SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

新緑の季節、ワクチン、オリンピック。

2021-05-08 16:33:00 | Essay-コラム

パリも新緑の季節となりました。

この季節には一度どーんと気温が下がって寒いこと、5月は学年末が迫っているというのに祭日が多く仕事が中断され捗らないこと、夏のヴァカンスは目と鼻の先だと言うのにこのジレンマに晒される、あまり愉快とは言えない月になることが多い。




このコロナの状態が収まらなくて音楽院はネットレッスンを続行する状況の中、小学校では陽性者が出て次々にクラス閉鎖が続く中、五人の小さいフルート奏者に息を吹きかけられる状態で週2回勤務という、かなり厳しい曝露労働条件にある私も、ついに来週にワクチン接種の予約が出来ました。


2回目接種の6月末以降、ワクチン証明を持って旅行できるので、夏にはデュオのコンサートがドイツで、トリオのコンサートがデンマークで控え、ついに出口が見えて来たかも知れない?!という感じがしています。



音楽院脇の運河、月曜日の朝。

しかしインドの非常に厳しいパンデミック、また日本のオリンピックの進退問題、それに伴うワクチン接種の遅れと感染爆発、コロナとは違うけれどミャンマーの人権危機を見ていると、世界的にはとても出口が見える状況とは言い難い。


このような中で私たち音楽家に出来ることは、やはり少しでも音楽を演奏し伝えていくことだけだと思うので、ネットレッスンになろうと、配信になろうと、観客が半分になろうと、その状況状況でできる限りのことをしていくため、少しでも思考がブレてネガティブにならないようにと思っています。



初夏の小学校の校庭。



先日めでたく万博助成国際交流事業に採択された、「らるちぇにっつぁトリオ」10月日本ツアーが6ヶ月後に迫り、日程を出したい気持ちが山々なのですが、なかなか緊急事態宣言が明けるまで決まり切らない状態です。


そんな中で、私達を助けるために持てる限りの知恵を使って、日本で走り回って下さっている方達がいます。地元高松でお世話になった先生方、そしてブルガリア音楽、また新しい音楽への情熱を共有する友達たち、そして驚くべきことに、まだ顔見知りでもないのに、なんとか私たちの音楽を日本に届けるため、奔走して下さっている、また心から助けて下さる事を厭わない方たちがいます。


この方々の情熱に、本当に心が熱くなる思いです。ご自分達の生活も大変ななか、それでも自分が信じる音楽への使命を共有してくださる。こんなに素晴らしいことが、人生で起こるとは思ってもいなかったです。


音楽バカでロクに企画した経験のない私に、いかに欲を出すことや、状況を見据えないことが命取りになるのか、この方たちから教えていただきながら試行錯誤で前に進んでいます。


この場を借りて、この美しい方々に心からお礼を申し上げたいです!




私たちの音楽院では、突然4月から学長が不在になって、どうしたんだろう?と思っていたら、なんと19区のワクチンセンターで一日中朝早くから夜遅くまで、週末も返上してワクチンを打つ手伝いをしているのだそうです。


正直学長先生とはお互い音楽的に理解できかねる事も色々あった。(その度にきちんと向き合って来たけれど)、今回コロナによる音楽院の運営悪化の長期化に絶望した彼が、ワクチン接種をもってしかこの社会正常な状態に戻せないと悟り、自分を捨てても社会奉仕をしているなりふり構わない姿に、感動しました。


自分には絶対出来ないやり方で、使命を果たしている人がいる。


私たちは、極限状態になって初めて、個人がやらなければいけない使命に気づいている。


あんなに楽しかったスポーツの祭典オリンピックはいつしか巨大化し、巨大なカネのシステムが化け物のように独り歩きして、個人の暖かい人間的な思慮や、臨機応変に対応できる柔軟性などの入り込む余地が無くなって暴走している。


そこでは善意のスローガンは、悪意にすり替わる。


ただでさえ切迫疲弊している医療を無償で使えるとか、絶対安心安全とか、独裁者が歴史的に使ってきた上から目線の常套句を、麻痺した人たちが口々に叫ぶ。


この暴走を、人間はその本来の人間性で止められるのだろうか?

世界中の個人の、特に当事者日本人の力量が問われていると思う。




今、私は個人のとてつもない力に感動し、個人を潰す巨大なシステムに絶望する。


しかし私は、個人の力が必ずシステムに勝つはずだと、強く信じている。



よく見ると、マスクが!




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