地方の医師不足を解消するために、拠点病院から地域の病院・診療所に医師を派遣する案が、政府・与党で検討されているようです。
しかし、国公立の地域拠点病院の多くは、従来より、医師供給源として大学の医局人事に全面的に依存してきました。
従って、地域拠点病院こそ、大学医局の医師派遣機能低下の影響を一番もろに受けていて、極端な医師不足に陥り、今後の医師確保には非常に頭を悩ませている病院も少なくないと思われます。
地域の拠点病院で、他の医療機関に医師を派遣するだけの人的余裕のある病院が、果たして、どれくらい存在するのでしょうか?
****** 読売新聞、2007年5月10日
拠点病院から医師派遣、地方での不足解消…政府・与党方針
政府・与党は9日、地方の医師不足を解消するため、医師が集まる国公立病院など地域の拠点となっている病院から、半年~1年程度の期間を区切り、地方の病院・診療所へ医師を派遣する新たな制度を整備する方針を固めた。
医師派遣の主体を都道府県や病院関係者らで作る「医療対策協議会」とし、復帰後に医師が人事で不利益を受けない仕組みを担保するほか、医師を放出する拠点病院への補助金制度も導入する。厚生労働、文部科学など関係閣僚が参加する政府・与党協議会で来週から詳細な検討に入り、今年度中の制度スタートを目指す。
医師派遣は従来、大学病院の教授が若手の研修医の人事権を握り、派遣先を決定してきた。だが、2004年度から医師臨床研修制度が義務化されると、若手医師らは上下関係が厳しい大学病院を敬遠して待遇のいい国公立病院などに殺到し、大学病院中心の医師派遣は事実上、崩壊した。
厚労省によると、2004年に13都道府県を対象に行った調査では、都道府県庁所在地と周辺地域で人口10万人当たりの医師数が3倍以上開いていた。大学病院から地方への医師派遣が途絶え、格差はより深刻化したという。
政府・与党は医師の偏在・不足に対応するため、医師派遣の主体を、大学病院から、医師の人気が高い拠点病院と都道府県へと移して派遣制度を再構築することにした。
(以下略)
(読売新聞、2007年5月10日)