SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

リズミックとメロディック

2022-05-31 07:09:00 | Essay-コラム

自作自演インプロヴィゼーションプロジェクトのSpiral Melody。一人でものすごい沢山の楽器を演奏する、別名「タコ足コンサート」(笑)

娘がコンサート中、その印象をキュビズムみたいな絵にしてくれました。


先日のスパイラル・メロディー@バニョレの時、聴きに来てくれた友達が、私の演奏は即興演奏の時はリズムが先立つが、対し自分自身の作品の演奏ではメロディーが先立つので、旋律の出てき方が違う、と興味深いことを言っていた。


とても嬉しい感想である。何故かというと、彼女は音楽の「結果」みたいなのではなく音の「産まれ出る瞬間」を聴いてくれてたからである。


また、共演者のサックスのアルノーが終演後に


「ミエ、俺は本当に本当にメロディーが好きなんだ。だからこのプロジェクトは本当に好きだ、ずっとやっていきたい」


と言ってくれたことも嬉しかった。


確かに彼は今回、前にも増してはっとする音で彼にしか出来ないメロディーを奏でた。ピュアなインプロヴィゼーションが、ますます私の音と響いてきていると言うことだ。


私にとっては、そのようなはっとする音こそがライブで出てくることこそが宝物。


私の好きなもの全てを注ぎ込んだ音の宝物たちの中に、他の魂が共鳴してもっともっと宝物が増えていく。この感覚は即興という創造過程でしかあり得ない。



ピアノの椅子ではなく、スペインのパーカッション「カホン」に座る。

創造過程、と言えば、去年は色んな成り行きで、本当に人生で初めて作曲に集中した年であった。


その産みの苦しみを通り越して、今は作曲、即興、インタープレテーションという作業に、前より自然な流れができ、その流れに自分をよりうまく解放できるようになったと思う。


「メロディー」と「リズム」。この二つの面での傾倒は子供の頃から私の中にあって、湯山昭の「お菓子の世界」、三善晃の「海の日記帳」という、この二つのこどものための曲集が私の異様なお気に入りで、小学校の頃、全曲暗譜で弾けたほど。


湯山さんの方は、世界中の雑多なリズムを、現代的なスタイルと独自のユーモアで昇華して、バルトークやチックコリア、ドビュッシーがやったように、子供の感性で、何ともリズミックに、色んなお菓子になぞった曲集にまとめたもの。


対して三善さんの方は、目眩くフランス的な和声の世界、メロディーの花束が咲くように色彩感豊かなファンタジーに、これまた子供の感性で、海の動物の物語のタイトルがひとつひとつの曲についている。


今、大人になった私はチック・コリアとキース・ジャレットの二人に心酔している。


ご存知のように、チックの魅力はその怒涛のリズミックにあり、キースの魅力は美しいメロディックに収束される。もちろんこれは誤解を恐れずに言っているのであって、


チックの異様なまでにキレッキレのリズムが引き立つのには、背後に芳醇なメロディーとハーモニーがあるからであり、キースのあの世にも稀なメロディーのリリシズムは、複雑に絡み合うハーモニーと、重厚で精緻なリズムが支えている。


「リズム」は生きている鼓動そのもので、しかしそこには数学的な側面があり、インド人たちがやるように、それはどんな風にも細かく分割出来るし、チック・コリアの即興ソロのように、その数学的に壮大なロマンは、一生追求しても足りないと思えるほど。


そして「メロディー」とはまた相反する真理であり、「水のように湧き出してくるもの、水を組み合わせることは出来ないよ。」とキース・ジャレットは言っている。


これこそがこのプロジェクトの真髄で、私はそれを工業的に扱ったり、時代やスタイルがどうだこうだとか議論したり分析したりしたくない。


メロディーと言う言葉は、どうも時代遅れな単なる概念だと、誤解されがちだ。


それは私にとって、絶対に表面的な羅列であってはならない。内側から出てきて、内側で出会うものでなければならない。


今産まれでた本物のメロディーやリズムは、とびきり新鮮に時代を越えるんだ。


その人のsourceから溢れるメロディーを掬うこと、それこそがスパイラル・メロディー・プロジェクト。


魂から迸り出てくるもの、それがメロディーであるなら、それを好きで、好きで、嬉しくて嬉しくてしょうがない、と言えることの、なんと幸せなことだろう。




服飾アーティスト、安藤福子さんが創って下さった虹のスカーフは、私のスパイラルメロディーのイメージそのもの。






Spiral Melody Project バニョレ 始動! 〜アイデンティティーの話〜

2022-05-22 21:32:00 | Essay-コラム

Spiral Melody Project Bagnolet 

Samedi 28 Mai à 15h

Au théâtre L’échangeur (petite selle)

Bagnolet (Metro Gallieni 2 min. à pied)

Entrée libre!


