紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

アート・ペッパー・ウィズ・デューク・ジョーダン・イン・コペンハーゲン1981

2007-10-15 23:42:30 | ジャズ・アルト・サックス
復活した「アート・ペッパー」のヨーロッパでのライヴ・アルバムを聴いて下さい。
名ピアニスト「デューク・ジョーダン」のスペシャル参加も相成って、超ド級の演奏、ライヴ・パフォーマンスに感動を味わって欲しいですね。

変身後のハードな「ペッパー」ですが、時折、若い頃の感性豊かな「閃き」のフレーズも吹いてくれますので、その辺りは一番の聴き所です。

「ジョーダン」のお得意のフレーズ「ジョーダン節」も健在で、ファンには堪らない曲目&演奏でヘヴィーな2枚組ライヴ・アルバムを堪能して頂戴!

アルバムタイトル…アート・ペッパー・ウィズ・デューク・ジョーダン・イン・コペンハーゲン1981

パーソネル…アート・ペッパー(as、cl)
      デューク・ジョーダン(p)
      デヴィッド・ウィリアムス(b)
      カール・バーネット(ds)

曲目…DISC1…1.ブルース・モンマルトル、2.恋とは何でしょう、3.虹の彼方に、4.キャラバン、5.リズム・マ・ニング、6.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド

   DISC2…1.ベサメムーチョ、2.チェロキー、3.レディオ・ブルース、4.グッド・バイト、5.オール・ザ・シングス・ユー・アー

1981年7月3日 デンマーク コペンハーゲン カフェ・モンマルトルにてライヴ録音

原盤…TOFREC 発売…トイズ・ファクトリー・レコード
CD番号…TFCL-88916/7 2枚組

演奏について…DISC1のオープニング曲は、この地にちなんで付けられたであろう曲目、「ブルース・モンマルトル」で、比較的ライトな感覚のブルース曲で演奏される。
「ペッパー」は、若い頃よりは、幾分渋みと言うか、くすんだ音色になってはいるが、エモーショナルで、煌きを持ったフレーズを随所に吹いて、健在ぶりを見せ付ける。
「ジョーダン」は、「ディス・イズ・ザ・ジョーダン」とも言うべき、「ジョーダン節」を全開して、素晴らしい哀愁を帯びたマイナー調のシングル・トーンを次々と連発!
いつまでも聴いていたい、ピアノ・アドリヴ・ソロです。
それから、ベースの「デヴィッド・ウィリアムス」が、実直ながら太目の音でベースを弾いて、皆を強烈にドライヴしているのは、好感が持てます。
大御所二人を前にして、全くひるむ事が無いし、中途のベース・ソロも「ロン・カーター」ばりで、中々の物ですよ。

2曲目「恋とは何でしょう」…言わずと知れた「コール・ポーター」作曲のスタンダードだが、ここでの「ペッパー」は、急速調でぐいぐいとこの曲を進めて行く。
2曲目と言う事もあり、1曲目よりは、大分遊びと言うか、シャウトする様な激しいフレーズを入れて吹く部分が、「新生ペッパー」らしい所です。
「ペッパー」の、この演奏形態はいつの時代でも賛否両論ですが、「コルトレーン」等、モード~フリー系が好きな人には、充分に理解して頂ける演奏です。
まじ、所々、「コルトレーン」がアルトで演奏している様に思えるぐらい、激しい演奏なんですよ。
「ジョーダン」は良い意味でのワンパターンで、決して自分のスタイルを崩さないで、期待通りにここでも哀愁調のアドリブを弾いてくれます。
この曲では、ドラムス「バーネット」が、派手目のドラム・ソロを対話の様に絡めて、二人の美味しいスパイスになっています。
最後に転調して、ラテンリズムで、フィニッシュして終わるのが、彼等コンボのセンスの良さでしょう。

3曲目「虹の彼方に」も、「ハロルド・アーレン」の書いたスタンダード・バラードで、「ペッパー」は、余り崩す事無く、かなりストレートにテーマを吹いて曲が始まります。
リズム・セクションの3人は、当初バックに徹していますが、その中で、音数を削って、間を取りながらリズムを弾く「ウィリアムス」のベースが聴き物です。
中間からは、「ジョーダン」「ウィリアムス」共、アドリブに入りますが、とても静寂な感覚の演奏で、「ペッパー」のリリシズムを、かなり強調した演奏に仕上げています。

4曲目「キャラバン」…当然の事ながら、ラテン・リズムで始まり、「バーネット」が派手に敲いて、「ウィリアムス」も廻りを鼓舞させる様な、ハードなベースラインを刻むと、「ペッパー」がアドリブの前奏から、いきなり「キャラバン」のメロディ:テーマに演奏を移し、それを聴いて、メンバーの皆も、一気にエキサイト・モードに突入する。
この後は、「ペッパー」は、かなりフリーキーなシャウトを多発し、ベース&ドラムスも全力で疾走し始める。
「ジョーダン」は、合間合間をブロック・コードで、敲きつける様に、音譜(楽譜?)の白い部分をうめていく。
その後も、間を活かしながら、お上品なフレーズをゆっくり弾いたりして、演奏にアクセントをつける所なんざぁ、ベテランがなせる、余裕の表れか?
しかし、この後の「ジョーダン」の、万華鏡の様に千変万化する、美フレーズのアドリブ・シャワーは最高の聴き所です。
まじにすごいです!
更に、続くドラムス「バーネット」の超絶的なドラム・ソロも見事です。
終盤の4人のスーパーバトル、アドリブ合戦は、取分けシャウトに吹き続ける「ペッパー」を筆頭に、このアルバム、ディスク1の頂点の演奏に有る事は間違い無い!

