紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

摩訶不思議なポップ・ジャズ…デイヴ・パイク・セット~ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

2007-10-13 23:49:37 | ジャズ・ビッグバンド・その他
今日、紹介するのは、ジャズ?フュージョン?ワールド・ミュージック?一体これは…何なのだろう?
演奏しているリーダーは、以前「ビル・エヴァンス」がサイドメンとして参加した事がある、ゴージャースなアルバム、「パイク・スピーク」で紹介した事がある、革新的なヴァイブ奏者「デイヴ・パイク」です。

まぁ、楽器編成の妙等で摩訶不思議音楽になっているだけで、実際にはかなり正統的なジャジーな曲(演奏)も有ります。
演奏している、ミュージシャンは、「パイク」の他は、ドイツ人二人とオーストリア人が一人のカルテットで、やはりユーロ・ジャズの香りは漂ってます。

アルバムタイトル…ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

パーソネル…リーダー;デイヴ・パイク(vib、tambourine)
      フォルカー・クルーゲル(g、sitar)
      ハンス・レッテンバッハー(b)
      ペーター・バウマイスター(ds)

曲目…1.アイム・オン・マイ・ウェイ、2.リガーズ・フロム・フレディ・ホロヴィッツ、3.サムホワット・サムホエア・サムハウ、4.ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ、5.マザー・ピープル、6.マタール、7.ヴィアン=デ、8.チーミング・アップ、9.ウォーキン・ダウン・ザ・ハイウェイ・イン・ア・レッド・ロウ・エッグ

1969年1月21日 ヴィリンゲン/黒い森 MPS-トンスタジオにて録音

原盤…MPS 発売…ポリグラム
CD番号…POCJ-2540

演奏について…まんまポップ・ミュージックにノリでスタート・ダッシュに使用したオープニングの「アイム・オン~」
ポップ・グループがそのまま歌詞をつければ歌える程、メロディアスで親しみ易い曲(メロディ)が印象的なトラックです。
「パイク」もうなり声は上げてはいるが、敲き捲る感じではなく、とても楽しみながら、演奏をしている様です。
バックの3人は、この時代らしい(60年代後期~70年代前半)の、とてもサイケデリックな雰囲気を活かした演奏です。

2曲目「リガーズ・フロム~」は、「ホロヴィッツ」の名が記されているので、一瞬は名ピアニストの?と思うが、「パイク」が飼っているサルの名前との事。
ここでの主役は、誰が何と言おうとシタールを弾く「クルーゲル」で、ラテン調のリズムに乗って、シタールを美しく紡いで行く。
それに合わせて、いや、より一層飛翔するのが、リーダー「パイク」で、この異国情緒溢れる編成に、バーサクしたのか、素晴らしいノリでヴァイブの音&アドリブをこれでもか?と飛び回らせる。
中途から「クルーゲル」はアコースティック・ギターに持ち替えて、フラメンコさながら、運指の運びも絶好調で、サウンドのパワーは頂点に達する。
このアルバム随一の聴き物トラックでしょう。

3曲目「サムホワット~」は、ギター「クルーゲル」をメインにした、かなり正統的でジャジーなバラッド曲。
この曲で、このアルバムはジャズ・アルバムだと言う事を認識出来ます。
それにしても「クルーゲル」の癒しのギター…良いねぇ。
そのギターに張り付く様に音を合わせて、伴奏する「レッテンバッハー」のベースも効果覿面です。
この曲での4人(カルテット)のまとまりは、正しく「デイヴ・パイク・セット」と言う冠に相応しい、統制された佳演です。

4曲目タイトル曲の「ノイジー・サイレンス~」…良いねぇ。
スタートの序奏は、ハードボイルド感たっぷりのテーマで、一聴してぞくぞく感の期待が高まります。
すぐさまアドリブをかます「クルーゲル」がソロを終わらん内に、ジャズ・ロック調に変調して、演奏が疾走をし始める。
その名の通り、静かな曲調から、騒ぐ様にノリノリのメロディへの転調、変速のこの部分が一つの聴き所です。
「パイク」はヴァイブをうなり声を上げながら、特に急楽章で、これみよがしに敲き捲るが、それをサポートするベース「レッテンバッハー」が、渋くガチッとした演奏をするので、演奏がバッチリ決まっています。
「レッテンバッハー」は、中途では中々すごテクのベース・ソロを決めたりして、常時この曲の演奏の大黒柱になっている。
曲の起承転結もシッカリとなされており、2曲目と双璧のベスト・トラックです。

6曲目「マタール」…「クルーゲル」のシタールを全面に押出した、ディス・イズ・インディアと言いたいぐらいに、カレー臭(加齢じゃないよ!)がぷんぷんとする、エキゾチックな1曲。
正直、私は嫌いじゃないが、この曲をジャズと見て(聴いて)くれる人の方が遥かに少ないだろうな。
リズムは中途から、8ビートのロック・リズムになって、この曲がインディアン・ポップスへと変貌を遂げる。

7曲目「ヴィアン=デ」…静けさと気だるさが魅力の、スロー・チューンで、「パイク」「クルーゲル」「レッテンバッハー」の3人の紡ぐ、優しいアドリブ合戦がとても心地良い演奏です。
「バウマイスター」は、自らの存在が無いくらいに、地味にシンバル・ワーク一色で伴奏(演奏)しているのが、渋カッコイイです。

8曲目「チーミング・アップ」…急速調の曲で、ここでは各人が自分達のテクニックを思う存分見せびらかす。
先日、紹介した「ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」的な音のマトリックスを感じさせる演奏です。
このアルバムの中では、異色の前衛ジャズを演奏しています。
やはり「パイク」…一筋縄では絶対に行かないミュージシャンです。

ラスト9曲目「ウォーキン・ダウン~」も8曲目に近いコンセプトですが、最後の〆と言う事もあって、「パイク」が思い切りバウトしていて、「クルーゲル」のギターは「エレクトリック・マイルス」を連想させる、アバンギャルドな演奏です。
この終盤のエンディング2曲は、このコンボの硬派な部分を見せつけますね。

これぞ奇跡のライヴ演奏…エリック・アレキサンダー・カルテット~ライヴ・アット・ザ・キーノート

2007-10-12 21:53:36 | ジャズ・テナー・サックス
このブログによくコメントを下さる、「ナオさん」がピアニスト、「ハロルド・メイバーン」の最高傑作で、(リーダー;「エリック・アレキサンダー」も含めて)素晴らしい出来すぎて、またライヴ盤と言う事もあって、聴いていて疲れるぐらいの名盤との事で、興味が湧きましたので、購入致しました。

ナオさんのコメント通り、「メイバーン」、「アレキサンダー」のみならず、ドラムスの「ファンズワース」、ベースの「リーブス」とも、生涯最高の出来なのでは?と言う程の名演をしており、正しく4人のミュージシャンが、最高のパフォーマンスを見せた、「奇跡のライヴ演奏」だと感銘を受けた次第です。

是非、皆様に紹介したいと思い、今日はこのアルバムをチョイスさせて頂きます。

さて、今日はタイトルの「奇跡のライヴ演奏」と言う概要について、少しだけ述べさせて下さい。

「名演奏」…を生む要因には、大まかに言って二種類の演奏に分けられると思います。

一つは、カリスマ・ミュージシャン(スーパー・スター)が、強烈に全員を鼓舞して、牽引して行くタイプの名演、(無論牽引される側の演奏家にも、確かな技量と精神を持っているのは事実ですが)その演奏タイプの代表例は、「ジョン・コルトレーン・カルテット」等は最たる代表例でしょう。

一方、もう一つの名演のタイプは、コンボ(楽団)が一体となって、演奏の主役は全員にあって、そのコンボの各人がそれぞれベストなパフォーマンスを形成する事によって、演奏自体が最高レベルの水準に達した場合です。

申すまでもなく、この「アレキサンダー・カルテット」のライヴ・パフォーマンスは後者に属する、超名演です。
主役は全員、各人のベスト・パフォーマンスの集約演奏がこのライヴ盤に込められているんです。
心して聴いて下さい。

アルバムタイトル…ライヴ・アット・ザ・キーノート

パーソネル…リーダー;エリック・アレキサンダー(ts)
      ハロルド・メイバーン(p)
      ナット・リーブス(b)
      ジョー・ファーンズワース(ds)

