紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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バルネ・ウィランが綴るフランス映画音楽…ふらんす物語~バルネ・ウィラン・ウィズ・マル・ウォルドロン

2008-05-21 00:28:09 | ジャズ・テナー・サックス
フランスが生んだ偉大なサックス奏者「バルネ・ウィラン」と、名ピアニスト「マル・ウォルドロン」の素晴らしいコンビネーションが、今日紹介する名盤を作り上げました。

曲の題材は、全てフランス映画音楽で、「バルネ」のサックスと「マル」のブラッキーなピアノが素晴らしいパフォーマンスを織り成します。

今宵はセンス抜群のアルバムをご堪能下さい。

アルバムタイトル…ふらんす物語(バルネ・ウィラン・ウィズ・マル・ウォルドロン)

パーソネル…リーダー;バルネ・ウィラン(ts、ss)
      マル・ウォルドロン(p)
      スターフォード・ジェイムス(b)
      エディ・ムーア(ds)

曲目…1.男と女、2.死刑台のエレベーター、3.シェルブールの雨傘、4.危険な関係のブルース、5.黒いオルフェ、6.殺られるのテーマ、7.オータム・リーブス、8.クワイエット・テンプル

1989年10月2、3日 オランダにて録音

原盤…ALFA JAZZ 発売…アルファ・ミュージック
CD番号…ALCB-9514

演奏について…1曲目「男と女」…「バルネ・ウィラン」のメイン・テーマをあえて崩さないで、かなり忠実に原曲を歌い上げる序奏から曲が始まり、「マル・ウォルドロン」は、かなり寛いで落ち着いたイメージでブロック・コードを合わせて行く。
映画「男の女」のアンニュイな雰囲気そのもののスターティングである。
しかし「マル」のソロに入ると…面白いぐらいに「マル」節全開で、インプロヴァイズして行くのが笑えるぐらいいかしてます。
ベース「スターフォード・ジェイムス」のビンビンにハードな音色のサポートと、ドラムス「エディ・ムーア」のタイム・キーピングもセンス溢れてます。
最後はもう一度「バルネ」が余裕のテーマ吹きで、ピシッと〆ます。

2曲目「死刑台のエレベーター」…知っている人は知ってますねぇ。
正に「バルネ・ウィラン」が青年の時の日本でのデビュー・アルバムが、「マイルス・デイヴィス」のこのタイトル名盤なんですね。
ここでの「バルネ」は、ソプラノ・サックスで非常に叙情的に、原曲に忠実に曲を仕上げて、若い時のデジャヴを蘇らせているみたい。
「マイルス」レスでも、しっかりとあの盤を彷彿させる仕上げがgood jobです。
その後を受ける「マル・ウォルドロン」…訥々と音を切りながら?、敢えて音の数を少なく絞って、思索的に…そしてハイセンスに曲を修飾します。
終盤、、もう一度「バルネ」が流麗にソプラノで決めて来ます。
暗闇に消え入る様なエンディング(フェード・オフ)に痺れそうです。

3曲目「シェルブールの雨傘」…もう、私の大好きな曲で、「バルネ」は渋く低音域をメインにアドリブを展開して行きます。
サイドではベース「ジェイムス」が、ガッツリのベース演奏で太刀持ちをして、ドラムス「ムーア」のかなり激しいドラミングで、「バルネ」を露払いで支えます。
「マル」は「バルネ」と対峙する様に、センス抜群のピアノ・ソロで応戦します。
「マル」は「マル」流に曲を解剖し、「マル」が「マル」で有るが如く調理して行くのがえぐいねぇ!
この「マル」のカデンツァ…いかにもって感じで、以前聴いた事がある節、テンコ盛りなんだけど…そこが又行けてるんです。
「マル」はやっぱり、こうでなくっちゃね!
その後、「ジェイムス」と「ムーア」もそれぞれの持ち味を活かしたソロを執って、以外に彼らがサポーターとしてだけでなく、ソロのかっこ良さに満足させられちゃいます。
4人が渾然一体になった、ベストなチューンです。
エンディングの仕上げも、超カッコイイ!!