5曲目「リズム・マ・ニング」…4曲目で「ペッパー」は、頑張りすぎて、少し疲れたのか?、この曲では最初はかなり軽めに吹いていたが、やはり途中からは乗って来て、吹き捲って、触発されたのか廻りもすぐさま燃えて来る。
この中年親父は若い頃より、数倍パワーと体力、持久力が有るのとちゃうかい?
「ジョーダン」は、崩し調のアドリブ・フレーズで、「モンク」ワールドをしっかりと聴衆にアピールしてます。

6曲目「ユー・ゴー~」…「ペッパー」の、これぞ大人のバラッドだ!と主張する見事なアルト・サックスを一聴しただけで、胸を討たれる。
原曲のメロディをかなり活かして吹いているが、それでも素晴らしいアドリブ・フレーズを随所に吹いて、リリカルな「ペッパー」も、未だここにいると言う事を、自己主張しているかの様な演奏です。
「ジョーダン」もロマンティックなアドリブ演奏を展開して、「ペッパー」の名演奏に花を副えます。

DISC2の冒頭を飾る、名曲「ベサメ・ムーチョ」…個人的には、このアルバムの白眉と言いたい、超名演です。
「ペッパー」は序奏のアプローチから、アバンギャルドなアドリブを吹いて、「変身ペッパー」を、デンマークの方々にお披露目する。
メロディを吹けば十八番の曲なので、全くお手の物で、ラテン・リズムでバックアップする「バーネット」と「ウィリアムス」の真面目な仕事ぶりも、「ペッパー」を好アシストしている。
この後の「ペッパー」のアドリブが、好フレーズを尽きる事無く生み出して、感動物なのだが、それを受ける「ジョーダン」のピアノ・アドリブも、センチメンタルな哀愁メロディを次々に紡いで行き、二人のイマジネーションの見事さに唖然です。
この辺りのガチンコ勝負は「ベサメ・ムーチョ」大好きなおいらは、もはや失神寸前なぐらいに酔わされて、」KOされている。
終盤には、脇役「ウィリアムス」も重厚なベース・アドリブを見せてくれるし、これが又、最後期の「コルトレーン・クインテット」の「ジミー・ギャリソン」の様なフレーズですし、「バーネット」も最後におかずたっぷりのソロを見せてくれるし、全員が持ち味を出し切った名演奏に拍手喝采です。

2曲目「チェロキー」も「クリフォード・ブラウン」盤よりも、かなり高速のテンポで展開する。
最初から「ペッパー」が高速で、次から次へとアドリブを吹き捲り、「ウィリアムス」も負けじとベースで「ペッパー」に高速で追従する。
「ジョーダン」は、この曲では少しご休憩かな?
余り、ピアノを弾いてないんですよね。
逆にベースとドラムスは、完全に来てますね。
終盤に「バーネット」が、これでもか?と太鼓を敲き捲り、自らを更に高めようと鼓舞しています。

3曲目は「ペッパー」オリジナルの「レディオ・ブルース」なんですが、本日2度目の本格的なブルース演奏では有りますが、正直「ペッパー」の音色にブルースってあんまり合わない気がするね。
やはり。白人であり、音色から南部の香りがしないからなのかなぁ。
「ジョーダン」も黒人なんだが、ヨーロッパ在中が長いからか、あまりブルース向きなピアニストじゃないよね。
何の曲も聴いていない、オープニング曲ぐらいなら、ライトなブルーズも良いとは思うが、これだけ名演奏、好フレーズを聴かされた後での、「ペッパー」の(体質に合わない)ブルースを長時間聴くのはチョイきついね。
唯一、「ウィリアムス」のベース・ソロは、テクも抜群だし、黒い雰囲気を充分に出しているので、それはそれで、評価したいですね。

4曲目「グッド・バイト」では、「ペッパー」が何とクラリネットを吹くんです。
これだけでも、すごい事だよね。
しかし、「ペッパー」…クラリネットの演奏、思ったよりも良いねぇ。
何か若い頃に最大の持ち味だった、叙情性が呼び戻って来た様に思うのは俺だけですか?
クラリネットの木管楽器特有のソフトな音色が、「ペッパー」のリリカルさを全面に押し出すのに一役も二役も買っている事には、全く異論が有りません。
「ジョーダン」は、ハッピィなイメージのアドリブを弾いて、先ほどの「ペッパー」の叙情性を補うアシスト演奏が、本当に上手ですね。
チョコッと、映画「第三の男」のテーマを拝借していたりするのも、お洒落~。。

最後の曲「オール・ザ・シングス~」…「ペッパー」は、最後もスタンダードで纏める気でしょうか?
最後の最後まで、尽きないアドリブ・フレーズを演る所が「ペッパー」の、正にすごい所です。
更に言わせてもらえれば、ここではシャウト系のアドリブ・メロディが少なく、とてもメロディアスなフレーズのアドリブ演奏が多いのも特筆物。
堕ちた天才が、努力と研鑽で、正しく全盛期以上に「復活」した、素晴らしいアーティストの代表者と言えるでしょう。
「ジョーダン」も原曲を損なわない、メロディックなマイナー中心のフレーズを多発して、更にこの演奏のセンスと品を上げてます。
逆に余りにも、品が高すぎて、エンディングの盛り上がりに欠ける気がするのは、老婆心?でしょうか?
しかし、こう言う大人の演奏での〆も、やっぱり有りでしょうね。
いつも最後は、派手に劇的に…って言うのもナンセンスですから…。

今日はまじに長文になりました。
最後まで読んで下さった方、サンクスです。