曲目…1.ビー・ハイブ、2.メイビー・セプテンバー、3.イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト、4.エドワード・リー、5.バークリー・スクエアのナイチンゲール、6.スタンズ・シャッフル、7.アローン・トゥゲザー※
  ※未発表ボーナス・トラック

1999年3月4、5日 東京、原宿ジャズ・クラブ「KEYNOTE」にてライヴ録音

演奏について…まず、オープニングの1曲目「ビー・ハイブ」では、「アレキサンダー」の伸びやかなテナーに合わせて、ピアノ「メイバーン」がまるで陰の様に、「アレキサンダー」の演奏に重ねるように音を合わせる。
そして、この曲の主役は何と言ってもドラムス「ファーンズワース」である。
高速のリズムで強烈に皆をドライヴィングしており、全員が一斉に「ヤル気」モードに突入している。
ここからは「アレキサンダー」もエンジン全開で、激しくブロウする。
「メイバーン」の激しいくらいパワフルなブロック・コードの伴奏も必聴に値し、アドリブ・パートでは、シングルトーンを雨あられの様に、音として叩き込む。
己を主張はしないが、ベース「リーブス」のタイトでぐんぐん進むベース・ワークもすごいんです。
この3人の渾然一体の演奏、一種の異種楽器バトルの激しい燃焼(炎)に、聴いていて火傷しそうになります。
そして、最後は「ファーンズワース」の超ド級のドラム・ソロで、必殺のKO負けを喰らう。
もんどりうって聴いてくれ!!

2曲目「メイビー・セプテンバー」…は「アレクサンダー」が静寂のバラッドを吹き上げる。
ここでのこのカルテットの演奏は、まるで「マイルス・クインテット・マラソン・セッション」の1アルバムの様に、青白く燃えている気品高い演奏です。
「アレキサンダー」のテナーと絡み合う「メイバーン」の伴奏の気高さとセンスの良さも魅力充分。
中間からは、「アレキサンダー」は、音を抑制している物の、「コルトレーン」の「シーツ・オブ・サウンド」を連想させる、ノン・ブレス奏法が聴き所でしょう。
「マイルス」と「コルトレーン」のバラード・アルバムの良いとこ取りのベスト・トラックです。
終盤の「メイバーン」のセンチメンタルな、哀愁一杯のアドリブ・ソロ…良いですねぇ。最高ですねぇ。
聴いていて、本当にうっとりしちゃいます。

3曲目「イン・ザ~」全員が高速で突き進むトラックですが、バリバリ吹き捲る「アレキサンダー」、ガンガンとブロックコードで高速に合わす「メイバーン」、そして皆を煽る「ファーンズワース」も然ることながら、この高速にピタッとついて、タイトにベースを引き続ける「リーブス」が影のMVP級の活躍でしょう。
そして終盤での「メイバーン」の超高速ブロック・コードと「アレキサンダー」のテナー、「アート・ブレイキー」か?はたまた「フィリー・ジョー」か?と思わせる程の、超絶技巧で敲き捲る、「ファーズワース」のバトルロワイヤル的な4人の掛け合いが最高の聴き所です。

4曲目「エドワード・リー」…マイナー・チューン大好きな私には、モロにストライクゾーンに来た佳曲ストレートです。
ここで「メイバーン」は、何と「マイ・フェイバリット・シングス」を崩したアドリブ・ソロを含めて、好フレーズのオンパレード…噴水から出る水の如く、弾き捲ります。
この演奏の感じ…「コルトレーン・カルテット」時の「マッコイ」に雰囲気が良く似てるなぁ。
ただ、「マッコイ」の方が演奏、音ともやはり硬派だ。
「メイバーン」は、元来ラテン、スタンダード好きと言う事もあり、演奏に遊びや洒落が「マッコイ」よりは有るので、ここでの演奏に寛ぎが感じられる。
後半では「アレキサンダー」が激しくブロウし、「メイバーン」がそれを上手にサポートしつつ受け流す…。
「リーブス」のタイトなベース・リズムがサビになっているし、「ファーンズワース」はここでも、決め手一発をぶちかましてくれます。
しかし4人が対等に渡り合った素晴らしいトラックですね。

5曲目「バークリーズ~」…「コルトレーン&エリントン」の「イン・ア・センチメンタル・ムード」を彷彿させる、煌きのピアノ・メロディ・フレーズの序奏を経て、「アレキサンダー」が伸びやかに、ストレートにテナーを吹き通す。
しかしながら、この「メイバーン」のピアノ・アドリブ…いや、アドリブと言うよりも正しくカデンツァだ。
このカデンツァ…テクニックと情感のバランスが極めて高いステージで融合しており、本当に魅力に溢れていて、心を打ちますね。
最後のピアノとテナーのデュオの様な演奏に何を見るでしょう?

6曲目…「スタンダーズ~」は、エンディングを飾るに相応しいR&B曲で、聴いているとファイトが湧いてくる。
最後らしく、演奏者皆も慣れたと言うか、演奏にかなり余裕が感じられて、「アレキサンダー」は伸び伸びとテナーを鳴らし、「メイバーン」は演奏から笑顔が絶えないのが分かるくらい、跳ねた演奏に聴こえる。
聴衆もノリノリになって、4人が形成する宴が、ピークに達しているのが非常に良く分かります。
やっぱり、アメリカ人ってブルース大好きなんだよねぇ。
終盤の「メイバーン」のブロック・コード&ブルース・シングル・トーンの弾き捲り…見事です。最高です。聴衆もノリノリです。とにかくすごいの一言です。
「リーブス」のソロも渋くて素敵だし、「ファーンズワース」も決めてくれます。
最後のメンバー紹介も誠に乙だね。

ボーナス・トラックの「アローン・トゥゲザー」…「ハロルド・メイバーン・トリオ」の、素晴らしい実力が堪能できます。
「リーブス」の朴訥としたソロ・ワークに、嘗ての名人「ポール・チェンバース」の面影が脳裏を過ぎる。
この演奏の主役は、間違いなく「リーブス」ですよ。
相方「メイバーン」は、転がす様に素敵系のフレーズ連発で、ピアノ・センスを余すことなく放出します。
しかし、気の良い親父だ!絶対に出し惜しみなんかしないもんなぁ。

奇跡のライヴ演奏…本当に実際に聴いて見たかったなぁ。(合掌)

このアルバムは良いぜ!コールマン・ホーキンス&クラーク・テリー~バック・イン・ビーンズ・バック

2007-10-11 23:41:37 | ジャズ・テナー・サックス
テナー・サックスの大巨人「コールマン・ホーキンス」と、技巧に走らずストレートに表現する、トランペット職人「クラーク・テリー」の共演アルバムで有り、且つ名ピアニスト「トミー・フラナガン」が抜群の出来でフロント二人をサポートする、知る日人ぞ知る隠れ名盤が今日紹介する、このアルバムです。

アルバムタイトル…バック・イン・ビーンズ・バック

パーソネル…リーダー;コールマン・ホーキンス(ts) 
      クラーク・テリー(tp)
      トミー・フラナガン(p)
      メジャー・ホリー(b)
      デイヴ・ベイリー(ds)

曲目…1.テューン・フォー・ザ・テューター、2.ドント・ウォーリー・アバウト・ミー、3.ジャスト・スクイーズ・ミー、4.フーディン・ザ・ビーン、5.ミシェリー、6.スクイーズ・ミー

1962年12月10日

原盤…米CBS  発売…ソニー・ミュージック・エンタテインメント
CD番号…SRCS-9190

演奏について…まず、オープニング曲「テューン~」は、メロディー・ラインが心を打つマイナー・チューンで、「ホーキンス」と「テリー」のユニゾンから、このベテラン二人の描く、ミュージック・ワールドへと直行します。
ソロでの「ホーキンス」…渋カッコイイ余裕のアドリブが、男の哀愁を醸し出していて良いですよ。
続く「テリー」のアドリブは前述通り、かなりストレートな表現で、直球をど真ん中に投げ込んでくるんですが、この潔さも素敵です。
そして何より、この後の「トミ・フラ」のピアノ・アドリブの旋律が、繊細で素敵なんですよ。
「ホリー」の渋いベース・ソロ、「ベイリー」の抑制したシンバルもバックらしいアシストで、曲の品的ランクを上げています。