 先日、久々にホームグラウンドのパリ19区から抜け出して、パリ16区の音楽院まで、国家教免試験の審査員に行ってきた。


(ちなみに受験された生徒さんはなんと若い日本人で、伸びしろの感じられる将来有望な方であった。)



帰りはとても感じの良い審査委員長先生と一緒にメトロまで歩いたのだが、麗しのお屋敷街、パリ16区の壮麗なオスマン建築の連なりに目をパチクリ。



パリ16区のオスマン様式建築




「私いつも19区なんで、あんまりに違う美しい光景にビックリですねぇ」なんて言うと、審査委員長先生も「ほら、さっきの生徒役の子供の名前、あれってラシーヌの本の中に出て来る、ギリシャ神話からとった名前だよ。そんな優雅な名前は、19区では、付けないよな()。」「ですかぁ!どうりで初耳でした(苦笑)」「うちはルーアンでさ。ルーアンはパリに近いんで自ら「パリ」と勘違いしてるって有名なのさ()」なんて自虐ネタで話も弾む。


パリ19区には明らかに、他の区とは違うアイデンティティーがある。サッカー選手のムバッペなんて、プロフィールに「パリ出身」じゃなくて、ちゃんと「パリ19区出身」って書いてある。




ダクルーズの壁画

うちの子の通う19区の小学校では、ほぼ全校生が踊れるヒップホップダンスや、校庭の壁に描かれたダ・クルーズのストリート絵画なんかがメインカルチャー。




ヒップホップの動きで各自インプロヴィゼーションを披露する子供たち


私の生徒たちにしても


「私は19区のヴィレットの芝生で育ったの。だから、5区の子らの鼻持ちならない話題にはついていけないわ」


とか


「私、中学の時の〇〇音楽科では、10区辺りの競争心剥き出しの子たちがいてね、ほら、19区ってそういう土壌がないじゃない。だから無視するのに苦労したわ。。。」


とか、若いのに分かったような口を聞くのが可愛らしい。


こう言うのを聞いていると、アイデンティティーって言うものは大切で、それがどのような環境であれ、生まれ育った環境に誇りを持つことがその子を護っているんだなぁ、と思う。


ところで、私のブログを読んで下さっている方はご存知かも知れないが、1年ほど前に私は人生で初めてアパートを購入して、パリ東に隣接したバニョレ、という小さな町に引っ越した。

私は晴れてパリ19区とバニョレの二重アイデンティティーを持つこととなる。




シュールなバニョレ街中の小牧場。



そこはパリに隣接しているとは言え、パリのように「もう文化はいっぱいいっぱい目一杯です、これ以上誰も入る隙はありません」というギシギシした空気が一気に変わって「みんなで何か一緒にやらない?」とでも言うか、何か面白いことを探している雰囲気があると感じる、とパリの東にて。 - SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounovで書いたことがある。


だからこの新しい地を基盤に何かプロジェクトが出来ないものか、演奏と教育を両立したようなものを。。。とずっと思っていた。


そんな4月の大統領選第一次投票の日。外人で選挙権のない私はヒマなので、いつものように隣町モントルイユのマルシェ(朝市)に行き、いつもの場所に自転車を停めようとした。すると


「えーと、そこ邪魔なんだよね。こっちに停めてよ。見ててあげるからさ。」


と声を掛けてくれた人たちがいて、何してるんだろう?と思ったら、「外国人の為の象徴的な大統領選挙」って言うのをやっている、「外国人の権利を守るバニョレの市民団体」さんで、実はバニョレ在住の日本人なんだと言うと、ぜひ投票して行かないか?ということになった。




で、自転車のことも買い物のことも遥か彼方に忘れ去ってこの人たちと話し込んでいるうちに、私が音楽家としてやっていることに非常に興味を示してくださり、よっしゃー、何か一緒にやろう!という成り行きになったのでした。


バニョレ在住で、雑多なコスモポリタン・バニョレと、コスモポリットな音楽を愛してやまない人たち。アイデンティティーが私たちを繋げた。


アイデンティティーとは、愛である。


よって、その名の元に他を攻撃することでは決してない。


なーんて、前置き、長っ!!


ロックダウン直前にパリ19区でビッグバンを起こしたスパイラル・メロディー、その後の長いコロナブレイクを経て再始動した、その名も


「スパイラル・メロディー・プロジェクト・バニョレ」。


当時想像だにしなかったバニョレにて、しかもバニョレで一番有名なあの最先端シアターThéâtre l’échangeur から、この土曜5月28日15時の発進です!!



未来都市の中に忽然と現れるテアトル・レシャンジャー