SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

Diyの聖域。〜フランスDiy事情

2021-08-05 08:49:00 | Essay-コラム

生まれて初めて物件を購入する成り行きとなった。パリから徒歩10分、広くて静かで眺望よし、理想の間取り、バルコンあり中央暖房という好条件の割に、びっくりするほど安かった物件だから、(それでも私たちにとってはめっちゃ高い買い物だけれど全改装をしなきゃならない。先ずは色々ネットや口コミで改装費を比較したのだけど、石綿が床材に使われているのを取り除く特殊作業が必要になるため、私たちの少ない予算内ではどうにもこうにも全く収まらない。


そこで、うちの通りの二軒先に、いつも犬の散歩をしている顔見知りの改装業者Nさんがいることをふと思い出し、床材張り替えの相談してみたら、ご近所さんだからと、かなりの低料金で引き受けてくれることが決まった。下町の力は凄い!



事務所には猫の赤ちゃんがいて、その猫のために遊び場を作ってあげている。


動物好きな心優しいNさんに、どういう床材なら良いのか、価格帯はどのぐらいか、めちゃくちゃ丁寧な説明を聞いて、よっしゃーと自力でルロワ・メルラン(フランス最大手のホームセンターに行ってみるも、やっぱりいまいち自信なくて分からなくなったので、Nさんに頼み込んで車で一緒にさらに3軒のホームセンターを回る。



ルロワ・メルランはめちゃオシャレ!何時間でも居たくなる。


しかし、いったいどれだけ床材の選択肢あるんやーーー!!

クラクラしている私を横目に、Nさんは淡々と「これ、良いね。これは全然ダメ、ほら見てごらん、ここのところの厚みが」とか床材を横から後ろから眺めて本当に楽しそう。この人は建材と一緒に呼吸しているようだ。本当に好きで好きでしょうがないんだねー!自分の仕事に情熱をかけている人と一緒に過ごすほどインスピレーションになることはない。



さて、ブルガリアに行っている間に床張りはほぼ完成。次は壁だが、業者さんに壁の改装も頼むと、またまた大幅予算オーバーしてしまう。


そこで、最近引っ越して自分で壁紙を貼ったりとDiyの得意な親愛なる即興アトリエ同僚C(今更イニシャル笑)に相談してみたら、友達で改装の天才という、ヒップホップ教師でアフリカ音楽にも詳しいFくんに電話してくれた。


このFくんがなんとも親切で、友達の友達というだけの関係にも関わらず、予算内で私たちに夏中付き合ってくれると言うではないか。


もう、出来る限り手伝いますっ!とやる気満々の私たち。初日は家族3人総出でカリカリとFくんの助言を元に壁紙をはいでいく。しかし、それは想像を絶する難しさで、気が遠くなるほど全く進まない!!



お好み焼きをひっくり返すヘラで7歳の娘もカリカリカリ。


「オレの主題はだな、早く終わらせることだ、、、」お上品なミュージシャン一家の状況を悲観したFくんは、頭の中で次なるアイデアを密かに練っていたのであった。


翌朝アパートに着くと、恐ろしい光景が!4人のキン肉マンたちが総出で物凄い勢いでバリバリ!バリバリ!と盛大に壁紙を引き剥がしておるではないか!


ひえええーーー!どっから出してきた、この人脈!!元はといえば、同僚Cやんか!前から他のスノッブな同僚らとは相当毛色が違うので仲良くなったCだけど、ここまでとはね。


我らが改装隊をご紹介。軍隊上がりで現セキュリティーガードのAくん、コートジボワール出身の空手黒帯Вくん(因みに黒帯だと大好きなケンカが出来くなるので辞退)、ブラジル出身、全身タトゥーでカポエイラ(ブラジルの格闘技)を嗜むCくん。うちの相方がお昼をみんなに奢ったそうだけど、その後、建物マンションの前の道路で、拳での腕立て競争を繰り広げたらしい。因みにもちろん全員ワクチンなんか打つもんかマスクなんか捨ててやる派。(注・私は速攻ワクチン打つマスク大事派です)


「ご近所に、どんな連中が引っ越して来たんかと思われてるで!もううちらには誰にも手出せないぞ笑」


そりゃ嬉しい笑 パリから徒歩10分とはいえ、一応ここはあの悪名高い郵便番号93なのだ!(/セーヌ・サンドゥニ県)


とは冗談で。93にもいろんな場所が混雑しているわけで、別に一括りにしてる訳じゃない。でもパリでもシックな界隈に縁がなくて、割にアンダーグラウンドな19区、20区に馴染んでいる私にとっては、更なる深みに足を踏み入れた感じもする。ここは93の深淵の入り口?!やっぱりパリとは一味違う。こないだはEDF(電力会社)が来た時、あまりの無愛想、威圧感にセキュリティーガードか兵隊が来たと勘違いしたし、今日歩いていると、なんと家の裏の方に牧場が、、、!



一応都会なんですけど。マンションの下を走り回るヤギがシュール。



下地やペンキ、タイルなど購入する為、Fくんの車でまたまたDiyの聖地、chezルロワ・メルランへと向かう。



フランスのペンキ会社のカタログが美し過ぎてため息が出る。さすが色彩の国。


ペンキ売り場で、完全初心者の私に手取り足取りFくんが説明してくれていた時、ある店員さんが近づいて来た。


「いやー、通だねあんた、これホント良いやつ。これ以上のやつはこの価格帯ではあり得ない。ただしこっちのは買っちゃダメだ!分かるだろ」


なーんて言いながら、一時間ぐらいペンキ論をぶちまけてくれた。いささか殺人的な勢いのお喋りではあるが、本当にこの人ペンキを愛しているのね。。。私にゃぜーーーんぜん分からんけど、情熱ってすごい。だって聞いてるとすごい面白いんだもの。引き込まれてしまう。

なんか楽器選びに似ているよね。安いものを買えばお得、逆に高いものを買えば安心ってものじゃない、その世界を知り尽くしてなければいけないってこと。選べるようになるには経験に鍛えられた研ぎ澄まされた勘が必要である。



私には選べません。。。

しかもその店員Hさんは、レジに並んでいる私たちを追いかけてきてまでコーヒーを奢ってくれた。そこで判明したのが、実は彼もヒップホップダンスとアフリカ音楽をやっていて、Fくんのバックグラウンドの友人らと共通の友人繋がりであった、というオチである。世の中の偶然とは恐ろしい。




一体このカオスから8月末の引っ越しに向けて完成出来るのか?!


筋肉改装隊のドタバタ劇はまだまだ(続)。


〜結果は後日このブログにて笑。でも音楽だって忘れちゃいません。814日、らるちぇにっつぁトリオついに1年ぶりのコンサート、デンマーク・コペンハーゲンにて。楽しみ!!