2曲目「ドント・ウォリー~」…は、「テリー」ワン・ホーンの独壇場で、テーマを吹く「テリー」のトランペット音の高貴さがとにかく身に沁みます。
ブリリアント過ぎず、しかしウォームでもなく、音の輪郭が尖ってはいないが、割とハッキリしていて、そして相変わらず、かわすのではなく、ストレート勝負なんですよ。
加齢した「クリフォード・ブラウン」みたいと言えば良いのでしょうか。

3曲目「ジャスト・スクイーズ・ミー」は、有名な「エリントン」ナンバーですが、とても遊び心が満ち溢れた演奏になっています。
ベースに合わせて歌う「メジャー・ホリー」のハミングが聴けるし、「トミ・フラ」の伴奏も、全面に渡って、とにかくお洒落なんですね。
煤けた音色で、貫禄吹きをする「ホーキンス」…良い親父なんでしょうね。

4曲目「フーディン~」は、スィンギーな「カウント・ベイシー」ナンバーで、気持ち良く吹く「テリー」、「ホーキンス」のフロント二人に、粘着的にガッチリとマン・マークでブロック・コード伴奏を終始弾き続ける「フラナガン」が、MVP級の大活躍です。
中途のアドリブ・ソロの出来栄えも秀逸で、正に「トミ・フラ」の真骨頂を味わえるトラックです。

5曲目「ミシェリー」は、短曲だが素晴らしい出来のバラード演奏です。
ロマンティックでセンチメンタルな「フラナガン」のピアノに導かれて、「ホーキンス」が、ここでは「泣き」のテナーを紡ぎます。
でも「泣き」と言っても、涙は決して見せずに、心で泣いているんです。
悲しみか、辛さをジッっと噛締めて…。
美しい男泣きです。

6曲目「スクイーズ・ミー」…50年代「バード」が吹き捲っていた時の様な、アドリブ奏者を全面に押出した、ライトなブルーズ・ナンバーで、「テリー」がハイ・ノートで積極的に、吹き切ります。
「トミ・フラ」の品格の有る、ブルーズ・ピアノ・ソロの気だるい感じもgoodです。
最後は御大「ホーキンス」が、訥々と音を吹いて曲を〆てくれます。

この時代、「コルトレーン」や「ドルフィー」が大暴れ?していたのに、こう言う前世代的な正統ジャズを演っているのが、ベテラン達の有る意味「すごさ」だと思います。
決して「時代錯誤」では無いですね。

カム・バックしたビ・バップ期の名ピアニスト…ドド・ママローサ~ドドズ・バック!

2007-10-10 21:59:33 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
本来ならば、「バド・パウエル」や「アル・ヘイグ」等と並び称される程の名ピアニストが、今日紹介する「ドド・ママローサ」なので有る。
しかしながら、「ママローサ」は、非常に過小評価されていて、この録音の後の消息も不明との事。
全盛期には、「チャーリー・パーカー」との共演も多数有り、加えてこの素晴らしい演奏(アルバム)を残したのに、評価されてないなんて…「信じられな~い!」

このアルバムを聴いて見ると、ピアノ・トリオ・バップの、極みの様な演奏が目白押しで、また、「ママローサ」の演奏テクニックも、実に素晴らしいんです。
機会があったら、是非聴く事、そして手に入れる事をお薦めします。

アルバムタイトル…ドドズ・バック!

パーソネル…リーダー;ドド・ママローサ(p)
      リチャード・エヴァンス(b)
      マーシャル・トンプソン(ds)

曲目…1.メロー・ムード、2.コテージ・フォー・セール、3.エイプリル・プレイド・ザ・フィドル、4.エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー、5.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート、6.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー?、7.アイ・ソート・アバウト・ユー、8.ミー・アンド・マイ・シャドウ、9.トレイシーズ・ブルース、10.ユー・コール・イット・マッドネス

1961年5月9日、10日

原盤…ARGOー4012  発売…ビクター・エンターテインメント
CD番号…MVCR-20057

演奏について…各曲の詳細を書いたのに、最後に今日も投稿ミスをしてしまった。
全部、記事が消失です。
しかし最近、体調が悪いのかなぁ?
こんな野暮な事が続くなんて…。
ですから、各曲の詳細を書くのは今回は諦めます。

「ドド・ママローサ」…「バド・パウエル」程、ぶっ飛びの天才では無いが、どちらかと言えば「レッド・ガーランド」に近い、ジャズ・ピアニストらしいミュージシャンなんですが、シングル・トーンとブロック・コードの配分、バランスがとても良いのが特徴です。

また、バラード演奏における表現が、甘すぎないで、「ビル・エヴァンス」の様な冷静さと知的さを見せ付ける部分が所々有るんです。

さて、全曲の解説はもう出来ないので、特に聴いて欲しい曲を記載しておきます。

まず、4曲目「エヴリシング~」の、スローな4ビートバラッドでの、甘過ぎない、しかしクール過ぎない、中庸のウェル・バランスのピアノ演奏…良いですよ。
こう言う演奏って、実は真の実力者しか、出来ない気がするんですよ。
「ドドママ」のバラードパフォーマンスの素晴らしさを堪能して下さい。

9曲目「トレイシーズ~」では、良い意味でも、或いは悪い意味でも?毒気が薄らいだ?「バド・パウエル」の全盛期の様な演奏がなされる。
「ドドママ」の演奏するピアノのタッチやアドリブのフレーズが、「パウエル」に良く似た感じなんですが、「バド」の様にぶっ飛んではいないんです。
また、バックの二人、ベース「エヴァンス」とドラムス「トンプソン」のアドリブ・パートも中々センスがあって、アルバム中での「トリオ演奏」としての完成度は、このトラックが一番高いと思います。

7曲目「アイ・ソート~」も4曲目と同様に、とても高貴な、甘ったるくはないけど、思索過ぎてもいない、絶妙なバランスの感じのピアノ演奏が聴けます。

2曲目「コテージ~」…「ドドママ」の人間的な寛大さ、懐の深さが垣間見れる、寛ぎのブルーズ・バラッド。
メロディの崩し方や間の置き方等、つまりアドリブのセンスが抜群でして、何か聴いているとジャズ・ピアノ演奏の規範って感じで、納得する演奏なんです。

5曲目「オン・グリーン~」の演奏は、「ガーランド」っぽい感じのノリが、聴いていて気持ちいい。
「ドドママ」が、ブロック・コードをガンガン弾いて、対抗する「エヴァンス」のベースもかなり高揚して、二人がバウトしております。
おかずを付けて、ラテン・リズムを刻む「トンプソン」の演奏も○です。


これ以外の曲も、goodな演奏が多いので、絶対に聴いて(買って)損はしないです。

TIMEレーベルの名盤…ケニー・ドーハム~ショウボート

2007-10-09 23:23:09 | ジャズ・トランペット
昨日は、入試で言えば「東大理Ⅲ」の様なアルバム紹介(解説)でしたので、今日は理屈抜きで楽しめるアルバムにしましょう。

TIMEと言うアルバムに残された、リリカルで歌心に富む名盤、「ケニー・ドーハム」リーダーで、ミュージカル作品をジャズ化した「ショウボート」です。

アルバムタイトル…ショウボート

パーソネル…リーダー;ケニー・ドーハム(tp)
      ケニー・ドリュー(p)
      ジミー・ヒース(ts)
      ジミー・ギャリソン(b)
      アート・テイラー(ds)

曲目…1.ホワイ・ドゥ・ラヴ・ユー?、2.ノーバディ・エルス・バット・ミー、3.キャント・ヘルプ・ラヴィン・ダット・マン、4.メイク・ビリーブ、5.オール・マン・リヴァー、6.ビル

