くろにゃんこの読書日記

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高野聖 泉鏡花

2006年01月04日 | 国内文学 その他
本当は、太宰のレビューを書くはずでした。
『駆け込み訴え』を読み、イスカリオテのユダの愛するが故の憎悪、愛する自分への依存という、生々しい感情を目の当たりにして、こんな小説を書く人は心中するのも当たり前だなぁと思い、『女の決闘』を読み始めたところで「そろそろ、この辺りから私(DAZAI)の小説になりかけていますから・・・」という文を見たとき、ああ、このまま読み進めては発狂してしまう、
と危機感を感じ、やめました。
精神的に繊細な人は、太宰を一時にたくさん読んではいけません。
そこで、『死霊の恋』を読むために借りていた、ちくま文学の森『変身ものがたり』に収録されている泉鏡花『高野聖』を読むことにしました。

有名なお話なので、読んだことのある人も多いでしょう。
越前敦賀に向かう旅の途中で、高野山の僧侶と道連れになった旅人が、
僧侶から聞く怪異の物語。
その旅僧(実は大和尚であったという)が若いころ、飛騨の山越えをしたときのこと、本道を水と大木でさえぎられ、先を行く薬売りの後を追って旧道に足を踏み入れた旅僧が、蛇や蛭に苦しみながらもたどり着いたのが、ある一軒屋。
そこには、知恵の足りない男と美しい女、そして使用人と思われる親爺がいた。
親爺が売りにいこうとする馬は、何故か門から動こうとしない。
「貴僧(あなた)ここへいらっしゃる道で誰にかお遭いなさりはしませんか」

高僧が語る怪異というと、先ほどあげた「死霊の恋」を思い浮かべますね。
無垢な僧侶を美しい女が惑せるというシチュエーションも同じですが、
東洋の僧は、なびきながらも危機を脱します。
西洋と東洋の違いを比べて読むのも、面白いかもしれません。
また、『高野聖』は読み手の想像力に訴えるものがあって、
頭の中で映像をイメージしながら読むことができます。
蛭が落ちてくる場面は、ちょっと気持ち悪いですが。

そうそう、泉鏡花の別筆名に畠芋之助っていうのがあるんですよ。
はたけ、いも、、、なんて素朴な。
泉鏡花って、おちゃめさんだったんですね。

変身ものがたり


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
鏡花も好き (mopsa)
2006-01-04 21:33:05
新しい年になりました。くろにゃんこさん、今年もよろしくお願いします!



鏡花、はまった時期がありました。見たことも無いような言葉とルビを駆使した文章が、万華鏡のように目に美しくて。正直、よく内容が把握できなかったりしたのですが、リズム感で突っ走って、けっこう読みましたね~。



太宰は、肌合いがあわなさそうで、無意識に避けてるかも。繊細じゃないんですが、小心なので(笑)
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ファン多いですね (くろにゃんこ)
2006-01-04 22:50:23
あけましておめでとうございます!

こちらこそよろしくです。



鏡花の文章は、旧仮名遣いでありながらもさらに独特できらびやかですね。

私は学生時代に「夜叉ヶ池」を読んだことがあるくらいです。

「春昼;春昼後刻」も面白そうですね。



太宰は時間を置いて、また何か読んでみようかと。

今は室尾犀星「蜜のあはれ」を読んでいますが、かなり笑えます。
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外科室 (mumble)
2006-01-06 14:31:10
あけましておめでとうございます。

鏡花はあまり読まないけれど、わたしが習っている邦楽の先生が玉三郎の映画に出るというので、まず本を読み、その映画を見に行きました。もう10年も前のような気がしますが。吉永小百合、加藤雅也でした。なぜ玉三郎が吉永小百合をえらんだか、ちょっと疑問に思ったものです。胸元はもはやアップには耐えられない状態でしたのに。「蜜のあわれ」読んでいただいているようでありがとうございます。今風に言えば、萌えって感じでしょ?。「人を好くということは愉しいことでございます」が、鏡花には苦しいことであり、それがまたいいのでしょうね。
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あけおめ!ことよろ! (くろにゃんこ)
2006-01-07 09:13:27
今風に言ってみました(笑)



「外科室」はみていないし、読んでもいないのですが、「夜叉ヶ池」は映画をみてから本を読みました。

こちらも玉三郎がらみですね。

美しかったなぁ、玉三郎。



「蜜のあわれ」読みましたよ。

面白かった。

オタッキーの萌えどころとはちょっと違うかもしれないけど、金魚さん、かわいかったです。

をじさま方の理想の娘の姿なのかなぁ。

これからレビュー書きます。

お楽しみに。
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くろにゃんこさんへ、 (indi-book)
2006-01-10 17:55:47
くろにゃんこさん、こんにちは、、。

私も、太宰の「駆け込み訴え」を読んだ時、

まるで、一対一で、語りかけられているような、

太宰パワーを、感じて少し怖くなりました。

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NHKで (くろにゃんこ)
2006-01-10 22:00:20
今日の午後、何気なくチャンネルを回していたら、教育番組のおはなし絵本みたいな番組で「走れメロス」をやっていました。

しかも、キャラクターが犬でした。。。

ちょうど王さま(もちろん王冠をかぶった白犬)がメロス(こっちも犬、どんな犬か忘れた)に身代わりを出せと言っている場面だったのですが、セリフもそこそこ原作に忠実で、見ていて怖かったです。

もしかして、太宰恐怖症だろうか?
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はじめまして (arumi)
2006-01-15 22:49:36
いきなりですが、ちょっと気になることがあったので……。

泉鏡花の本名は「畠芋之助」ではなく「泉鏡太郎」です。

「畠芋之助」は鏡花が使っていた筆名の一つらしいですよ。



他の人の書いた書評を読むのが好きで、「泉鏡花」で検索してここにたどり着きました。どれも面白そうな本ばかりでした。紹介の文章がすごく楽しそうなんですよね。本が大好きな人なんだな、とちょっとした感動を覚えました(笑)



私は文を書くのが下手、ついでに筆不精なので、ぶしつけなコメントになってしまったかもしれません。申し訳ないです。
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げげ! (くろにゃんこ)
2006-01-16 07:46:35
調べました。

本当ですね。

私が読んだ本の紹介文には、そのように書いてあったんですよ。

ひとつの記事だけ信じちゃいけませんね。

これから気をつけます。

早速訂正します。

情報、ありがとうございます。

ブログっていうのは、素人が書くものですから、間違いや勘違いもありますよね。

こういう風に、間違いを指摘していただけると助かります。



おっしゃるとおり、本は大好きです。

読むだけじゃなくて、読んだ本の忘備録として、ブログをはじめたのですが、私と同じように本好きな人とこうやってコミニケーションを取れることが楽しいです。

どんどんコメントを残していってくださいね。

これからもよろしく!
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