くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
出版社など詳しく知りたい方は、記事下の書名をクリックするとamazonに行けます。

金魚鉢に耳をあてればイルカの歌が聞こえる?

2007年12月24日 | SF 海外
ドーキンス「神は妄想である」を捲って最初に飛び込んでくるのは、
ダグラス・アダムス「銀河ヒッチハイクガイド」の一文。
なんとドーキンスとアダムスはお友達だったのです。
あ~、なるほど。
「銀河の果てのレストラン」はそういうことだったのか。
納得。

ドーキンスに触発されて、しばらく放っておいたヒッチハイクガイドシリーズの
続きを手に取りました。
あれ、なんで地球があるんだ?
3巻目ってどうなったんだっけ?
思い出せん。
そういや人に貸し出し中だった。
ま、いいか。
そのまま読んじゃえ。
んん、あれ?
普通に小説だよ。
しかも、あのアーサーに恋人出現?
ブリザード吹き荒れるさむーい人生にも、いつかは春がやってくるんですなぁ。
シリーズ第一巻に登場したちょい役の少女、フェンチャーチとめでたく恋仲になるアーサー、そして2人で「創造物への神の最後のメッセージ」を見にいくというのが今回のストーリィ。
メッセージは、おおいに笑うというより、ああ、そう、そうよね、ってな感じです。
奇しくも、梨木香歩「エンジェル・エンジェル・エンジェル」と同じ結果を得ようとは。
一番笑ったのはアーサーがフェンチャーチに語るビスケット事件。
なんとも英国らしいこのエピソードはアダムス本人の実体験だとか。
きっと眉毛の上げ下げなど、無言の戦いを繰り広げたに違いない。
ぷぷっ。
調子よく「ほとんど無害」に突入。



「ほとんど無害」とは、地球のヒッチハイクガイドにおける紹介文の全てであることは、
皆さんご記憶にありましょう。
地球は超空間バイパス建設の障害物としてヴィゴン人に破壊されたはず。
ところがどっこい、どうも地球はまだ存在しているらしい。
何でだ?
ZZZ9-多重(プルーラル)-アルファというのが地球の正式な座標。
問題なのはプルーラル帯に存在するということ。
「さようなら、いままで魚をありがとう」は、SF愛好家にとってはSF部分が少なく、物足りなく感じたのではないでしょうか。
私は悪くないと思っていますが。
さて、今回はなんともわかりづらい平行宇宙<ありとあらゆる全面的ぐちゃぐちゃ>が相手。
SF脳を刺激されますなぁ。
そんなわけで、SF愛好家には大満足な1冊、となりそうなのですが、シリーズ全般にあるおちゃらけ能天気さがあまり見受けられないということで、シリーズファンにとってはあまり評判がよろしくないらしい。
じゃあ、面白くないのかと早合点してはいけません。
3作目あたりから小説家としてめきめき成長していったアダムスが、初めて見せる人間ドラマをご堪能いただけます。
賛否両論ある最終巻のラストですが、私は最終巻のラストに相応しいと思っています。

度々登場の夕刊の記事からですが、12月21日付けの「ピカソの2作品盗難」という大きめの記事の隣の隣に「万能細胞研究は2位」という小さな記事がありました。
米科学誌サイエンスが選ぶ今年の10大成果に、ヒトやマウスの皮膚細胞から作った万能細胞「人工多能性幹細胞(ips細胞)」が選ばれたという話題。
受精卵(胚)を壊してつくる胚性幹細胞(ES細胞)とは異なり、倫理面での問題が少なく「科学的にも政策的にもブレークスルー(大きな進展)だ。」と評価されたらしい。
ブレークスルー?
ブレークスルーだって、あははは。
こんな真面目な科学記事を読んで笑えるのもアダムスのおかげ。
ちなみに1位は個人によって全遺伝情報(ゲノム)の塩基配列がわずかに異なるという「ヒトの遺伝的多様性」の研究。
さらに、この記事の下には、UFO襲来対策に対する対応は「個人的に研究」という石破防衛大臣が記者会見で大真面目に語ったという話題。
「エリザベス女王英最高齢君主に」とか「米、出生率2.1」とか、
21日の夕刊は充実しているなぁ。

さようなら、いままで魚をありがとう (河出文庫)
ほとんど無害 (河出文庫)