1960年12月9日 録音

原盤…TIME  発売…センチュリー・レコード 
CD番号…COCC-00370

演奏について…オープニング曲「ホワイ~」は、楽しげなテーマに乗って、いかにもミュージカルの始まりらしい、明るい感じのスターティング演奏です。
「ドーハム」は、幾分抑え目の音量で、知情意のバランスの取れたアドリブを吹きます。
「ヒース」も、彼としては押さえ気味のヴォリュームで、バランス感覚充分なソロを吹いて、「ドーハム」に続きます。
「ドリュー」は、正しく「ドリュー」らしい、煌びやかなソロ演奏で、キラキラと輝いていて、素敵の一言ですね。
バックの二人「ギャリソン」「テイラー」は、ほんの少し、自己主張(ソロ)を取る時も有りますが、基本的にはリズム、サイドメンに徹しているのが、良いですね。

2曲目「ノーバディ~」は、アルバム中で一番ブルージーなナンバーです。
渋く抑えた「ドーハム」と、派手目に吹く「ヒース」の対比が聴き物です。
次いで「ドリュー」が、シングルトーン中心の、粒立ちの良いタッチで、煌くソロを弾く。
最後は、もう一回「ドーハム」と「ヒース」の絡みとユニゾンで、無難に終わりますね。
とても安心感の有る編曲です。

3曲目「キャント~」は、「ドリュー」の情感に満ちたピアノ伴奏に導かれて、「ドーハム」が繊細でリリカルな持ち味を見事に活かしたラヴ・バラッドを演る。
その、赤銅色の様な(地味且つ明るめ)音色で「ドーハム」が終始、優しく吹き切ります。
ブラッシュでアクセントをつけながら、さりげなく皆を推進していくドラムス「テイラー」が、実は影の主役です。
勿論、「ドリュー」の伴奏も最後までロマンティックで、良い味を出しますよ。
この演奏が、アルバム中でのベスト・トラックじゃないかなぁ。

4曲目「メイク~」では「ドーハム」はいつも通り肩の力を抜いて、淡々と吹いているんですが、「ヒース」は、かなり力演しています。
中間では、「ドーハム」と「テイラー」の掛け合い(丁々発止)が、寛ぎと余裕を醸し出して、演奏場の雰囲気を和らげてくれてます。

5曲目「オール~」は、フロント二人のユニゾン・テーマが、エキゾチックな郷愁を漂わせる。
その後、メジャー・コードに転調して、この二人を中心に、皆がずんずんとスウィングし始める。
特にドライヴィング力、抜群なのは、ベースの「ギャリソン」で、彼に引っ張られて、「テイラー」「ドリュー」も高揚して来るんです。
最後は全員で、きれいにフィニッシュして、サンクスです。

6曲目「ビル」…は、「ヒース」が太い音の豪快なテナーをかますと、「ドーハム」は余裕で受け流して、ベテランの懐の深さを見せ付ける。
うぅーん、流石ベテランの味が、ジワっと出てますね。
玄人受けする演奏がたまらんなぁ。
「ドリュー」のここでのソロは、かなりスウィングしていて、いつもとチト違う印象を持ちます。
エンディングは、二人とも力を入れた、パワー系のソロを吹いて、チラっと男の色香を見せてくれちゃいます。

昨日と打って変った、緊張感とは無縁のこう言うジャズも、当然有りでしょう。

長文解説を一瞬で消失!Ah下手こいた…エリック・ドルフィー~アウト・トゥ・ランチ

2007-10-08 23:44:35 | エリック・ドルフィー
「エリック・ドルフィー」のアウト・トゥ・ランチ…今迄、私が解説&紹介して来た、メロディアスなテーマのジャズ・アルバムとは一線を画しています。
一言で言うと、とても難解なアルバムなんですが、実は先ほど迄、この難解な作品の超大作の解説文を書いていたのですが、記事投稿の転送時にミスをして、(Ah-下手こいた)長文が全部パーになったよ!(怒)(大激怒)

少しでも分かり易く言うと、ジャズ版「2001年宇宙の旅」って言う感じです。

映画監督の大巨匠、「スタンリー・キューブリック」の最高傑作であり、難解映画の最高峰が「2001年~」ですが、この「ドルフィー」のアルバムもジャズ界の「2001年~」と言っても良いかもしれません。

但し、それでは一般の(主に初心者的な)ジャズ・ファンの方の(購入)指標になりませんので、少しでも分かり易い説明は無いものか?と思案した所、原盤(LP)の裏解説にヒントが若干載っていましたので、それを少し拝借させて頂き、私の稚拙な解説をプラスして行きたいと思います。

アルバムタイトル…アウト・トゥ・ランチ

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(as、fl、b-cl)
      フレディ・ハバード(tp)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.ハット・アンド・ベアード、2.サムシング・スイート・サムシング、3.ガゼロニ、4.アウト・トゥ・ランチ、5.ストレート・アップ・アンド・ダウン

1964年2月25日録音

原盤…BLUE NOTE 84163  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-5211

演奏について…LP原盤のA.B.スペルマン氏の解説を参考にしますと、タイトル曲「アウト・トゥ・ランチ」は、酔っ払いが千鳥足であっちへふらふら、こっちへよろよろと、歩く様をテーマにして表現しているらしい。
特にリズム・セクションには、テンポの指示等も皆無にして、各人自由に演って良いとの「ドルフィー」の提案に、取分け「トニー・ウィリアムス」は、自由に羽が生えた様に好き勝手にドラムを敲き捲っているとの事だが。

しかし、私の解釈で言えば、このアルバム自身の最大の肝は、ずばり「ボビー・ハッチャーソン」に有ると言いたい。
「ハバード」は、この曲でもかなりフリーにブロウしているが、やはりメロディアスなフレーをそこここで、吹いているのが分かる演奏です。
「デイヴィス」は骨太で硬派なベーシストらしく、自由であっても決して適当には演っていない。
しっかりと廻りに協調した目配りされたベース・ラインを刻んでいる。
「ウィリアムス」の演奏も良く聴くと、実はそれ程ぶっ飛んではいない。
やはりリズム・セクションを司っているミュージシャンは、自己犠牲できる人がやれるミュージック・パートだと思うので、他人に合わせる性格が出ております。

その中で、この異空間を幻想的に見事に演出しているのが、空間を飛び廻る「ハッチャーソン」のヴァイブであり、又、自由にバスクラリネットで、思い切りアドリブを吹き捲る、リーダーの「ドルフィー」なのです。
千鳥足の酔っ払いが行き着く先は…寝入ってしまって夢の世界…多分それが宇宙旅行なのだろう。

1曲目「ハット・アンド~」…は「ドルフィー」が敬愛する「モンク」の作品をイメージしながら書いた曲との事です。
最初の13小節はテーマに副って楽譜に忠実に演奏し、その後は自由気ままに演るらしいのですが…。
リズムを変調させてはいるが、「トニー」「デイヴィス」共に、バックらしいリズムは確実に刻んでいる。
「トニー」は超絶テクで、時たま遊び心で「おかず」を沢山出してくるが、「デイヴィス」は真面目でガンコ者そのものの演奏です。
ボウイングもちゃんと4ビートで、他のメンバーをドライヴしてますからね。
「ハバード」は、こうして聴くと、やはり生粋のメロディストですね。
半音を吹いていながらも、適当じゃないもんね。
その中で、バスクラ「ドルフィー」とヴァイブ「ハッチャーソン」は、思う存分フリーキーに演奏していて痛快です。

2曲目「サムシング・スイート~」は、頭の数小節だけ、「ドルフィー」と「デイヴィス」が掛け合いをしてテーマを示した後は、このリリカルなテーマを活かして全員が演奏しているとの事。
「デイヴィス」が渋くリズムを刻んで、「ドルフィー」はここではナイーブなテーマを活かしたバスクラで応戦する。
「ハバード」…すごく優しいトランペットの音色で、この幻想的な世界を見事に色付けしてくれます。
静寂を表現した「デイヴィス」のボウイング演奏…これは最高ですね。
このアルバム随一の水墨画的な「わびさび」空間が正に粋な演奏だね。
アルバムの中で一押しのトラックであり、一番聴き易い曲だと思います。

