くろにゃんこの読書日記

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バートラム・ホテルにて アガサ・クリスティー

2007年01月10日 | ミステリー 海外
「予告殺人」に引き続き、「バートラム・ホテルにて」を手に取りました。
いやあ、驚きました。
正統派本格ミステリというのは、こういうものを指す言葉なのですねぇ。
そりゃあ、つつけば甘いところも出てきますが、いいじゃないですか、娯楽小説なんですから。
あら捜しなんて無粋ですよ。

バートラム・ホテルというのは、エドワード王朝時代そのままの外観を残し、
そのたたずまいと同様に、昔ながらのイギリスを保っているホテルで、本物のお茶、
本物のマフィン、本物の給仕を提供しています。
顧客も長年利用しているような昔風な滞在客が多く、それに加えて海外からの裕福な旅行客が昔ながらのイギリスを満喫する、そんなホテルなんですね。
娘時代に滞在したことのある思い出のバートラム・ホテルに
姪の好意で2週間ほど滞在することとなったミス・マープル。
昔と少しも変わらぬホテル、幾人かの古い知り合いとの会話、ロンドンでのショッピング(リンネルや毛糸など)を楽しむ傍ら、人間観察も忘れない。
そのころ、イギリスでは各地で強盗事件が多発しており、
頭のいい犯人に警視庁の上層部は悩まされている。
おや、ミス・マープル、今度は随分大きな事件ですよ。
期待して読み進めていくのですが、あれ、ミス・マープルがあんまり出てこない。
失踪事件は起きても、殺人が起こらない。
どうなってるんだぁ?
と疑問符を飛ばしていると、ホテルのドアマンが射殺されるという事件が起こります。
さて、各地で頭脳的に展開される強盗事件と老牧師の失踪、ドアマンの殺害、
はたしてどんなつながりがあるのか。
それは読んでのお楽しみ。

「バートラム・ホテルにて」は、比較的公正な推理小説であるといえるでしょう。
つぶさに読んでいけば、あらゆるところにヒントが隠されていますから(殺人が起こらないことも含めて)、ああ、犯罪集団の頭脳はこの人だなぁと見当をつけることも可能です。
ですから、マープルものにつきものの殺人事件の発生に、ああ、やっと来たかと思うと同時に、でもなんでだろうと混乱しちゃう。
これも、前に戻れば答えがちゃんとあるんですけれどね。
このミステリのポイントは、2つ。
みせかけの本物らしさ、そして、時は過ぎ去っていくということ。

おまけとして、バートラム・ホテルの従業員、給仕頭のヘンリーなる人物のことを。
ヘンリーは必要なときにたちまち現れ、気付かぬ間に消え去っていく。
支配人もベテランの受付係も彼なしにはやっていけないという。
おっと、コイツは切れ者だな、とイギリス人なら思うはず。
だって揺らめき消えるその技は、ジーヴスの専売特許でもあるのだし。
だんだん話がきな臭くなってくると、怪しい、実に怪しい、と思うわけ。
ということで、これはイギリスならではのひっかけなのです。
それと、関係ないけど、毒チョコが出てきたのもうれしい。

バートラム・ホテルにて




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶりです (あきこ)
2007-01-15 22:06:26
お久しぶりです。
早々の年賀状ありがとうございます。
本当にとっても嬉しかったです。

あまり、こうしてコメントは残しませんが
かなり頻繁にのぞきにきてますよ(^▽^)

今回はアガサ・クリスティーを読まれたんですね。
一度は読んでみたい作家さんなのですが、
なかなか腰を据えて読むことができないのが残念です。

今年もよろしくお願いします。
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こちらこそ (くろにゃんこ)
2007-01-16 09:47:44
年賀状、ありがとうございました。
息子さんもお嬢さんも可愛らしいですね!
昔、うちにあった新幹線のオモチャを思い出しましたよ。
ボロボロになるまで乗り回したものです。
私も子供が小さいときはあまり読書はしなかったですね。
暇があったら寝てました(笑)

マニアックなブログにきてくださってありがとうございます。
今はラーゲルレーヴ「ニルスのふしぎな旅」を読んでいます。
そのときによって、傾向の違う本を節操なく読んでいますので、
次に何が来るのか自分でもよく分かっていません。
いつでも遊びにいらしてくださいネ。
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