4曲目「危険な関係のブルース」…「バルネ」のシンプル・イズ・ベストのサックス・バウトも素敵だけども、ここではとにかく「スターフォード・ジェイムス」の硬派なベース演奏が最高に行けていてグッと来ます。
とにかく、唸るぐらいに重低音で、一音一音に魂がこもっていますぜ!
それを聴いた「マル」が、じゃぁ俺も…ってな感じでかっこ良いアドリブをバシバシと決め捲くり、演奏を華美にして行きます。
そうすると、やっぱり「エディ・ムーア」も3曲目同様に、出て来るんです。
シンプルだが、決めのフレーズで一発演ってくれます。
3曲目の「シェルブール…」から、4人のエンジンが全開になったのか?
元祖「デューク・ジョーダン」の「危険な関係…」とは、かなりイメージが違うけど、この演奏もかなり行けます。

5曲目「黒いオルフェ」…いつも言ってますが、私のブログ名の礎になっている曲だけに、マイ・フェイヴァリットの本命的な曲ですけど、ここでは「バルネ」が、又ソプラノ・サックスに持ち替えて、エモーショナルに曲を描いて行きます。
特に中間部でのカデンツァの叙情性は抜群で、シンプルにバックに徹する3人がより一層「バルネ」のソロを際立ててくれます。
その後「マル」がソロを執るんですが、最初はチョイ弾き気味?のソロが、逆にとても良い味を出すんです。
その後、「マル」もトランス状態になってきて、ここからは「マル」節全開で、全部有りっ丈に出し切ってくれて…「マル」…本当にありがとう。
そして、もう一度「バルネ」のソロが移ると、中近東風のアラビックなアドリブ・ソロに仕上げて行って更に曲にスパイスを効かせてくれて…ウルトラgoodです。
4曲目と双璧の名演です。

6曲目「殺られるのテーマ」…非常にシンプルな仕上げのブルーズ曲で、「バルネ」はともかくとして、「マル」は普段の「マル」の個性から離れた感じがして…言い換えれば新鮮な感覚が有りますねぇ。
シングル・トーンで連続した伸ばすフレ-ズを多用して…ある意味「マル」らしくないのが楽しい?です。
後半には「ジェイムス」がベースを良く歌わせるソロ・フレーズをかまして、アドリブを決めて来ます。
真に大人で男っぽい1曲が出来上がりました。

7曲目「オータム・リーブス」…まず、一寸疑問…邦題なのに何故か「枯葉」ではなくて「オータム・リーブス」なんですね。
曲は勿論、「枯葉」です。
「マイルス」の様な究極の演奏では勿論無いけれども…この「バルネ」の演奏も悪くは無いですね!
今までの曲とは、アプローチを変えていて、序奏から早めにアドリブ・コードにチェンジして行きます。
「バルネ」も原曲の美しさは大事にしつつも、今回は少しばかり遊んで見たくなったんでしょうか?
続いて「マル」は、前曲の演奏とは異なり、「マル」節をノッケから出し捲くって、聴いていて笑えるぐらいに「マル」しちゃってます。
これも「バルネ」に触発されたのかなぁ?
そして、そのまま「マル」特急…終点まで加速して突き進むんです。
ラストでは「ジェイムス」が一発ソロを演り、「バルネ」とのコンフュージョンでフィニッシュします。

ラスト曲「クワイエット・テンプル」…ラストはフレンチ映画らしく、派手で盛り上がる、所謂上げ上げの曲で〆ず、静かに…かなり根暗な曲&演奏で終わるのが、いかにもフランスらしい?いや、「バルネ」らしいですね。
とにかく抑制した、静寂のバラッド演奏で、「バルネ」も極力音を小さくして、渋いテナー・サックスをじっくりと吹いて行きます。
「マル」も音数を削って、シンプルにブロック・コードで伴奏をして、「ムーア」のブラッシュ・ワークもとても上品で、二人をアシストしていますね。
終盤「マル」がソロを執りますが、節はやっぱり「マル」節?なのですが、非常に思索的で、音を一音、一音選んで、とにかく音数を削って、幻想的に仕上げて行きます。
ラストはもう一度テーマに戻り、序奏のアンニュイで静寂さを全面に押し出した大人のバラッド演奏を、静かに、そしてじっくりと「バルネ」が吹き上げて〆ます。

全8曲…一寸俗的かも知れませんが、所謂名曲の名演で、万人向けです。         


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