3曲目「ガゼロニ」…これは解説が載っていない。
しかし、「ガゼロニ」(ガッゼローニ)は、クラシック界随一のフルート奏者の名前であり、もしかすると「ドルフィー」がここでは、この「ガゼロニ」をリスペクトして曲名を付けたか?どうか…定かじゃないが、とにかくフルートを演奏しているのは事実だ。
「トニー」「デイヴィス」のリズム・セクションの間を「ハッチャーソン」のヴァイブが、縦横無尽に行き来する。
この3人の演奏的な対話は何なのか?
そして又、「ドルフィー」のフルートが、幻想的な宇宙空間を彷徨い歩くんです。

5曲目「ストレート~」も、タイトル曲と同コンセプトの演奏です。
この曲の詳細な解説はLPにも出ていませんが、決して聴き難い演奏では無く、いや良く聴くと聴き易いかもしれません。
「トニー」は繊細なシンバル・ワークと、効果的なバス・ドラを駆使して皆を引っ張って行きます。
「デイヴィス」は、とても真面目な演奏で、実直にベース・ラインを刻み続ける、
正に職人の鑑の様な演奏ですよ。
ここでも「ハバード」はブリリアントで、且つメロディアスなフレーズを吹いてくれますが、「ドルフィー」は逆にぶっ飛びアドリブをかまします。
「ハッチャーソン」…時々思い出した様にヴァイブを敲き、幻想世界へと連れて行きやがるんです。

一言で言うと、このアルバムはメロディを聴くアルバムでは無いんですよ。
私が言った2曲目の「わびさび」、」「水墨画」を見て頭の中で色々と想像して下さい。
見ている内に、身も心もその水墨画の世界へトリップしそうになるでしょう?
多分このアルバムはそう言うコンセプトで出来ているんです。
只、表現している媒体が、絵画では無く「音楽」(音)なんですよ。

2001年宇宙の旅は、宇宙に有るのでは無く、実は音の世界に有るんです。
折しも「2001年~」が、世界に出たのは1968年だったかな?
「ドルフィー」は、それよりも前にこう言うテーゼの曲を演っていたんだよね。
改めて彼の才能の素晴らしさに感銘を受けると同時に、夭逝が悔やまれます。

PS…このアルバムの難解さから、実は10年以上も(このアルバム)を聴いていなかったんですが、今日良く聴いてみて、完全とは言わないまでも、「ドルフィー」がやろうとしていた事が少しばかり分かってきました。
私も成長したのかな?
このアルバムを聴く機会を与えてくれた、加持さん、garjyuさんに、改めて感謝します。

今日も渋い、メッチャ渋いホーン・アルバム行きますよ。ジェシー・パウエル~ブロウ・マン・ブロウ

2007-10-08 00:09:53 | ジャズ・テナー・サックス
今日紹介するアルバムは、かつて出ていた、寺島氏推薦の「ホーンならこれを聴け」とタイトルされている、このアルバム・シリーズを持っていないと、聞いたことねぇや。って思うほど渋いんです。
リーダーの「ジェシー・パウエル」他、演奏しているメンツを見て下さい。
殆ど聞いた事が無いメンバーで、B級アーティストどころか、正しくC級アーティストによって、作られたアルバムなんですよ。
しかしながら、興味の有る方には是非聴いて欲しいんです。
寺島氏が選んだだけあって、下世話だけど憎めない、そしてブギウギ的な、ダンサブルな1枚です。

アルバムタイトル…ブロウ・マン・ブロウ

パーソネル…リーダー;ジェシー・パウエル(ts)
      エディ・ウィリアムス(tp)
      ヘンダーソン・チェンバース(tb)
      ノーマン・ソートン(bs)
      オスカー・デナード(p)
      ウィルバート・ホーガン(ds)

曲目…1.ジェシーズ・テーマ、2.ブルー・アンド・センチメンタル、3.クロス・オン・ザ・グリーン、4.アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント、5.アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン、6.ラヴ・イズ・オールウェイズ、7.ジス・イズ・ヒア・トゥ・ステイ、8.マイ・サイレント・ラヴ、9.ク・パソ、10.ノー・トゥモロー、11.バット・ビューティフル、12.ジャスト・チップス

1959年、1960年録音

原盤…ROULETTE  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6306

演奏について…このアルバムもトータルで楽しむアルバムで、この1曲が白眉って言うのは、正直無いんですよね。

1曲目「ジェシーズ・テーマ」…ブギウギ調のユニゾン演奏から、楽しさ満開。
「パウエル」のソロも、吹き過ぎないで、余裕を充分に持たせた演奏です。
2番目にソロを取る「ウィリアムス」も輝かしいが、決して吹きすぎず、押さえる美学を持っているようです。

2曲目「ブルー・アンド~」…強いて言えば、個人的にはこの演奏が、このアルバムで一番好きかな。
抑制した、抑え目のテナー・ソロだが、とても寛大で伸びやかな音色で、「パウエル」の優しいフレーズが、貴方を酔わす事、間違い無しです。

5曲目「アイヴ~」は、ラテンリズムで曲が進み、「パウエル」は淡々と、いや朗々と、美しい原曲メロディを活かしたアドリブが聴き物です。
ここでもピアノの「デナード」の伴奏が、山椒の様な自己主張し過ぎないスパイス(アクセント)になっていて良いですよ。

9曲目「ク・パソ」…曲名から分かるが、完全にラテンの佳曲で、マンボですね。
飛びぬけたアドリヴは皆無ですが、曲の楽しさが○です。

4曲目「アイ・カヴァー~」…「パウエル」が、とてもリラックスした寛大なテナーを気持ち良くブロウする1曲。
ピアノの「デナード」が好サポートします。

3曲目「クロス~」…セクステット全員が渾然一体となった、アルバム中一番熱演しているのは、この曲です。
何かコンサートが始まる前の前座として、ジャズ・ホーン・オーケストラが演奏している感じがします。

6曲目「ラヴ・イズ~」は、「パウエル」のソロのサポートに、とにかくホーン群をバックに使用した編曲が、とても古臭くて、チョッと懐かしくもある。
黄金の50年代のキャバレーを思わせる感じが、セピア色で横丁気分です。

7曲目「ジス・イズ~」でも「パウエル」が、ぶいぶい言わせない、少し余裕を持たせた、大人のテナーでバラッドを演ってくれます。
「サム・テイラー」の様な男の色気も少し有るんだよなぁ。
次いでの主役は、ここでも「デナード」で、すごく安心して聴ける、的を射た伴奏(ブロック・コード)が絶妙なバランスで、「パウエル」をアシストしてます。

8曲目「マイ・サイレント~」も、略7曲目「ジス~」と同様のコンセプト演奏。
寺島氏が、帯や解説に書いておりましたが、それを少し拝借すると、「パウエル」はブロウしても、黒人的なバタ臭さではなく、日本人にジャスト・フィットのお煎餅の醤油の香りがするテナーだそうです。
うーぅーん、言いえて妙な感じもするけど…そう言う見方もあるかなぁ。

10曲目「ノー・トゥモロー」も、寛ぎのテナーで語るバラッド演奏です。
すさまじいアドリブなんか何も無いので、「コルトレーン」とか、「ロリンズ」なんかの究極のテナー演奏を期待すると、一寸ショックがでかいかもね。

11曲目「バット~」でも、「パウエル節」が健在で、アルバムの曲頭から、ズーと「パウエル」はこの調子で演り続けている。
半端は嫌いな男らしく、命を削った演奏なんて、絶対にしねぇぜ。って感じです。
誰も自己を追い込む、自虐的な演奏だけを追い求めてなんかはいないけど、楽しいだけの演奏も少し変(物足りない)かな。

寛ぎの「パウエル」のテナーと、名伴奏者「デナード」の二人が、本当に良い仕事をしてくれます。

余りにもベタなんだけど…JAKE SHIMABUKURO~GENTLY WEEPS

2007-10-07 01:16:55 | ワールド・ミュージック
今日は、昨年日本映画の各賞を総なめ状態にした、名作「フラ・ガールズ」を、地上波、初登場との事で、テレビで観てました。
蒼井優ちゃん、可愛かったですね、&静ちゃん達の踊りも良かったです。
映画の内容も実話でも有り、とても感動しました。
さて、まぁ有名な話ですが、この映画の音楽部門の総指揮が、今日紹介するアーティストで、この映画の作曲も手がけています。

