くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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予告殺人 アガサ・クリスティー

2007年01月09日 | ミステリー 海外
昨年末にBSでアガサ・クリスティー特集をやっていました。
ご覧になった方も多いかと思います。
我が家では、親子で鑑賞いたしましたが、熱心に観ていないと何が起こったのかわからなくなるというのが子供達の感想でした。
日本の2時間サスペンスと一緒にしちゃいかんよ。
相変わらず、グラナダTVはレベルが高いです。
それでも、次男はマープル伯母さんが気に入ったようです。
私は中学生時代にアガサ・クリスティーを随分読んだ気になっていましたが、
考えてみればポアロものばかり。
マープルも読もうと思って購入した記憶もありますが、
ポアロとは印象が随分違うことに戸惑って、結局読まずじまいだったのです。
それから月日は流れ、現在に至るまでクリスティーからは遠ざかっていましたが、今回のBS放送に触発されて、読書意欲が掻き立てられたというわけです。

ポアロを読んでいた当時は、謎が解き明かされるスリル、あっと驚くどんでん返しなどが面白く、夢中になってストーリィを追っていったような気がします。
大人になってから読むマープルは、筋の面白さもさることながら、
その周辺の細部にも面白さを見出せるのですね。
殺人者に狙われているだろう人が死んだ場合に
遺産を受け取ることになっている行方不明の双子の名前はピップとエンマ。
うおっ、さすがイギリスと感心できるのは、歳をとった賜物というものです。
この先入観が後々覆されるんですが、作者に騙されるのも一つの楽しみですよね。
ストッキングと殺人についての何気ない会話には、
「絹靴下殺人事件」のことかなぁと思ったりして。

ミス・マープルといえば、安楽椅子探偵の代名詞のようなところがありますが、
「予告殺人」では現場に乗り込む行動派です。
といっても、幼友達の娘、牧師夫人のバンチのところに滞在するという、
いかにも老婦人らしい口実で。
その調査も、散歩にカフェでの雑談、お茶に呼ばれたりすることが中心で、そこから観察される人柄や言葉はしなどから推理を働かせるんですね。
「予告殺人」の面白さは、小さな田舎の村であるチッピング・クレボーンに起こる殺人事件によって、昔の誰でもが顔見知りである村から、都会から、または遠方から流入してくる移住者によって、隣人のことを先祖代々までさかのぼって知ることは出来ないという社会環境の移り変わりを浮き彫りにしていることと、犯人が幼馴染の友人を殺害する前後の心理です。
計画のために、愛する友人を殺すことを正当化すること。
殺人後に友人のために涙を流すこと。
その後はたがが外れたように殺人を繰り返すこと。
おや、これは「メーデイア」ですね。

なんにしてもマープルものの最大の魅力はミス・マープルのキャラクターにあるでしょう。
小柄で編み物好き、もうろくしていそうなのに頭脳明晰で、観察眼が鋭く、酸いも甘いもかみ分ける、可愛らしくて、皆に愛されるおばあさん。
ああ、うらやましい。
こういうおばあさんになりたいものです。

予告殺人




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