紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

このアルバムは良いぜ!コールマン・ホーキンス&クラーク・テリー~バック・イン・ビーンズ・バック

2007-10-11 23:41:37 | ジャズ・テナー・サックス
テナー・サックスの大巨人「コールマン・ホーキンス」と、技巧に走らずストレートに表現する、トランペット職人「クラーク・テリー」の共演アルバムで有り、且つ名ピアニスト「トミー・フラナガン」が抜群の出来でフロント二人をサポートする、知る日人ぞ知る隠れ名盤が今日紹介する、このアルバムです。

アルバムタイトル…バック・イン・ビーンズ・バック

パーソネル…リーダー;コールマン・ホーキンス(ts) 
      クラーク・テリー(tp)
      トミー・フラナガン(p)
      メジャー・ホリー(b)
      デイヴ・ベイリー(ds)

曲目…1.テューン・フォー・ザ・テューター、2.ドント・ウォーリー・アバウト・ミー、3.ジャスト・スクイーズ・ミー、4.フーディン・ザ・ビーン、5.ミシェリー、6.スクイーズ・ミー

1962年12月10日

原盤…米CBS  発売…ソニー・ミュージック・エンタテインメント
CD番号…SRCS-9190

演奏について…まず、オープニング曲「テューン~」は、メロディー・ラインが心を打つマイナー・チューンで、「ホーキンス」と「テリー」のユニゾンから、このベテラン二人の描く、ミュージック・ワールドへと直行します。
ソロでの「ホーキンス」…渋カッコイイ余裕のアドリブが、男の哀愁を醸し出していて良いですよ。
続く「テリー」のアドリブは前述通り、かなりストレートな表現で、直球をど真ん中に投げ込んでくるんですが、この潔さも素敵です。
そして何より、この後の「トミ・フラ」のピアノ・アドリブの旋律が、繊細で素敵なんですよ。
「ホリー」の渋いベース・ソロ、「ベイリー」の抑制したシンバルもバックらしいアシストで、曲の品的ランクを上げています。

2曲目「ドント・ウォリー~」…は、「テリー」ワン・ホーンの独壇場で、テーマを吹く「テリー」のトランペット音の高貴さがとにかく身に沁みます。
ブリリアント過ぎず、しかしウォームでもなく、音の輪郭が尖ってはいないが、割とハッキリしていて、そして相変わらず、かわすのではなく、ストレート勝負なんですよ。
加齢した「クリフォード・ブラウン」みたいと言えば良いのでしょうか。

3曲目「ジャスト・スクイーズ・ミー」は、有名な「エリントン」ナンバーですが、とても遊び心が満ち溢れた演奏になっています。
ベースに合わせて歌う「メジャー・ホリー」のハミングが聴けるし、「トミ・フラ」の伴奏も、全面に渡って、とにかくお洒落なんですね。
煤けた音色で、貫禄吹きをする「ホーキンス」…良い親父なんでしょうね。

4曲目「フーディン~」は、スィンギーな「カウント・ベイシー」ナンバーで、気持ち良く吹く「テリー」、「ホーキンス」のフロント二人に、粘着的にガッチリとマン・マークでブロック・コード伴奏を終始弾き続ける「フラナガン」が、MVP級の大活躍です。
中途のアドリブ・ソロの出来栄えも秀逸で、正に「トミ・フラ」の真骨頂を味わえるトラックです。

5曲目「ミシェリー」は、短曲だが素晴らしい出来のバラード演奏です。
ロマンティックでセンチメンタルな「フラナガン」のピアノに導かれて、「ホーキンス」が、ここでは「泣き」のテナーを紡ぎます。
でも「泣き」と言っても、涙は決して見せずに、心で泣いているんです。
悲しみか、辛さをジッっと噛締めて…。
美しい男泣きです。

6曲目「スクイーズ・ミー」…50年代「バード」が吹き捲っていた時の様な、アドリブ奏者を全面に押出した、ライトなブルーズ・ナンバーで、「テリー」がハイ・ノートで積極的に、吹き切ります。
「トミ・フラ」の品格の有る、ブルーズ・ピアノ・ソロの気だるい感じもgoodです。
最後は御大「ホーキンス」が、訥々と音を吹いて曲を〆てくれます。

この時代、「コルトレーン」や「ドルフィー」が大暴れ?していたのに、こう言う前世代的な正統ジャズを演っているのが、ベテラン達の有る意味「すごさ」だと思います。
決して「時代錯誤」では無いですね。