その名は「ジェイク・シマブクロ」。
世界最高のウクレレ奏者と言って良い、今が旬のアーティストです。

アルバムタイトル…ジェントリィ・ウィープス

パーソネル…ジェイク・シマブクロ(ukulele、g)
      セアン・キャロル(ds) 
      マーク・タノゥヤ(b)
      マイケル・グランデ(key)
      ヴェルノン・サカタ(e-g)
      ジョン・ポラス・Jr.(perc)
      ダリアン・エノモト(ds)
      セルジオ・ガリサ(b)
      ダン・タカムネ(e-g)
      ランディ・アロヤ(b)
      ノエル・オカモト(ds)
      ディーン・タバ(b)
      ボビー・ニシダ(g)
                  他

曲目…1.フラ・ガール、2.ビヨンド・ザ・ブレイク、3.ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス、4.エンジェル、5.オーヴァー・ザ・レインボウ、6.コーヒー・トーク、7.レッツ・ダンス、8.ハートビート/ドラゴン、9.ヘイ・リトル・レディ、10.ブリーズ、11.ウィッシュ・オン・マイ・スター、12.レイジー・ジェーン、13.タッチ、14.スペイン、15.オン・ザ・ロード、16.アメリカ国歌

2006年6月14日 ハワイ、ナッシュビルにて録音

原盤…EPIC SONY   発売…ソニー・ミュージック・ジャパン
CD番号…EICP-625

演奏について…ソロ・ウクレレのバカテクを味わえるのは、まず3曲目「ホワイル・マイ・ギター(ウクレレ)~」で、これぞウクレレの超絶技巧の極みを体験できます。
勿論、テクニックだけでなく、ウクレレに込められた、哀愁や情感も見事に表現された名演です。

オープニング曲「フラ・ガール」…多分この映画のサントラにも使用されていると思います。
先ほどの名作映画を、一瞬で鮮明に脳裏に蘇らせるメロディと演奏ですね。
貴方もハワイ(常磐)へ、トリップしましょう。

7曲目「レッツ・ダンス」…個人的にはたまりませんね。
ウクレレで演奏する、フラメンコです。
「ジェイク」のすごテクが熱く燃えさかって、ハワイとスペインが融合される。
クライマックスは、まじに闘牛士のテーマのようです。
14曲目「スペイン」も、文字通り哀愁タップリです。
そして「ジェイク」の生ウクレレ、ハイテクが、とにかく高速で暴れ捲ります。
しかしウクレレってすごいなぁ。いや、「ジェイク」がすごいんだね。

2曲目「ビヨンド~」は、その名の通り、米ドラマ「Beyond The Break」の挿入歌に使用されているらしく、「ジェイク」のとてもハード・コアな一面を見ることの出来る、ハワイアン・フュージョンです。
ハードな「ジェイク」も結構行けるぜ。

12曲目「レイジー~」…うぅーん、曲の冒頭のフレーズから、私の心の琴線に触れ捲りで、思わず失禁(失礼)しちゃいそうです。
中途からジャジーな雰囲気になって、オーソドックスなウクレレ(ピアノレス)カルテットの完成です。

4曲目「エンジェル」、5曲目「オーヴァー・ザ・レインボウ」では、寛ぎ&癒しの「ジェイク」がフル稼働します。
ウクレレのほのかに明るい弦音が、貴方の心を優しく包み込み、ギターでは絶対に出せない、このウォームな響きに、貴方は南国の夕焼けを見るでしょう。

11曲目「ウィッシュ~」も、寛ぎ光線と癒し光線を「ジェイク」が出し捲ります。
しかし、「ジェイク」のアドリブは、どの曲もとてもメロディアスで、慈愛に満ち溢れていて、聴いているととても安心するサウンド(曲)ですね。

6曲目「コーヒー・トーク」…とてもポップで軽快なサウンドとメロディが聴き易く、ハッピー・トラックとして良いですね。
15曲目「オン~」も同じくライトなポップ・チューンです。

8曲目「ハートビート」…ウクレレをマイク(エフェクター)を通した音で録音しており、とても幻想的なイメージに仕上げた。
今いる世界は、夢か現実か、それとも白日夢なのか、この曲は、心の迷いと葛藤を表現しているんでしょうか?
ユニークであって、しかしとても印象的なトラックです。

10曲目「ブリーズ」も、演奏のコンセプトは、8曲目と略同じなんですが、こちらの曲の方が、良く知られたメロディなので、頭の中は、朝もやの転寝状態で、夢うつつな感じが、演奏に表れてるみたいです。
13曲目「タッチ」も同じ様なイメージですね。
ただ、この曲の方が哀愁があって、少しセンチメンタリズムになりそうな気がします。

9曲目「ヘイ・リトル~」は、ウクレレで演じる、カントリー&ウェスタンで、これも聴きようによっては、ウクレレがバンジョーに聞こえるのが、何とも不思議ですね。
編曲も、ハーモニカ、等、もろにカントリーなんだよね。

ラストの「星条旗を永遠なれ」…ウクレレで演ると、とにかく渋いの一言だ。
正に通好みの〆になってます。
とにかく、全編に渡って「ジェイク」の音楽的な深さと広さ、そして技術を堪能できるアルバムです。      

ジャズ界の超異色アルバム…フィリー・ジョー・ジョーンズ~ブルース・フォー・ドラキュラ

2007-10-06 09:32:25 | ジャズ・ビッグバンド・その他
私の大好きな、スーパー・ドラマー、「フィリー・ジョー・ジョーンズ」がリーダーとなり、ドラキュラ俳優、「ルゴシ」の声色を「フィリー・ジョー」が真似て、口上(語り)を入れたのが、タイトルになった1曲目「ブルース・フォー・ドラキュラ」である。

まぁ、表題曲以外は、珍曲・珍演ではなく、いかにもリバー・サイド・レーベルらしい、ハード・バップ・セッションがなされた好演が多いので、只の異色アルバムには留まってはいない。
参加メンバーも良いメンツが揃った、セクステットですよ。

アルバムタイトル…ブルース・フォー・ドラキュラ

パーソネル…リーダー;フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ナット・アダレイ(cor)
      ジュリアン・ブリースター(tb)
      ジョニー・グリフィン(ts)
      トミー・フラナガン(p)
      ジミー・ギャリソン(b)

曲目…1.ブルース・フォー・ドラキュラ、2.トリック・ストリート、3.フィエスタ、4.チューン・アップ、5.オウ!

1958年9月17日 NY録音

原盤…RIVERSIDE RLP12-282  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23772

演奏について…表題曲である実験的な珍作、「ブルース~」は、やはりと言うべきか、とても面白く、且つかなりの名演である。
聴き所の一つは、「フィリー・ジョー」の語り部パートが、演奏の大半を占めていて、その語りも真に板についていて、ドラキュラを怖く&ユーモアに表現している事と、勿論、彼自身の真骨頂、超絶ドラムも堪能させてもらえる事である。
その後続く、各人のソロパート「ブリースター」のトロンボーン、「グリフィン」のテナー、「ナット・アダレイ」のコルネット、そして「フラナガン」のピアノと全て短めながら、好フレーズが多く、この辺が第二の聴き所でしょう。

2曲目「トリック・ストリート」は、一寸、メロディが「ウィスパー・ノット」を連想させる小品佳曲で、寛ぎのハード・バップを聴くのには丁度良いかな?って感じです。
特に「グリフィン」の骨太なアドリブも良いですね。

3曲目「フィエスタ」…私的には、この曲がアルバム中、ぴか1のお薦め曲でしょうか。
冒頭のラテンチックな「フィリー・ジョー」のドラミングに導かれて、相変わらず「グリフィン」が、ぶいぶいと豪快にアドリブソロをかます。
次いで「ナット・アダレイ」が、コルネットながら、とても煌びやかなソロを軽快に吹き切る。
その後の「ブリースター」のソロが、また良いんですよ。
何が良いって言うと、音色が良いんです。
「カーティス・フラー」や「JJ・ジョンソン」のウォーム系とは異なり、かなり明るい音色の「トロンボーン」が、個性を醸し出しています。
〆は何と言っても「フィリー・ジョー」が、すごテク出し捲りの、超絶ドラム・ソロで決めてくれます。
一言で言うなら、正しくハード・バップの規範的な演奏ですね。

