SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

マイルスについて

2009-04-26 06:39:21 | Essay-コラム
いま、マイルス・デイヴィス クインテット(注。第2期の黄金時代、とか言われる方の)を聴いている。
ウイーンの事を書こう、と思っていたんだけど、ちょっと興味が逸れてしまったので、またの機会に書くこととして。

けっこう長い間マイルスを聴いてきたけど(ついこの間までは「マイルストーン」という、こちらは第一黄金期のほうのクインテットを、さんざん聞き直していたんだけど)ハービー・ハンコック達の入った、この第2期のものは、いろいろアルバムを網羅して聴いてみても、あんまりじ~っくり味わってきいたことは、実はなかった。
なぜって、テナーのウエイン.ショーターが加わってからのこのクインテットは、もっとめちゃくちゃにエキセントリックで、鋭利で、ハードで、マイルスもこの年で、よくここまでスタイルを変えてハマれるよな~、と心底感心するのだけど、やっぱりちょっと気負っている感じもして、「うお~~!!」という感じで聴いていてもだんだん疲れてきてしまう。
でも、このたぶん、彼らが出会った初期の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、なんかおいしいもんを食べている時のように、幸せなふっくらした感じがある。

まず、マイルスの最初のいちフレーズから、「そうだよ!音楽はそうじゃなくちゃ」としみじみ感じる。
キース・ジャレットが「だれでも楽器を始めたときは感動的な音をだせる。しかし楽器を極めたのち、その感動的な音をまだ出せるのはマイルスしかいない」という趣旨のことを言っていたと思うんだけど、まさしくそうですね。
多分彼の自伝によるとこの時期はあまり練習してなかった時期だったと思うんだけど、そういうのさえが音の魅力になるのがすごいよね。ほんと、練習だけが音楽ではないのです。音楽とは人生なのだ。

若きハービー・ハンコックのふんわりしてて、遊び心に満ちて、ゆるいアーチを描くバッキングに(いっぱい音をひいてても、この人は構築感はやっぱり天才的だね)トニー・ウィリアムスの細かく振動するリズムが濃密なクリームのようにまとわりつき、ロン・カーターの、ポール・チェンバースの時代とは打って変わった新鮮でフルーティーなベースの動きが隠し味になって、
う~ん!これはまるで、上質のロールケーキだ!!しかもそのロールケーキと一緒に上質の豆を丹念に煎ったコーヒーを飲んでいるように薫りたかいぞ。
(どんな例えや!けどもちろん、すこし苦みの利いたコーヒーは、マイルスのソロである。)
ちなみにジョージ・コールマンのアルトが時たま古くさいフレーズをやって、バックが一致団結して、あのさ~、イマっぽくやろうや!って意気込むんだけど、やっぱり不毛になってるあたりは、愛嬌である。

そして、もっと昔にさかのぼり、20代のマイルス奏でる「マイルストーン」のほう。
このフレッシュ・オレンジジュースのように新鮮で、溌剌としたカラーは、やっぱりフィリー・ジョー・ジョーンズのはじける粋なドラム(粋なリズム、というと私にはなぜかこの人が思い浮かぶ)と、レッド・ガーランドのおきゃんな?これまた粋な透明感あふれるピアノのせいじゃないかと思う。

マイルスもパキッしゃきっとした演奏してるし、(これは、すごい練習してるよねきっと)コルトレーンでさえ、あの独特のクサミがなくさわやかだし、もちろんキャノンボールはいつもどおりパキパキ、つやつや、ぐいぐいと吹きまくる。

これがそのちょっと後の「'58 マイルス」や「カインド・オブ・ブルー」あたり、ジミー・コブのドラムとビル・エヴァンスのピアノになると、ソロイスト陣がおなじでも、なんだかもっと格調高く、水彩画的な色あいになるんだから、面白い。この辺の変化がマイルスを聴く醍醐味である、と思う。

もちろんマイルスは自身がジャズ史のようなひとで、あまりに沢山のすごいアルバムがあるけど、もし興味をもったひとはこの辺からどんどん聴いてみてください。

ちなみにマイルスの自叙伝ですが、これは最初友人の作曲家、Tさんが貸してくれて、何度もお借りして、あまり読みすぎてぼろぼろにしてしまったので、とうとう根負けしたTさんが私にプレゼントしてくれました。そのぐらい好きな本なので、その事についてはまた別の機会に書きます。

昨年より友人Mさんのブログ「ボチクラ」に会長のペンネームで掲載させていただいていたコラム、(音楽や、その他の話題もあり。)読みたい方はコチラへどうぞ!!
「ボチコラム」
http://blog.goo.ne.jp/kedamayu/c/b1a92148acfd575de66a5fa80e5b3c02

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ブラティスラヴァ・ギター室内楽祭でのコンサート

2009-04-21 00:11:34 | Concert Memories-コンサート旅行記
世界中にはいろんなミュージシャンがいて、いろんなフェスティヴァルを企画しているものである。
今回は、スロヴァキアの首都、ブラティスラヴァにて、カナダに留学していたスロヴァキア人ギタリスト、ミリアムとそのパパがオーガナイズするフェスティヴァルに招待されたのでした。
最初は、「ブラティスラヴァ」?東欧だけど、どこの首都だっけ?という位の認識だったんですが、チェコ・スロヴァキアから分かれたスロヴァキアのほうの首都です。
ハンガリー領になったり、チェコと一緒になったり、分離したりと、かなり激動の歴史を抱えている国。オーストリアの首都ウィーンからも60キロと、目と鼻の先。東欧のユニークさとドイツの落ち着きがうまく混ざっているような感じがする。


チェコ語、ドイツ語、スロヴァキア語で書かれた薬局の看板。国に歴史あり。
こういう見知らぬ国にいくのは、わくわくもんです。

初日は、ミリアムの教えている音楽学校で、フルートのクラスとギターのクラスに分かれてマスター・クラス。
つたない英語での授業は緊張もんでしたが、パリの学校とやっている曲も、学校の雰囲気も全然ちがっていて、面白い。


こちらはフルート・クラスとコンセルヴァトワールの教授で、マスタークラスを企画してくれたイヴィツァと、その先生。スロヴァキア・フルート界の重鎮らしい。さすが、東欧の先生は、フィギュアのタラソワ先生のような、なんとも懐の深い雰囲気ですね。

翌日はコンサート!東欧諸国の曲(バルトーク、リゲティ、ウルクズノフ、ブルガリア民謡など)と、ジャズ系(チック・コリア、デューク・エリントン、ガーシュウィン)を織り交ぜたプロで。
ふつうにバルトークから始まったのですが


えっそういうのやるかな。

感極まる。
ルーマニアのフルートも登場。
 アタナスも負けじとフラッピング!


   暖かく見守る聴衆。

ということで、めでたく大成功のうちに終了しました。
さいごに、ブラティスラヴァのビール、最高においしかった!さすがピルセンビールの本場。
このあとウィーン訪問記が続きます。お楽しみに。
       

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