイエス様とポーチに座っていると風が吹いてキモノの胸元が開き、イエス様が私の乳房を御覧になった日のこと」という作品以外、あまり知られてはいないらしいです。
サワイというのは夫の姓で、日本の銭湯の話題がこの小説の中に出てきます。
カナダの家のポーチにキリストとキモノを着た女性が一緒に座り、日本の女性の乳房について話をする。
じつにグローバルですね。

世界文学のフロンティア〈2〉愛のかたち
灯台守の話
わが家の人びと―ドヴラートフ家年代記
愛の迷路 (1974年) (海外純文学シリーズ〈9〉)
お話を運んだ馬 (岩波少年文庫 (043))


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