4曲目「チューン・アップ」は、「マイルス」作品なので、ここでの主役はやっぱり「ナット・アダレイ」です。
かなり、高速な曲なんだけど、テクニック抜群で運指して、スタート・ダッシュに成功すると、受ける「グリフィン」のソロもそれ以上の聴き物です。
とても、パワフルでエキサイティングな演奏をしています。
「ブリースター」は、トロンボーンだとこのリズム速度は、好演はしていますが、正直かなり苦しい感じです。
「真打」「フィリー」は、ここでも剛打連発!
アルバム・リーダーとしての責務を果たしますよ。

終曲「オウ!」では、今迄完全に影役に徹していた「ギャリソン」が、バックでありながらも、チョコッとベース・ラインで自己主張をしてくれます。
もう一人の脇役・職人ピアニスト「フラナガン」も、この曲ではソロを弾く場面が有り、「トミフラ」らしい、繊細な好フレーズのシングルトーンを繰り出して、曲の品がグーンとアップするんだなぁ。
「ブリースター」はキレのあるフレーズで曲を推進し、「グリフィン」は雄大なソロを取り、「ナット」の出来も素晴らしい。
ここでも最後は「バンマス」「フィリー・ジョー」が、華麗なドラミングで曲を纏め上げます。
相変わらず「時」と「空間」を完全に掌中にした、マジシャン(イリュージョン)の様な素晴らしいドラムに完全に魅入られますよ。

タイトルは異色盤と思いますが、2曲目以降は真面目にハードバップの名演・名盤と言って良いでしょう。

マニア垂涎のブルーノート1568番~ハンク・モブレー

2007-10-04 23:55:46 | ジャズ・テナー・サックス
今日紹介するアルバムは、かつて幻の名盤?と言われていた、ブルーノート1568番です。
リーダー、「ハンク・モブレー」を軸とした、3管編成のセクステットで、曲によっては、3管の中で、2テナーで演奏している曲も有ります。
一寸厳しい目で見ると、3管メンバーよりも、バックの名人3人の演奏の方が実は気になりますね。

アルバムタイトル…ハンク・モブレー

パーソネル…リーダー;ハンク・モブレー(ts)
      ビル・ハードマン(tp)
      カーティス・ポーター(as、ts)
      ソニー・クラーク(p)
      ポール・チェンバース(b)
      アート・テイラー(ds)

曲目…1.マイティ・モー&ジョー、2.恋に恋して、3.バグス・グルーヴ、4.ダブル・エクスポージャー、5.ニュース

1957年6月23日録音

原盤…BLUE NOTE 1568  発売…東芝EMI
CD番号…CJ28-5146

演奏について…このアルバムで、ベスト1演奏は?と言うと、正直決め難い。
全曲お薦めであるのは、まず持って異論の無い所なんですが、やはりこの時代背景とブルーノート・レーベルらしい、メンバー、選曲等によって、ファンキー&ブルージーな伝統的&正統的なハード・バップ、4ビート・ジャズで、言わばジャズの「王道」演奏です。

オープニングのファンキー臭さぷんぷんの、「マイティ~」のユニゾン演奏から、正統的な?ブルーノートカラーに染め上げられた演奏を聴くと、いやー安心しますよ。
これが、50年代の分かり易い「王道」ジャズなんだよーねって、妙に納得しちゃうんですよ。
特に「ハードマン」が、「ハバード」に似た、ブリリアントなアドリブを吹けば、「モブレー」が朴訥で、ウォームなアドリブで切り返す。
「モブレー」…何て気の良い親父なんだろうねぇ。
人の良さが滲み出ているソロがまじに良いねぇ。
更に発展して、「クラーク」が、哀愁有るシングル・トーンを転がしていると、「チェンバース」も中途でボウイングでアクセントをつけてくれる。
来た来た来た~って感じだよね。
正しくブルーノートの王道演奏ですよ。

2曲目「恋に恋して」…一言でお気に入りの1曲です。
1曲目と同様に、「ハードマン」「モブレー」そして、「ポーター」とソロを取って行くが、原曲のメロディを活かした、かなりストレートな表現で、ど真中の直球勝負を、皆がするのが良い。
男の美学、潔さが心情の様な演奏です。
後半には、再度「モブレー」が丁寧なアドリブ・フレーズを真面目に吹いてくれるのも素敵です。
シンプル・イズ・ベストを地で言った規範的な演奏です。

3曲目「バグズ~」では、前説通り、ここでもファンキー&グルーヴィーな、正統的なブルーズ演奏がなされて、聴いていて心地良くなります。
フロントラインは、そのファンキーで押し通しますが、この曲ではタイトにリズムを重ねる、「テイラー」のドラムと、「チェンバース」のベースが、ガッチリ決まっています。
伴奏に終始する「クラーク」の、脇役ぶりは、アカデミー助演男優賞物ですぜ。

4曲目「ダブル~」では、「テイラー」が熱く燃える、8ビート・ジャズで、リズムを刻むと、「ハードマン」が、カッチョ良いソロで、更に皆をエキサイティングにさせてくれます。
続く「モブレー」も、ここでは赤系統のテナーを吹いて、より廻りを煽ります。
「ポーター」も二人に負けずに、暖色系のテナーで応えて、最終的には、2テナー・バトル・モードに発展します。
目くるめく、テナーの応酬が最高!です。

エンディング曲「ニュース」は、3管のハーモニーが、絶妙のバランスで飾り付ける佳曲です。
リズムもラテンへの転調を使用したりして、演奏を飽きさせません。
アドリブは、やはり各人のソロを取り入れたハード・バップの基本に忠実で、ここでも安心感バッチリです。

ブルーノートの王道ジャズって、いつ聴いても本当に安心だよね。
クラシックなら、行き詰った時は、原点に帰って「バッハ」か「モーツァルト」を聴くのが一番なんだけど、ジャズの原点は、50年代のブルーノートに行き着くんじゃないかなって、まじに思うね。 

ピュアな心で真摯に聴きたい…グレン・グールド~バッハ・イタリア協奏曲 他

2007-10-02 23:53:43 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日は心を無にして、何も考えずに聴けるアルバムは無いかな?と考えていた所、やはり「バッハ」しか無いなと思い、「グレン・グールド」のこのアルバムをチョイスしました。

アルバムタイトル…バッハ~イタリア協奏曲/パルティータ/フランス組曲/イギリス組曲

演奏…グレン・グールド(p)

曲目…1.イタリア協奏曲ヘ長調 BWV971
   ①第1楽章…アレグロ(4:09)
   ②第2楽章…アンダンテ(5:56)
   ③第3楽章…プレスト(3:02)

   2.パルティータ第1番変ロ短調 BWV825
   ①プレリューディウム(1:52)
   ②アレマンダ(1:54)
   ③コレンテ(1:44)
   ④サラバンド(3:09)
   ⑤メヌエットⅠ&Ⅱ(1:26)
   ⑥ジーガ(1:22)

   3.パルティータ第2番ハ短調 BVW826
   ①シンフォニア(4:13)
   ②アルマンド(3:14)
   ③クーラント(1:49)
   ④サラバンド(2:35)
   ⑤ロンドー(1:36)
   ⑥カプリッチョ(1:49)

   4.フランス組曲第2番ハ短調 BVW813
   ①アルマンド(2:34)
   ②クーラント(1:07)
   ③サラバンド(2:15)
   ④エール(0:53)
   ⑤メヌエット(0:49)
   ⑥ジーグ(1:43)

   5.フランス組曲第6番ホ長調 BVW817
   ①アルマンド(1:33)
   ②クーラント(1:00)
   ③サラバンド(2:37)
   ④ガヴォット(0:36)
   ⑤ポロネーズ(0:53)
   ⑥メヌエット(0:47)
   ⑦ブーレ(0:58)
   ⑧ジーグ(2:05)

   6.イギリス組曲2番イ短調 BVW807
   ①プレリュード(4:30)
   ②アルマンド(1:33)
   ③クーラント(1:11)
   ④サラバンド(3:02)
   ⑤ブーレⅠ(1:26)
   ⑥ブーレⅡ(2:00)
   ⑦ジーグ(2:19)

