至福の時間、それは大好きな世界に浸れるとき。
私は、ヴァンパイアものが好き。
キム・ニューマンの描く、もしドラキュラがヴァン・ヘルシングに滅ぼされていなかったら、という虚実ない交ぜの架空の世界では、吸血鬼が幅をきかせ、人間たちとある意味共存してるわけで、そんな世界を傍観する読者という立場は、このうえなく幸せなのです。
本書は「ドラキュラ紀元」「ドラキュラ戦記」に続くシリーズ第三作目。
西暦1959年。
ディオゲネスクラブのトップだったボウルガードは105歳。
転化していない彼は、死期が迫り、永遠の少女ジュヌビエーブとともにイタリアで暮らしている。
一方、同じ地でドラキュラはまたもや華々しい婚礼を挙げようとしている。
その相手は、モルダヴィアのアーサ・ヴァイダ公女。
古い血統の長生者(エルダー)同士の結婚だが、その真意に疑問を抱くディオゲネスクラブは、イタリアにボンド中佐を派遣する。
イタリアではエルダーばかり狙って滅ぼすという事件が何件か起こっており、ボウルガードに会いにきていたケイトは、その犯人<深紅の処刑人>を目撃してしまう。
「ドラキュラ崩御」というからには、ドラキュラは真の死を迎えるわけで、あの強大な力を持ったドラキュラがどうして真の死を迎えてしまったのか、<深紅の処刑人>と関係があるのだろうか、と本書はミステリーの要素が色濃い、というかミステリーです。
また、<深紅の処刑人>やボンド中佐でピンと来た人もいるかと思いますが、実在の人物に混じって、映画の登場人物も登場したり、白のヴェスパのような映画関係の小ネタも多く、007シリーズに詳しい方やフェデリコ・フェリーニが好きな方にとっては、
ああ、あれだな、というものがきっとあるはずです。
私自身はそれほど映画に詳しくないのでなんともいえませんが、
知らなくてもそれなりに楽めました。
ヴァンパイアものの魅力は、懐古趣味だったり、その絶対的な生命力にあるのですが、本書では、そこがヴァンパイアの弱点となっているんです。
新生者(ニューボーン:転化して年齢が100年満たないもの)は意思が強固でなければエルダーになることはできず、エルダーは長く生きすぎるために、世界のありようについていけない。
また、ストーカー「ドラキュラ」のように、あそこでヴァン・ヘルシングが成功していたら、と何度か繰り返されますが、それはもうひとつの架空の世界のことでもあり、
現実世界のこちら側でのことでもあるのです。
それでも大きな事件は変わりなく起こっているわけで、
キム・ニューマンが考える歴史観がちらりと伺えます。
私はこの辺を評価するのですが、本書はたんなるヴァンパイアホラー小説ではありませんので、ドラキュラが活躍したり、ドラマチックに退治されるようなものをお求めの方には不満が残ったのではないかと思います。
キム・ニューマンはジャック・ヨーヴィルという別名義で、「ドラッケンフェルズ」というジュヌビエーヴの物語を書いているようです。
しか~し、絶版。
アマゾンでのユーズド価格は2000円。
表紙はなんと山田章博なんだそうです。
地道に古本屋めぐりだね。
ドラキュラ崩御
ドラッケンフェルズ―ウォーハンマー・ノベル
私は、ヴァンパイアものが好き。
キム・ニューマンの描く、もしドラキュラがヴァン・ヘルシングに滅ぼされていなかったら、という虚実ない交ぜの架空の世界では、吸血鬼が幅をきかせ、人間たちとある意味共存してるわけで、そんな世界を傍観する読者という立場は、このうえなく幸せなのです。
本書は「ドラキュラ紀元」「ドラキュラ戦記」に続くシリーズ第三作目。
西暦1959年。
ディオゲネスクラブのトップだったボウルガードは105歳。
転化していない彼は、死期が迫り、永遠の少女ジュヌビエーブとともにイタリアで暮らしている。
一方、同じ地でドラキュラはまたもや華々しい婚礼を挙げようとしている。
その相手は、モルダヴィアのアーサ・ヴァイダ公女。
古い血統の長生者(エルダー)同士の結婚だが、その真意に疑問を抱くディオゲネスクラブは、イタリアにボンド中佐を派遣する。
イタリアではエルダーばかり狙って滅ぼすという事件が何件か起こっており、ボウルガードに会いにきていたケイトは、その犯人<深紅の処刑人>を目撃してしまう。
「ドラキュラ崩御」というからには、ドラキュラは真の死を迎えるわけで、あの強大な力を持ったドラキュラがどうして真の死を迎えてしまったのか、<深紅の処刑人>と関係があるのだろうか、と本書はミステリーの要素が色濃い、というかミステリーです。
また、<深紅の処刑人>やボンド中佐でピンと来た人もいるかと思いますが、実在の人物に混じって、映画の登場人物も登場したり、白のヴェスパのような映画関係の小ネタも多く、007シリーズに詳しい方やフェデリコ・フェリーニが好きな方にとっては、
ああ、あれだな、というものがきっとあるはずです。
私自身はそれほど映画に詳しくないのでなんともいえませんが、
知らなくてもそれなりに楽めました。
ヴァンパイアものの魅力は、懐古趣味だったり、その絶対的な生命力にあるのですが、本書では、そこがヴァンパイアの弱点となっているんです。
新生者(ニューボーン:転化して年齢が100年満たないもの)は意思が強固でなければエルダーになることはできず、エルダーは長く生きすぎるために、世界のありようについていけない。
また、ストーカー「ドラキュラ」のように、あそこでヴァン・ヘルシングが成功していたら、と何度か繰り返されますが、それはもうひとつの架空の世界のことでもあり、
現実世界のこちら側でのことでもあるのです。
それでも大きな事件は変わりなく起こっているわけで、
キム・ニューマンが考える歴史観がちらりと伺えます。
私はこの辺を評価するのですが、本書はたんなるヴァンパイアホラー小説ではありませんので、ドラキュラが活躍したり、ドラマチックに退治されるようなものをお求めの方には不満が残ったのではないかと思います。
キム・ニューマンはジャック・ヨーヴィルという別名義で、「ドラッケンフェルズ」というジュヌビエーヴの物語を書いているようです。
しか~し、絶版。
アマゾンでのユーズド価格は2000円。
表紙はなんと山田章博なんだそうです。
地道に古本屋めぐりだね。
ドラキュラ崩御
ドラッケンフェルズ―ウォーハンマー・ノベル
内容は『Drachenfels』『Genevieve Undead』『Beasts in Velvet』『Silver Nails』というジュヌビエーブが活躍する四篇を収めた本のようでぜひ読んでみたいのですが。まずは『ドラッケンフェルズ』の復刊からでしょうか。復刊ドットコムで投票してきます。
ジュヌビエーヴは魅力的なキャラですから、熱狂的なファンとかいないのかしら。
復刊ドットコムでは、交渉中のようですね。
頑張りを期待しましょう。
シノスケさまの「ドラッケンフェルズ」の感想も楽しみに待ってま~す!