最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
祝! 完読 (迷跡)
2007-12-24 13:43:01
年末一気に「銀河ヒッチハイク」完読ですね。
しかし、このシリーズ、ご紹介のドーキンスまで引用しているとは、英語圏ではけっこう人気があるんですねえ。

さて、私もUFOの国会問答は楽しんでました。麻生さんなんかしゃべりたくてうずうずしていたりして(確か閣僚時代になんか答えてたような)。
質問されれば何でも答えるという「議会」っておもしろいですよね。県議会だと、岩手県でグレート・サスケ前県議が質問していたらしいですよ。このプロレスラー、知る人ぞ知るUFOフリークなんですが。
返信する
やっと読みました (くろにゃんこ)
2007-12-26 00:13:33
やっと読んだというところでは、ウッドハウス「ウースター家の掟」もそうですね。
これは今年度中に記事が書けるかどうかあやしいです。
アダムスを読んだ後に、ウッドハウスを読むと、どれだけアダムスがウッドハウスに傾倒していたかがわかります。
年末にかけて、お笑いで攻めてるなあ。

グレートサスケって、UFOフリークだったんですか?
いやあ、知らなかったなぁ。
麻生さんの発言は、広大な宇宙に知的生命体が人間だけだというのは想像力がなさ過ぎるとか、そんな発言でしたよね。
あたりまえと言えばあたりまえですが、迷いなくはっきりと答えるところがらしくていいですね。
返信する
Unknown (mumble)
2007-12-26 13:25:03
ドーキンスともあろうものが、わざわざこんな本を書くことにアメリカが抱える不幸があるように思ったりします。利己的遺伝子に比べれば、得るところのない本でしたが、ただ一点、p535の【銀河ヒッチハイク・ガイドを読んだことのある人は、たとえば、「無限不可能ドライブ」のことを考えるかも知れない。現代物理学の奇妙なパラドックスに対する最良の方法は、おそらく笑うことなのだろう】。しかし、p539にあるように、【聴衆は笑ってくれず、あっけにとられて黙り込んでしまうのである】。アダムスもグールドも死んで、ドーキンスも悲しいでしょう。機材置き場に置いたガラクタをシャッフルしたら、ボーイング727が出来たなんて事ではないにしても、たまたま胴体の原型らしきものが出来たとして、その情報を保持しつつ次のステップに進む動的平衡状態にある生命にとって、この複雑な人間も出来ないわけではないでしょう。カンブリア紀の大進化の謎を解く一方で、過去はないという哲学(すなわち五分前に、我々の記憶とか化石とか、古文書とかいった過去の存在を証拠立てる全てのものとともに世界は五分前に生まれたという可能性を考える、もしかしたらバックアップされていたスペア地球とか)で思考遊戯するのもまた楽しい。本を読む楽しさのなかに、感想を述べあって何かを共有するってことがあると思うけれど、私のあまり共感されない感想とかにおつきあい頂いて、ありがとうの一年でした。名古屋水族館の前に浦島太郎のカラクリがありましたよ。ジャンプするシャチに感激したので、お正月は鴨川のシーワールドに行く予定です。都内ではプラネタリュウム「満天」にも行ってみようと思ってます。薄い岩波文庫とか持って。
返信する
けっこう笑えましたよね (くろにゃんこ)
2007-12-27 16:41:00
というのは、ドーキンス「神は妄想である」の前半部分のこと。
最近、「利己的な遺伝子」の30周年記念である<増補新装版> を途中まで読みましたが(ミームのあたりまで)、先に「神は妄想である」を読んでいたことが、軽いウォーミングアップになりました。
この本もいつ完読できるかわかりません。
バックアップされていたスペア地球っていうのは、なかなか楽しいSF的思いつきですね。
そういう思考ができることが凄いです。
共感されない感想というのは、私も同じです。
mumbleさまにおつきあいいただいて、私こそありがとうです。

じつは、うちの猫のみかんさんが、25日から入院中で、しかもその病院が川崎なんです。
胆管が詰まってしまって、大変な状態でしたが、無事昨日手術を終えました。
しばらくは入院で、お正月に帰ってこれるかどうかは状態次第なので、年末年始は病院通いになるでしょう。

ところで、シャチのジャンプって、迫力ありそうですね。
水族館ではありませんが、北海道の旭川動物園には一度行ってみたいです。
静岡県にある掛川花鳥園の痩せるふくろうポポちゃんにも会いたいなぁ。
返信する