紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

フリー・ジャズの本丸的演奏…アーチー・シェップ~ママ・トゥー・タイト

2008-01-04 16:18:00 | ジャズ・テナー・サックス
今日、紹介するアルバムは、先回の「ゴールデン・サークルのO.コールマン」以上に、フリー・ジャズの毛色の濃いアルバム、「アーチー・シェップ」の「ママ・トゥー・タイト」で行きましょう。
正しく、フリー・ジャズの本丸作品の一つです。

年末から、何かフリー系ジャズばっかりでごめんなさい!
一部の閲覧者の方からは、評価して頂いているのは分っていますが、あまり一般的で無いので、フリー系の紹介は、今日で一回止め時ましょう。
別にフリー系ジャズの紹介自体を止める訳では有りませんので、悪しからず。

明日以降は、ラテンや4ビート・ジャズ、クラシックを中心に、聴き易いアルバムを全面に押出した以前のスタイルに戻す予定です。

アルバムタイトル…ママ・トゥー・タイト

パーソネル…リーダー;アーチー・シェップ(ts)
      トミー・タレンタイン(tp)
      ラズウェル・ラッド(tb)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ビーヴァー・ハリス(ds)

曲目…1.ア・ポートレート・オブ・ロバート・トンプソン a)プレリュード・トゥ・ア・キッス、b)ザ・ブレイク・ストレイン、c)デム・ベーシズ、2.ママ・トゥー・タイト、3.アーニーのテーマ、4.バッシャー

1966年8月19日 録音

原盤…impulse A-9134  発売…MCAビクター
CD番号…MVCI-23079

演奏について…まず、オープニングの組曲風、大作「ア・ポートレート~」ですが、aの「プレリュード~」の序奏から、これぞフリー・ジャズだと言わんばかりに、「シェップ」の絶叫テナーに追従して、「タレンタイン」のトランペットと、「ラッド」のトロンボーンが、壊れた?万華鏡の様に、3管が絡む合う、壮絶な演奏から始まる。
取分け、「シェップ」と「ラッド」の二人の出来が良く、高音の「シェップ」、低音の「ラッド」が、フリーキーに吼え捲るんです。
ある種、異種格闘技の殴り合いの画を想像させるほどに、激しいシャウトでバウトしてくれます。
ドラムスの「ハリス」は、陰ながら彼等を渋く煽り、「ヘイデン」は演奏に重厚感を与えるべく、腰を据えた骨太ベースを弾いて、アシストしてくれます。

bの「ザ・ブレイク~」に入ると、曲は一転して、かなり静かな曲調に変わりますが、ホーン群の3人は、それでもパートパートで、シャウトをした演奏で、曲を飾り付けるんですが、この曲で吹いているメロディの所々が、どことなく「ミンガス・グループ」で過去に演奏されているフレーズに似ていて、やはり、3管ぐらいのカルテットやセクステットの編成になると、コンボ演奏の音に重厚さを出すには、「ミンガス」の解釈は必要不可欠な要素なのかなぁと、改めて考えさせられます。

cの「デム・ベーシズ」になると、aと同様、再度「シェップ」を中心とした3管が絶叫とシャウトで、激しい盛り上がりを見せて、「ハリス」もガツン、ドカンとドラムを敲き捲って、廻りを煽り捲ります。
「シェップ」と「ラッド」は、動物的な、ゾウや羊や馬の様に「グヮオーン」とか「ギャーッ~」と言う感じで嘶くのですが、曲の終盤に入ると、非常にクラシカルでメロディアスなマーチ曲になって、この起承転結?な感覚が、シュールさと面白さが同居していて、…正しくこの感じが「フリー・ジャズ」なんでしょう。

2曲目、表題曲「ママ・トゥー・タイト」…とても親しみ易いメロディから始まり、(「ハンコック」の「ウォーター・メロン・マン」のメイン・メロディに酷似した雰囲気なんですよ)これを聴く限り、フリー・ジャズと言うより、バピッシュなファンキー・チューンなんだけど、私は嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きですねぇ。
「タレンタイン」が、てとも開放的で、楽しげなオープン・トランペットを吹いて、「ラッド」もベース的な役割で、トローンボーンの音を重ねてくれるんですが、大将「シェップ」だけは、自由奔放にテナーをぶいぶい言わします。
フリー嫌いな人は、このトラック(表題曲)だけでも、聴いてみて頂戴!!

3曲目「アーニーのテーマ」…とてもアンニュイな雰囲気の妖しいメロディに、2管(ペットとトロンボーン)のユニゾンに対して、「シェップ」も攻撃的だが、知己に富んだアドリブで、テナーで絡んで行く。
リズム二人は、とてもアーバナイズされた、乾いた曲調で、何かとても不思議な雰囲気の曲ですね。

ラストの「バッシャー」…ビッグ・バンドのテーマ風に、3管でテーマを吹いた後、ユニゾン演奏を軸にしながら徐々にホーン・セクションが疾走を始める。
やはり、曲を推進する旗手は、「シェップ」であり、それを受けて「タレンタイン」と「ラッド」もブロウをするのだが、後輩?がシャウトをすると、それを倍返しするのが「シェップ」なんだ。
しかし、4分すぎに突然曲調が静かになって、「タレンタイン」の独演的なソロ演奏になる。
とてもメロディアスで、魅惑的なアドリブ・フレーズで、聴いていてとても気持ち良い~。
だが、この静かなバラード的な演奏は、あくまでも一時的な物で、また「シェップ」と「ラッド」が、ジャングルの鳥類の様に騒ぎ出すと、演奏が激しくなってくる。
ホーンは戦慄いているが、この曲をカッツリと〆ているのは、微動だにしない「ヘイデン」のヘヴィーなベースである。
ホーン3人プラス「ハリス」のドラムは、煽りに煽って、どこまでも飛翔するとするのだが、「ヘイデン」は勝手にはさせず、例えが悪いかもしれないが、鵜飼の鵜匠の様に、天空に行きそうな4人を、最終的には上手く掌中に戻る様に、抜群の裁量でコントロールしているんです。
流石、「ヘイデン」ですね。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今年もよろしくお願いします! (pooh)
2008-01-04 23:41:31
こんばんは!えりっく$Φさん。
明けましておめでとうございます。
アーチー・シェップは大好きです。
でもCDは「マジック・オブ・ジュジュ」 とバラード・アルバム数枚しかもっていません。これ、よさそうですね。今度聴いてみます。
シェップのあの太くて荒々しい、優しくない音、すごーくしびれます~。
そうですね、やはりフリージャズはあまり聴きやすくないのかもですね。でも、たまにまたあつかってくださいね。
返信する
poohさん、明けましておめでとうございます。 (えりっく$Φ)
2008-01-05 00:04:17
早々のコメントありがとうございます。
今年も宜しくお願いします。

「シェップ」…良いですよねぇ。
確実に「コルトレーン」門下生として、素晴らしい演奏を数多く残してくれています。

ところで、「フリー・ジャズ」ですが、これからもどんどん紹介して、解説はして行きます。
但し、ここ最近の様に、「フリー・ジャズ」尽くしは一寸休憩するだけで…。。
何と言っても「コルトレーン」の後期アルバムが沢山残っていますので、紹介&解説したいアルバムは枚挙に厭いません。(笑)

poohさん、これからも遊びにいらして下さい。
返信する

コメントを投稿