1.…1959年6月23~29日、2.…1959年5月1日、8日、9月22日、3.1959年6月22、23日 NY 30Th Street Studioにて録音
4.…1972年11月5日、5.…1971年3月14日、5月23日、6.…1971年5月23日 カナダ トロント Eaton's Auditorium 録音

原盤…米コロンビア 発売…SONY MUSIC JAPAN
CD番号…SICC-326

演奏について…内なる世界をギリギリの境界線にて音として捉え、我々に訴えかけて来る、聖なる音空間を演奏できるのは、世界広しと言えども「グレン・グールド」しかいないと思う。

このアルバムに録られている演奏は、1959年の「グールド」20代の若かりし頃から、隠匿生活に入って、もはや巨匠として君臨していた40歳丁度ぐらいの二つの時代の演奏が収録されているアルバムです。

やはり、20代半ばの演奏「イタリア協奏曲とパルティータ2曲」は、非常にリリカルでナイーヴな、繊細さが前面に出た演奏です。
「グールド」は、おそらく何も考えずに、天賦の才の煌めきを信じて、自然と音を紡いでいます。

特に、緩楽章における優しさの中にキラリと光る鋭利な感性と表現は、計算して出来た演奏には思えません。
奇行癖や変人振りが有名なアーティストですが、この辺の天才振りと無邪気さ?は、一種「モーツァルト」と相通ずる共通点に思います。

本当に、イタリア協奏曲の「アンダンテ」、パルティータ1番の「アレマンダ」、「サラバンド」、パルティータ2番の「アルマンド」と「サラバンド」の大人し目の緩楽章のリリカルな魅力は、筆舌し難いです。

さて、1970年代の、巨匠となってからの演奏…「フランス組曲」2曲と、「イギリス組曲」では、進化した「グールド」の演奏が見て取れます。
緩楽章では、上記のリリカルな面に加えて、やはり成熟した「グールド」が、熟考し、思索した人間性が演奏に映し出されています。

又、急楽章では、若い頃は自然に任せた自発的な演奏で、言わば天衣無縫に弾いていた節がありますが、この時代になると「グールド」の脳細胞が活性化して出した結論を、音符に乗せて表現している様です。

前回、紹介した「ゴールドベルク変奏曲」で、新・旧両アルバムで表現した「グールド」の進化の過程が、この1枚のアルバムでは体験できるんです。

PS…進化した「グールド」と言う言い方をしていますが、旧(若い)ナイーヴな「グールド」を決して批判、卑下するつもりなどは毛頭有りません。
天衣無縫な天才性と、閃き&煌きの見事な演奏は、巨匠「グールド」では、少し失っている所も有ります。
まぁ、その閃きを失った部分を、人生経験と己の頭脳(解釈)で、補った結果が思索を加えた演奏なんですけどね…。
しかし、新旧いずれにせよ、自分の心がピュアになれる(浄化される)名演奏には違い有りません。


最近出たピカイチアルバム…辣腕フラメンコギタリスト、沖仁~レスペート(十指一魂)

2007-10-01 23:50:23 | ラテン・インストゥルメンタル
今日紹介するアルバムは、ラテン・ファンには正しくブラボー!待ってました!の掛け声が飛びそうな、抜群に行けてるアルバムです。

演奏者「沖仁」は、本場スペインでフラメンコ・ギターを修業し、賞も受賞するなどして、今や世界的なフラメンコ・ギタリストとして、認められています。
その「沖」が先月26日に発表したアルバムがこれです。

アルバムタイトル…レスペート~十指一魂~

パーソネル…リーダー;沖仁(フラメンコg)
      セラニート(フラメンコg)
      Ana Salazar(vo)
      矢幅歩(vo)
      大儀見元(perc)
      鈴木正人(b)
      坂田学(ds、perc、他)
      北村聡(bandneon)
      石塚まみ(p)
      山中光(vl)
      矢島富雄(vc)
      鈴木民雄(viola)
      藤谷一郎(e-b)
      ヤマカマヒトミ(fl)
      千住明(cond) 他

曲目…1.メルチョールの家、2.サンパブロ通りの天使達、3.ベサメ・ムーチョ、4.ペイン・アンド・ジョイ、5.マエストロ・セラニート、6.マニア・コシタ、7.サンタ・マリア教会、8.アイ・ジャスト・ウォント・ユー・トゥ・コール・マイ・ネーム、9.61+60、10.風林火山~巡礼紀~

原盤…EMIミュージック・ジャパン
CD番号…TOCT-26322

演奏について…まず、ワンパターンだが、3曲目「ベサメ・ムーチョ」は、史上に残る名曲の名演奏でしょう。
褒めすぎかもしれないが、「アート・ペッパー」と双璧かもしれないです。
アコースティック(フラメンコ)ギターの、この上ない、センチメンタリズムとパッションを極限まで追求した演奏。
カスタネットと、ピアノの「石塚まみ」の、純なアコースティック色豊かななバック・サポートも、「沖」の演奏を3ランクくらい徳の高いステージへと導き、素晴らしく劇的な演奏に仕上げた。
難を言えば、これ程の演奏がわずか4分半と、とても短い事ぐらい。
あと3分、いやこの倍の10分ぐらいは聴いて、聴き続けていたいぐらい素晴らしい。

2曲目「サンパブロ通りの天使達」…いつもの決め台詞、マイナー佳曲大好きなおいらは、ノッケから涙が出そうになるほど、哀愁が立ち込めている良い曲だ。
中途で転調して、メジャーになる劇的さも良いし、ヴァオリン「山中」とバンドネオン「北村」の切なさが満載のアドリブフレーズも、「沖」を強烈にアシストしている。
いつまでも聴いていたい、素晴らしい名曲だ。

5曲目「マエストロ・セラニート」…題名通り、正しくフラメンコ・ギタリストの大巨匠、「セラニート」をリスペクトして、「沖」とその「セラニート」の二人でフラメンコ・ギター・デュオした、驚愕のコラボ演奏。
ステレオ録音で、右チャンネルが「沖」で、左が「セラニート」が演奏している、言わばフラメンコ・ギター・バトルです。
二人の超絶技巧は筆舌し難い程素晴らしいのだが、テクだけでなく、スピリチュアルが非常に高い次元に存在し、ギターを聴きながら(聴かされながら)、魂がピュアに浄化されて行く。
このアルバム中、白眉の名演奏で、是非聴いて欲しい1曲です。

4曲目「ペイン~」もラテン・ポップ・チューンとして、」とてもメロディアスな良い曲で、「サラサール」と言う、下手上手女性ヴォーカルをフューチャーして、このアルバムにアクセントを付けている。
フラメンコ・ギターは、やはり伴奏しているだけでもカッコイイ。
      
1曲目のオープニング曲「メルチュールの家」…ディス・イズ・フラメンコ・ギターと言える、スパニッシュ・ムード満点の異国情緒溢れる曲。
朴訥とした男性ヴォーカルと、周りの掛け声。
打ち鳴らされるカスタネットのリズムを背景に、「沖」がアコースティック(フラメンコ)ギターを打楽器の様に、殴りつける様にかき鳴らす。
スペインの哀愁と、闘牛士的な情熱が交錯する、圧倒的な演奏に胸を討たれる。

7曲目「サンタ・マリア教会」…ここでの「沖」の激しい、打楽器的なギター奏法もすごいの一言。
一心不乱にギターの指先だけに集中して、己を消し去って、弦から魂の音を絞り出して行くのが分かるくらいに、凄まじいアドリブソロ演奏です。

8曲目「アイ・ジャスト~」は、「沖」が子供の為に作ったバラード曲で、「矢幅」が優しく歌って、「沖」の愛情を見事に表現しています。

9曲目「60+61」は、逆に「沖」が両親に」捧げた曲で、チェロ「矢島」の伴奏も美しく、心が落ち着く曲です。

10曲目「風林火山」は、NHK大河ドラマで使われた曲で、雄大なオーケストラに加えて、和太鼓を使用すると言うセンスに脱帽です。
フラメンコ・ギターとの和洋折衷で、渾然一体となった、非常にスケールの大きい演奏です。

「沖仁」…今が旬で、一押しのアーティストです。