ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

妊婦搬送:総合周産期センター、平均200件は受け入れ不能--昨年度、東京

2008年12月08日 | 地域周産期医療

妊婦の搬送受け入れ拒否の理由のほとんどは「NICUの満床」です。ですから、NICUを大幅に増床する必要があります。

しかし、国や都道府県などの政策でNICUをむりやり増床しようとしても、新生児科医やNICU専属の看護師をそこに配属することができなければ、増床分のNICUのベッドを稼働させることができません。

従って、早急に多くの新生児科医の養成に着手し、将来的に新生児科医の数を増やす必要があります。まずは、大学病院や総合周産期母子医療センターで、小児科専門医をめざす小児科後期研修医や周産期専門医(新生児)をめざす小児科専門医の数が大幅に増加するような何らかの施策が必要です。

ただし、小児科専門医資格の取得には医師になってから5年以上(初期研修2年、後期研修3年以上)かかりますし、周産期専門医(新生児)資格の取得には小児科専門医資格取得後に3年以上かかります。

****** 毎日新聞、東京、2008年12月6日

妊婦搬送:総合周産期センター、平均200件は受け入れ不能--昨年度

9割、NICU満床--極低出生体重児が増え

 ハイリスクの妊婦に対応する都内の「総合周産期母子医療センター」(9カ所)が昨年度、妊婦の搬送を受け入れられなかった事例は1センター平均約200件に上り、その9割近くはNICU(新生児集中治療管理室)の満床が理由だったことが、都の調査で明らかになった。晩婚・晩産化などからNICUが不可欠な未熟児が増えたうえ、他県からの入院児も多く、首都の周産期医療の厳しい現状が改めて浮き彫りになった形だ。

 都内で今年9~10月、脳内出血の症状を訴えた妊婦の搬送を総合周産期センターなどが受け入れられなかった問題が相次いだことを受け、都福祉保健局が各総合周産期センターの搬送受け入れ状況(昨年度実績、速報値)などを調べた。

 その結果、妊婦の搬送の要請は9センターで延べ計2784件(一つのケースで複数のセンターが要請を受けた重複分も含む)あり、うち受け入れられなかったケースが1789件(64%)を占めた。受け入れ不能だった理由の内訳を数字で示したのは7センター(1408件)で「NICU(およびMFICU=母体・胎児集中治療管理室)が満床だったため」が1192件(85%)を占めた。

 残りの2センターも東邦大学医療センター大森病院(204件、大田区)が「おおむねNICU満床による」、日本赤十字社医療センター(177件、渋谷区)も「病床(NICUおよびMFICU)が満床の場合がほとんど」とコメント。合わせると妊婦搬送を受け入れられなかった事例の9割近くが、NICU不足によるものだったとみられる。

 ある総合周産期センターの責任者は毎日新聞の取材に「子どもが生まれそうな妊婦の搬送要請があった場合、母親のベッドは空いていてもNICUに空きがなければ普通は受け入れない。無理して受け入れても未熟児が生まれ、万一亡くなるような事態になれば、遺族から『なぜ受け入れたんだ』と訴えられることもありうる。だったら最初から受け入れない方がいい、ということになってしまう」と打ち明ける。

(以下略)