紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

摩訶不思議なポップ・ジャズ…デイヴ・パイク・セット~ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

2007-10-13 23:49:37 | ジャズ・ビッグバンド・その他
今日、紹介するのは、ジャズ?フュージョン?ワールド・ミュージック?一体これは…何なのだろう?
演奏しているリーダーは、以前「ビル・エヴァンス」がサイドメンとして参加した事がある、ゴージャースなアルバム、「パイク・スピーク」で紹介した事がある、革新的なヴァイブ奏者「デイヴ・パイク」です。

まぁ、楽器編成の妙等で摩訶不思議音楽になっているだけで、実際にはかなり正統的なジャジーな曲(演奏)も有ります。
演奏している、ミュージシャンは、「パイク」の他は、ドイツ人二人とオーストリア人が一人のカルテットで、やはりユーロ・ジャズの香りは漂ってます。

アルバムタイトル…ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

パーソネル…リーダー;デイヴ・パイク(vib、tambourine)
      フォルカー・クルーゲル(g、sitar)
      ハンス・レッテンバッハー(b)
      ペーター・バウマイスター(ds)

曲目…1.アイム・オン・マイ・ウェイ、2.リガーズ・フロム・フレディ・ホロヴィッツ、3.サムホワット・サムホエア・サムハウ、4.ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ、5.マザー・ピープル、6.マタール、7.ヴィアン=デ、8.チーミング・アップ、9.ウォーキン・ダウン・ザ・ハイウェイ・イン・ア・レッド・ロウ・エッグ

1969年1月21日 ヴィリンゲン/黒い森 MPS-トンスタジオにて録音

原盤…MPS 発売…ポリグラム
CD番号…POCJ-2540

演奏について…まんまポップ・ミュージックにノリでスタート・ダッシュに使用したオープニングの「アイム・オン~」
ポップ・グループがそのまま歌詞をつければ歌える程、メロディアスで親しみ易い曲(メロディ)が印象的なトラックです。
「パイク」もうなり声は上げてはいるが、敲き捲る感じではなく、とても楽しみながら、演奏をしている様です。
バックの3人は、この時代らしい(60年代後期~70年代前半)の、とてもサイケデリックな雰囲気を活かした演奏です。

2曲目「リガーズ・フロム~」は、「ホロヴィッツ」の名が記されているので、一瞬は名ピアニストの?と思うが、「パイク」が飼っているサルの名前との事。
ここでの主役は、誰が何と言おうとシタールを弾く「クルーゲル」で、ラテン調のリズムに乗って、シタールを美しく紡いで行く。
それに合わせて、いや、より一層飛翔するのが、リーダー「パイク」で、この異国情緒溢れる編成に、バーサクしたのか、素晴らしいノリでヴァイブの音&アドリブをこれでもか?と飛び回らせる。
中途から「クルーゲル」はアコースティック・ギターに持ち替えて、フラメンコさながら、運指の運びも絶好調で、サウンドのパワーは頂点に達する。
このアルバム随一の聴き物トラックでしょう。

3曲目「サムホワット~」は、ギター「クルーゲル」をメインにした、かなり正統的でジャジーなバラッド曲。
この曲で、このアルバムはジャズ・アルバムだと言う事を認識出来ます。
それにしても「クルーゲル」の癒しのギター…良いねぇ。
そのギターに張り付く様に音を合わせて、伴奏する「レッテンバッハー」のベースも効果覿面です。
この曲での4人(カルテット)のまとまりは、正しく「デイヴ・パイク・セット」と言う冠に相応しい、統制された佳演です。

4曲目タイトル曲の「ノイジー・サイレンス~」…良いねぇ。
スタートの序奏は、ハードボイルド感たっぷりのテーマで、一聴してぞくぞく感の期待が高まります。
すぐさまアドリブをかます「クルーゲル」がソロを終わらん内に、ジャズ・ロック調に変調して、演奏が疾走をし始める。
その名の通り、静かな曲調から、騒ぐ様にノリノリのメロディへの転調、変速のこの部分が一つの聴き所です。
「パイク」はヴァイブをうなり声を上げながら、特に急楽章で、これみよがしに敲き捲るが、それをサポートするベース「レッテンバッハー」が、渋くガチッとした演奏をするので、演奏がバッチリ決まっています。
「レッテンバッハー」は、中途では中々すごテクのベース・ソロを決めたりして、常時この曲の演奏の大黒柱になっている。
曲の起承転結もシッカリとなされており、2曲目と双璧のベスト・トラックです。

6曲目「マタール」…「クルーゲル」のシタールを全面に押出した、ディス・イズ・インディアと言いたいぐらいに、カレー臭(加齢じゃないよ!)がぷんぷんとする、エキゾチックな1曲。
正直、私は嫌いじゃないが、この曲をジャズと見て(聴いて)くれる人の方が遥かに少ないだろうな。
リズムは中途から、8ビートのロック・リズムになって、この曲がインディアン・ポップスへと変貌を遂げる。

7曲目「ヴィアン=デ」…静けさと気だるさが魅力の、スロー・チューンで、「パイク」「クルーゲル」「レッテンバッハー」の3人の紡ぐ、優しいアドリブ合戦がとても心地良い演奏です。
「バウマイスター」は、自らの存在が無いくらいに、地味にシンバル・ワーク一色で伴奏(演奏)しているのが、渋カッコイイです。

8曲目「チーミング・アップ」…急速調の曲で、ここでは各人が自分達のテクニックを思う存分見せびらかす。
先日、紹介した「ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」的な音のマトリックスを感じさせる演奏です。
このアルバムの中では、異色の前衛ジャズを演奏しています。
やはり「パイク」…一筋縄では絶対に行かないミュージシャンです。

ラスト9曲目「ウォーキン・ダウン~」も8曲目に近いコンセプトですが、最後の〆と言う事もあって、「パイク」が思い切りバウトしていて、「クルーゲル」のギターは「エレクトリック・マイルス」を連想させる、アバンギャルドな演奏です。
この終盤のエンディング2曲は、このコンボの硬派な部分を見せつけますね。