くろにゃんこの読書日記

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新化 石黒達昌

2005年10月18日 | 国内文学 その他
SF、なんだよねぇ、帯にもそう書いてあるし。
確かにトンデモ本だと思うけど、う~ん。
何でしょうねぇ、SFとするには気が引けるなぁ。
思い切って純文学に入れちゃう?

「新化」は「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,」で絶滅したハネネズミなるネズミのその後の研究をレポートしたもので、
メインはハネネズミ再生プロジェクト。
ハネネズミとは、永遠に近い生命をもち、生殖=死にいたるという種で、そのタイミングがずれているために、次の世代は生まれえないのです。
絶滅種を再生するといっても、ジュラシックパークみたいな極めてSF的なものではなく、ハネネズミと類似性の高い遺伝子を持つエンジェルマウスを選択的に交配させ、ハネネズミに近い種を新たに作ろうというもの。

「平成3年~」に比べると、よりいっそう遺伝学、生物学の実践的な記述が多く、それなりに知識がれば、興味をそそるのではないかと思います。
私自身も、それほど多くない知識を総動員して、興奮しながら読みました。
自然科学ノンフェィクションを読むと
「母なる自然は、壮大な実験場である」というような記述を目にします。
人間だけが特別な生物なのではなく、動物から進化した動物に他ならないわけで、
母なる自然のなかにあるのです。
遺伝子の目的を、自分自身を継続していくことにあるとするならば、ハネネズミのような純系性や永遠性は、理にかなったものであるようにもみえます。
人は、時として永遠の命を望み、永遠の若さを求めます。
最近では、老化についても科学のメスが入り、遠い未来には、
不老長寿も達成するのかもしれません。
著者のあとがきの言葉である、「どこにいくのか」が「どこにいこうか」になる日も、
もうきているのかもしれないですね。
それも、母なる自然の実験のひとつではないかしら。
なんとなく、ストルガツキイ的ですね。

本書では「新化」のほかに「カミラ蜂と七十三日」が収録されています。
ある男性が、大変珍しい蜂につきまとわれるという物語で、
なぜか蜂のターゲットは彼だけなのです。
そんな彼と蜂を調べようとプロジェクトが組まれます。
「世にも奇妙な物語」のようなお話ですが、いろいろと示唆するものも多く、面白かったです。

もし、本書をSFという位置につけるなら、もっと注目されてもいいのではないかと思います。
まあ、日本SFの読者層にはあまりウケない内容かもしれないですけれど。

新化

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Tatsuaki Ishiguro)
2005-11-17 07:00:50
Thank you for giving a good comment to my novel. I live in Texas, USA now. My novel was translated in Russian two years ago and will be translated also in English maybe until 2007. Please get and read that English version of Hanenezumi. Thank you again for reading my novel.
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コメントありがとうございます (くろにゃんこ)
2005-11-17 09:31:55
自分のブログを開いて、正直固まってしまいました。

落ち着け~、落ち着け自分。



「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,」は、ブログにコメントを入れていただいている方の紹介で読んだのです。

「新化」も面白く読ませていただきました。

以前、新聞記事で読んだのですが、ロシアでは村上春樹「ノルウェーの森」が多く読まれているとありました。

日本文学が、古典だけでなく、世界に発信されるのは嬉しいことです。

2007年の英語版出版が楽しみですね。

これからも石黒達昌を読んでいこうと思ってますので、ますますのご活躍を期待しています。
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